第20話 4 きっかけ

4 きっかけ(12枚・10%)

 10%(もっと早くても可)

 〝きっかけ〟は1場面のビートで、十二枚目に現れて何かが起こる最初の瞬間です。


 〝セットアップ〟では「使用前(ビフォー)」の世界を観客に伝えました。

 〝きっかけ〟では、その世界をぶっつぶすのです。


 主人公に起こった何かが、主人公の人生をまったく別の方向に向けてしまいます。主人公の意志に関係なく襲いかかってきて、主人公の現状をぶち破る人生をひっくり返す事件が現れ、変容への道に放り出すのです。


 人間誰でも生きていれば、人生を変えるような瞬間(きっかけ)が必ずあり、それこそまさに人生を感じさせるものです。

 ただし人生を変えるきっかけは、必ずしも良いことばかりだとはかぎりません。ときには悪い知らせに姿を変えているときもあります。

 でも冒険や旅が終わる頃には、そのきっかけによって主人公は幸せにたどりつくのです。


 郵便、電報、電話、解雇の知らせ、妻の浮気現場を目撃、余命あと三日という宣告、ドアのノックの音、使いの者、死体の発見、未解決事件の容疑者の逮捕、無実の少年が警官の凶弾に倒れる、王様の求婚、風変わりな人との出会い、新たなニュースなどすべて変化を告げる前触れとなる〝きっかけ〟です。


 主人公は動揺します。作品で最初の「災い」です。

 ほとんどの場合〝きっかけ〟は悪い報せという形でやってきます。


 〝きっかけ〟があなたの作り上げた主人公の世界に落ちてきて、その破壊力の凄まじさに、主人公は前と同じではいられなくなります。

 新しいことを試さずにはおれない。どこか他のところにいかなきゃならない。


 人というものは、その身に悪いことが起きるまで変わろうとしないものです。

 悪い報せは、なにか良いことへの道を拓くこともあります。

 悪い報せが来なければ、主人公は問題だらけの自分の小さな世界に閉じこもり、問題だらけのまま満足して生きていくでしょう。

 そんなものを読まされれば、不満を覚えます。


 読者はなにかが起こるのを待っているのです。行動を望んでいるのです。ひねりが欲しいのです。ドラマを求めているのです。


 要するに〝きっかけ〟というのはモーニング・コールあるいは行動へ誘う呼び声です。

 だから〝きっかけ〟は大きいほどいいのです。

 小さくてか弱い〝きっかけ〟なんかありきたりすぎです。


 良いフィクションに欠かせない材料は「対立」です。

 良い物語には「対立」がつきもの「そう来たか! そこから立ち直るのは無理だろう」と言わせたいのです。

 それでこそ、効果的な〝きっかけ〟です。




 〝きっかけ〟が十分に強力かどうかは「この後主人公は、簡単に元の日常に戻れてしまうか」に答えてください。

 「はい」なら〝きっかけ〟が弱すぎます。

 「絶対、無理!」なら、そのまま突き進みましょう。




▼我々の主人公になにかが為されるか?

▼それは主人公に行動を強いるか?

▼それは信じられるようなものか?




「小説の書き方」コラム

816.構成篇:ハリウッド「三幕法」(セクション3〜5)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889417588/episodes/1177354054891908324


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【参考図書・引用図書】

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』菊池淳子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 『SAVE THE CATの法則』を使いたおす!』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2000円)

▼ジェシカ・ブロディ氏『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』島内哲朗訳・フィルムアート社(税別2500円)

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