第18話 2 テーマの提示
2 テーマの提示(5枚・5%)
5%(または小説全体の最初の10%以内)
1場面のビートです。
主人公がたどる旅と、克服するべき欠点や問題を手短に示唆します。
この作品が何を描くのかを語り始めるとき、ここが最前線となります。
そして正確に表明するためには、何度かの書き直しが必要かもしれません。
主人公は第一幕の世界を欠点を抱えて、馬鹿みたいな判断をしながら、完全とはいえない人生を歩んでいます。
第一幕のどこか、冒頭から5分あたり最初の10%(普通〝3 セットアップ〟ビート)までに仄めかしましょう。
読者の脳内、潜在意識に、小さな種(小説の肝つまり不完全な主人公が少しはましな人間に変容するきっかけ)をそっと気づかれないように植えるのです。
登場人物の(たいてい脇役の)誰かが問題を提起し、物語の終わりまでに主人公が学ぶ人生の教訓や本当に必要なもの(つまりテーマ)に関係するセリフを(たいてい主人公に対して)口にします。
または手に入れなければならない本当に必要なものを言います。
あるいは主人公の人生に関する疑問を投げかけます。
たとえば「よく考えてから願いをかけるのじゃぞ」とか「驕れる者は久しからず」とか「お金よりも大切なのは家族でしょ」とか「人生うまくいってないみたいだけど、こうすればうまくいくよ」といったセリフです。
もしくはこれほどあからさまではなく、会話のなかのなにげないひと言として表現されることもあります。
ほとんどの小説ではこのビートはあっという間に終わります。
誰かがテーマ(主人公が本当に必要なもの、または人生の教訓)を仄めかして、物語はどんどん先に進みます。
テーマを仄めかすのは人間である必要はありません。
主人公が通り過ぎる看板や読んでいる本や雑誌に書いてあることもあります。
テーマの仄めかし方をどんなに凝ってもかまいませんが、ともかく絶対誰かに言わせてください。
つまり、主人公は小説が始まって早々、自分を煩わせる問題の解決法をご親切に提案してもらっています。
しかし100%、完全に無視します。
なぜかというと、物語が始まった段階では、主人公は変化を拒むから。
自分に対して語られたテーマを聞いた主人公は「こいつに何がわかる? 何も知らないくせに」と思って終わり。
そう思っても無理がないように、テーマを仄めかすのは主人公に近い人ではなく、脇役がいいのです。
絶対にそうしろというものではありませんが、よく知らない人や信用する理由がない人が相手なら、主人公が聞き流しても自然だし、読者も受け入れやすいから。
テーマを無視することで、主人公は現実味を帯びます。
人は、誰かに忠告されたくらいで変わろうと思うものではありませんから。
自分の問題が自分の目で見えるようになって、初めて変わろうとするものだから。やがてその言葉がとても重要な意味を持っていたことに気づくのです。
変容を促す長い旅を経て、真実に向かい合い生まれ変わって旅を終える。
物語が終わる頃には、主人公は示唆されたのとまったく同じテーマを自分のものにするのです。
それこそ、人間というものの本質なのです。
テーマを見つけ出す手がかりは、どのように〝7 サブプロット〟において主人公が教訓を学ぶのを「助けて」いるかを見ることです。
きちんとつかめれば、まず教訓を述べ、それを30枚目の〝7 サブプロット〟のイントロダクションと結びつけ、〝9 ミッド・ポイント〟で危険が高まって、主人公に〝12 心の暗闇〟での過ちを悟らせるのに役立つ「覚醒の時」があり、主人公が教訓を得なくてはならない第三幕への最後のひと押しがあって──勝利に至ります。
▼テーマの根幹が掲げられているか?
▼このストーリーが内面においてはなにを語るものなのかがわかるか?
▼それはあらゆる観客にとって原始的なものか?
「小説の書き方」コラム
815.構成篇:ハリウッド「三幕法」(セクション1・2)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889417588/episodes/1177354054891907358
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【参考図書・引用図書】
▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』菊池淳子訳・フィルムアート社(税別2200円)
▼ブレイク・スナイダー氏『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 『SAVE THE CATの法則』を使いたおす!』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2200円)
▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2000円)
▼ジェシカ・ブロディ氏『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』島内哲朗訳・フィルムアート社(税別2500円)
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