第25話 8 お楽しみ
8 お楽しみ(30-55枚・20〜50%)
20〜50%(第二幕の前半)
複数場面にまたがるビートです。
第一幕「命題(テーゼ)」の世界の主人公が第二幕「反対命題(アンチテーゼ)」の世界を生きて、すごく快調でうまくやっているのか、反対にどん底で苦しんでいるのか。
選択肢は最高と最低のどちらか。
思い切って新しい世界に飛び込んでよかったと思っているか、もう前の世界に戻りたいと思っているか、2つに1つ。
〝お楽しみ〟ビートですが、名前に惑わされてはいけません。読者にとって〝お楽しみ〟なのであって、主人公がその状況を楽しめるとはかぎらないのです。
第二幕が第一幕とは天と地ほども違うように設計されてあれば、このビートは手を出さなくても勝手に楽しいビートになってくれます。
〝お楽しみ〟はストーリーの最終ゴールを少しそれて、お約束の場面を見る場所です。
〝お楽しみ〟と名づけたのは、他のビートに比べてトーンが軽いからでもあります。
このビートは「約束を果たす場」です。物語に触れる前に、ポスターや予告編で使った「いちばんおいしい部分」で、観客はストーリーの進展以上にこの〝お楽しみ〟に期待しています。
あらすじとかレビューとか口コミとかでこのビートに書いてある内容を小耳に挟んでいる可能性も高い。
今ここで「約束された話」を読者にお届けするのです。
実際〝ミッド・ポイント〟までは危機的状況は起こらないので、安心して楽しめます。
また映画会社の企画制作部で「もっとセット・ピースを入れてくれ」と言われたときには、たいていここに入れます。
また〝バディとの友情〟映画では、二人はたいていここで喧嘩するのです。
多くの殺人ミステリーや切り裂き映画では、この部分で次々死体が出てきます。
もう死んだものと見捨てられ、スパルタカスみたいな戦闘の技を学ぶなんてなにを楽しんでいるというのでしょうか。
〝お楽しみ〟がどれもひたすら楽しいわけではないけれど、君がわかっていない君の映画の目玉はなんなのかという問題を、クールに解決してくれます。
とは言っても〝お楽しみ〟が最初から最後まで苦しい、または楽しい、という必要はありません。
〝お楽しみ〟は全体の3割を占めますから、あの手この手で変化をつけましょう。これを「弾むボール」と呼びます。
主人公が弾んで上がってくる、そして落ちていく。すいすい進む、全然進まない。何かに成功する、失敗する。意中の彼を手に入れる、失う。探偵が事件解決の糸口をつかむ、偽の手がかりだったと知る。王が戦に勝つ、負ける。
弾んで落ちてまた弾んで落ちて、うまく予想を裏切れば、〝お楽しみ〟のビートが豊かになって読者を釘付けにできます。そしてなにより、楽しくなります。
ボールは何回弾ませてもかまいませんが、最終的にはある一方向に向かっていくことになります。
成功か失敗のどちらか。それは作者次第です。
「上り坂(成功の方に向かう)」かそれとも「下り坂(失敗の方に向かう)」か。
〝お楽しみ〟が「上り坂」か「下り坂」かというのは、小説の構成を考えるうえでは決定的な判断になります。
ここで上るにしろ下るにしろ、その方向が次に来る〝ミッド・ポイント〟ビートの内容を決め、さらに残りの第二幕の方向も決めてしまうのですから。
▼お約束を果たす場は出てくるか?
▼セット・ピースはじゅうぶんあるか?
▼この映画がそもそもなにを語っているのかを明確にする、要となるシーンはあるか?
「小説の書き方」コラム
818.構成篇:ハリウッド「三幕法」(セクション8・9)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889417588/episodes/1177354054891919979
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【参考図書・引用図書】
▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』菊池淳子訳・フィルムアート社(税別2200円)
▼ブレイク・スナイダー氏『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 『SAVE THE CATの法則』を使いたおす!』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2200円)
▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2000円)
▼ジェシカ・ブロディ氏『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』島内哲朗訳・フィルムアート社(税別2500円)
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