第14話 10 スーパーヒーロー

10 スーパーヒーロー


サブジャンル

 実在のスーパーヒーロー:『レイジング・ブル』『ガンジー』『マルコムX』『ジャンヌ・ダルク』『エリン・ブロコビッチ』『ビューティフル・マインド』

 ストーリーブック・スーパーヒーロー:『ライオン・キング』『ピーター・パン』『ノートルダムの鐘』『ムーラン』『ナルニア国物語 ライオンと魔女』『ジャングルブック』『リトルマーメイド』

 ファンタジー・スーパーヒーロー:『マトリックス』『フック』『ネバーエンディング・ストーリー』『ヴァン・ヘルシング』

 民衆のスーパーヒーロー:『グラディエーター』『ベン・ハー』『荒野のストレンジャー』『マスク・オブ・ゾロ』『パトリオット』『ロビン・フッド』

 コミック・ブック・スーパーヒーロー:『スパイダーマン2』『バットマン』『ファンタスティック・フォー』『Mr.インクレディブル』『Xメン』『ハルク』『キャット・ウーマン』




【パワー】

 ヒーローには授けられた特別で超人的な能力「パワー」が備わっている必要がありまる。あるいは主人公を人間以上の存在にする「スーパー」になるべき使命。偉大になるとか良いことをするとか良い人間になるとかいった意志であってもよいのです。


 ヒーローは「パワー」を持ちながら、人間らしさも持っています。

 だから読者は共感できるのです。そして小人と向き合うことがどんなに大変かも理解できます。


 スーパーヒーローの物語は、人と「違う」とはどんなことか、独創的な考え方や素晴らしい能力を妬む凡人と向き合わなければらないとはどういうことかを、観客が共感できるように描きます。


 特別な存在がその特別さを誇示する〝お楽しみ〟の部分が見せ場です。

 ヒーローは我々とは違う。でも、我々は彼を代理にしてファンタジーを最高に楽しむことができます。


 しかし、我々は心の底で、ヒーローたちが高く飛べば飛ぶほど、激しく地面に打ち付けられることも知っています。どんなスーパーヒーローにも、宇宙のしっぺ返しが必ずあるのですから。




【宿敵】

 主人公と真っ向から対立し、ヒーローと同等またはそれ以上の力を持っている「宿敵」がいなくてはなりません。

 主人公と同等もしくはそれ以上に負けず劣らずパワフルな力を持つ主人公の「自家製」バージョンともいえます。

 しばしば宿敵は「超天才」で、自らの頭脳を頼りに「パワー」を生み出しており、まさに制御不能の我意の象徴です。


 善と悪の違いはごくわずかです。悪漢だが自称選ばれし者として、真のヒーローに必要な「信じること」「信念」を欠き、主人公の行く手を阻みます。


 スーパーヒーローは自分が特別だとわかっていて、特別かどうか悩んだりしません。

 一方、悪漢が頼れるのは自分と「選ばれし者」としての自分のイメージを支えるために考え出したちょっとした策略だけで、しかも密かにそんなイメージはまやかしだと、自分でもわかっています。


 宿敵がヒーローを出し抜くことがあっても、結局は信念のなさゆえに、本物の「選ばれし者」を消して初めて勝利できるのだ。宿敵が本当に特別なら、誰も殺す必要などないはずなのに。




【呪い】

 ヒーローには「呪い」あるいは「弱点」がなくてはならず、スーパーヒーローであることの代償として、彼はそれを克服するか、屈伏してしまうかです。

 どんな「パワー」にも急所はあるもので、悪漢はそこを突いてきます。

 ヒーローが超克する(または敗北する)ことになる、特別な存在になるための代償。これによって読者=普通の人は主人公と共感できるのです。


 スーパーヒーローとして生きることは、決して楽ではありません。本当に苦しい。それなのに彼は自分よりも社会のために努力しようとします。特別はつらいというメッセージで、「パワー」のためには何かをあきらめなくてはなりません。


 「呪い」は「パワー」とバランスをとり、我々が主人公をひどく嫌うことがないようにしています。

 望むものすべてを持っている人間は、誰であれいけ好かないものです。

 だから、なんとか我慢できるようにするべく、我らがスーパーヒーローになんらかのハンディキャップをつけておくのです。

 自分の正体(アイデンティティー)を隠しておかなくてはならないという「呪い」のみならば、こうした主人公たちは二重のアイデンティティーを背負っているのです。


 「スーパーヒーロー」の一作目が成功しても、続編が失敗する原因のひとつ。

 一作目ではスーパーヒーローの苦悩にも焦点を当てて、観客の共感を得るように作ったのに、続編になるとそれを忘れてしまうのです。『スパイダーマン2』はそういう過ちを犯さなかったから大ヒットしました。




 「スーパーヒーロー」の多くで「マスコット」が現れます。スーパーヒーローの足元にまとわりつく、最後まで忠実な子犬。こうしたキャラクターが我々一般人と、彼らの間のコントラストを示します。




「小説の書き方」コラム

827.構成篇:ジャンル4:勇者譚

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889417588/episodes/1177354054891985985


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【参考図書・引用図書】

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』菊池淳子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 『SAVE THE CATの法則』を使いたおす!』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2000円)

▼ジェシカ・ブロディ氏『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』島内哲朗訳・フィルムアート社(税別2500円)

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