第19話 3 セットアップ
3 セットアップ(1-10枚・1〜10%)
1〜10%(だいたい小説の最初の10%までに来ます)
〝3 セットアップ〟は複数場面にまたがるビートです。つまり何場面、または何章か使って主人公の日常をお膳立てし尽くすことができます。
〝1 オープニング・イメージ〟であなたの物語が垣間見られるように、主人公の生きる世界のほんの出だしを見せました。
〝3 セットアップ〟では、主人公の生きる世界そのものをしっかり見せます。
脚本の最初の10枚(多くても12枚まで)は、〝3 セットアップ〟と呼ばれ、読み手が関心を持つかなくすかの境目となる場所です。
主人公、ストーリーのテーマや目的が生き生きと設定されます。
すべてが変わってしまう前の、現状の世界にいる主人公の人生の問題を最大限に見せるのです。
主人公に必要なものや欠けている部分がある場合、それを見せます。いかに人生のあらゆる局面に影響しているか。
例えば、利己的で欲深い主人公は、職場でだけ利己的で欲深いわけじゃありません。家族に対しても友達としても同じでしょう。それを見せる最適な方法は、それぞれ、家、仕事、そして遊びの時間を見せる場面(または章)を書くことです。
つまり〝3 セットアップ〟ビートでは、家にいる主人公(家族と、配偶者と、または子どもと、あるいはアパートで独りで)、仕事中の主人公(職場で、または学校等で)、さらに遊ぶ主人公(友達と、または独りてリラックスする等プライベートな時間)を見せます。
主人公のいろいろな日常を見て人間としての主人公を見るほど、読者は人間としての主人公を深く理解します。
主人公は目標を持っていることが大事です。小説の始まりで主人公は「なにか」を求めて行動していないといけません。
同じものを物語が終わるまで求めている必要はありませんが、とりあえずなにかを求めていること。この「なにか」があれば、主人公は自分の人生の問題を解決できると「思って」います。
でもすんなりとは解決しない。
必要なのは「本当に必要なもの」であって、求めるものではないのですから。
〝2 テーマの提示〟で説明したとおり、本当に必要なもの(人生の教訓)を手にしたとき、主人公の問題は解決します。
でも今のところ、主人公はそのことを知りません。
メインストーリーつまり主人公が生きる日常、現状の世界に存在する登場人物を全員紹介して特徴やのちに起こる問題の原因となる行動も提示されるところです。
友人たち、家族、上司、同僚、教師、敵、同級生、学校でつるむ友達、等々。
小説が始まったとき、主人公の世界が変わる前の世界で重要な人たち。
この人たちはAストーリー(表の物語)を代表するので、「Aストーリーのキャラクター」と呼びます。
優秀な映画は、必ず開始から10枚以内で、登場人物全員が画面に登場します(もしくは仄めかされます)。
さらに〝3 セットアップ〟では主人公が最後に勝つためにはなぜ、どのように変化するべきなのかが示されます。
「繰り返しのモチーフ」や伏線として使われることもあり、また時限爆弾と同様にやがて爆発して主人公の身に災いが降りかかったりします。
けれど最後には直っていくものです。
〝3 セットアップ〟でわかるのは直すべきことのリストアップと第二幕でこれらをすべて手に入れること。
伏線として使う場合、うまく効くかどうかは、〝3 セットアップ〟の段階ではっきりと伏線を見せているかが勝負になります。
主人公は人生が満ち足りていてはダメです。満ち足りていたら、そこでおしまい。
主人公の世界は、問題でがんじがらめであるべきです。
「SAVE THE CAT!」の世界では、そのような問題のことを「要修理案件」と呼びます。
早い話が、主人公の人生に溜まっている様々な問題のこと(必要ならいくら長くてもOK)。
可能性は無限ですが、やるべきことはひとつ。
なぜその主人公は自分を変える旅に出なければならないか、読者に納得させること。
そう、この第一幕の現状の世界では、何もかもかうまくいっていません。
「要修理案件」は、物語が進むにつれて何度も顔を出し、主人公の旅路の道すがらなにがどう変化したかを測る目印になります。
なかなか変わらないなにかがあったら、主人公とその世界に起きる変化が少なすぎるということです。
やることが多いですが、ここで土台をしっかり創っておけば、最終的にはより満足のいく読書体験を約束できます。
〝3 セットアップ〟が上手なら、早く変わる〝4 きっかけ〟が訪れなければ主人公は絶体絶命、ということを読者はすでに察しているはずです。
▼(逆襲):静止=死((1-10枚・1〜10%)
この瞬間は〝3 セットアップ〟のどこかで訪れ、何かが変わらないとすべてはあっという間に崩壊することを読者に教えます。
静止とは「物事が同じ状態のままである」ことを意味し、まさに「死」です。
主人公の人生が、笑ってばかりいられる状況ではないこと、その状況が続くかもしれないことが明かされます。
観客はこのままだと哀れな主人公は破滅だと気づきます。
変化の必要性が圧倒的で、冒険の痛みに見合う価値があると示すのが目的です。
具体的に〝静止=死〟を使うにしろ、具体性なしで事態の緊急性を読者に伝えるにしろ、主人公が自分の人生を変える必要が明示されなければ、読者を引っ張って残りの旅路を続けるのが大変になります。
〝3 セットアップ〟のビートを使って、読者の頭の中に変化は不可避だという小さな種を植え付けるのが、作者の仕事です。
このまま現状の世界に留まるという選択肢は、ありえません。
なにかが起きなければ。
▼このストーリーの主人公は誰かがわかるか?
▼この主人公は最初に登場するとき、可能なかぎり後退しているか?
▼主人公とその世界は問題だらけか? なにが問題かが明白になっているか?
「小説の書き方」コラム
816.構成篇:ハリウッド「三幕法」(セクション3〜5)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889417588/episodes/1177354054891908324
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【参考図書・引用図書】
▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』菊池淳子訳・フィルムアート社(税別2200円)
▼ブレイク・スナイダー氏『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 『SAVE THE CATの法則』を使いたおす!』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2200円)
▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2000円)
▼ジェシカ・ブロディ氏『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』島内哲朗訳・フィルムアート社(税別2500円)
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