第27話 10 迫り来る悪い奴ら

第二幕後半

10 迫り来る悪い奴ら(55-75枚・50〜75%)

 50〜70%。

 複数場面で構成され、かなりのページ数を要します(全体の25%が目安)。


 〝ミッドポイント〟で「引き返せない地点」を越えてしまうと、主人公は変身の最も困難な局面に入ります。変化は苦痛です。


 〝ミッドポイント〟は〝お楽しみ〟の終わりかつ、主人公がどんなふうになりうるかを垣間見るポイントであるだけでなく、主人公が変わらなくてはならないと認識するときです。

 だから主人公はここから戦い始めて、〝すべてを失って〟まで戦い続け、抵抗し続けなくてはなりません。

 好むと好まざるとにかかわらず、彼は行かなければならないのです。

 ここでは主人公がかつてリアルな、しっかりした基盤だと信じていたものが崩れていき、対応を強いられます。


 伝統的な意味での「悪者(そういうのは「表の悪者」と呼ぶ)」を出せと言っているわけではありません。実は「悪い」ことが起こせというわけですらないのです。


 〝ミッド・ポイント〟で「偽りの敗北」を迎えた場合はここで好転、「偽りの勝利」を迎えた場合はここで転落。その間にも「内なる悪者」が迫り来る。


 もし〝ミッド・ポイント〟で悪い奴ら──人間だけでなく物や現象なども含む──は敗北を喫したように見えて、「偽りの勝利」(主人公が勝利したかに見える)を迎えたのなら、〝迫り来る悪い奴ら〟ビートは次の〝すべてを失って〟までどんどん下り坂です。

 (単調にならないために何度かボールを弾ませる以外は)。

 事態はどんどん悪化します。

 なにしろ〝ミッド・ポイント〟の勝利は「偽り」であり、実際に勝ったわけではありません。勝ったと思っただけです。

 だから、ここで主人公に、勘違いを見せつけてやります。

 その役目を負うのは、いわゆる「悪者」でもかまいません。主人公の身に降りかかる「もっと悪いこと」でもかまいません。

 悪い奴らは〝迫り来る悪い奴ら〟で態勢を立て直し、総攻撃を仕掛けようと決意します。

 一方主人公のほうも、「偽りの勝利」のあと、仲間と意見の食い違いが起きたり、疑いや嫉妬で結束力が弱まり始めます。

 悪い奴らが再び一致団結し、パワーアップして主人公に迫ってきます。

 悪い奴らは決してあきらめてはいないのです。

 主人公には助けを求める場所はもうありません。自分の力で乗り切るしかないのです。



 一方、もし〝ミッド・ポイント〟で「偽りの敗北」(主人公は負けたかに見える)を迎えたのなら、〝迫り来る悪い奴ら〟は好転して上向きになります。

 人生、どんどん良くなっていきます。

 すべては快調、良いことばかり。障害物は取り除かれ、状況は改善。ひっくり返った第二幕の世界も、捨てたものでもないかも。

 〝迫り来る悪い奴ら〟が上り坂の場合、〝すべてを失って〟の直前にこのような「偽りの勝利」を置くことがよくあります。

 主人公はすべてを失う前に小さな勝利を収めるのです。


 上り坂でも下り坂でも、あなたの「悪い奴ら」がいわゆる「悪者」でも単に主人公に降りかかる災難でも、すべての物語に絶対に存在しなければならない「悪者」が1人います。

 それが「裏の悪者」です。

 つまり、主人公が抱える欠点・問題のことです。


 第一幕で〝セットアップ〟した主人公にとって都合の悪い諸問題。

 〝テーマの提示〟のビートで約束されたとおり、いよいよ主人公が自分の問題から逃げ切れないときが来たのです。


 この時点でも主人公はまだ物語の冒頭と同じで、自分に不満を抱えたままどころか、さらに悪化しています。

 これこそが、主人公が第一幕から引きずっている「裏の悪者」。

 主人公に忍び寄って、変わるのを邪魔します。


 それが〝迫り来る悪い奴ら〟ビートの正体です。

 第二幕で主人公が転落しても好転しても、主人公の心に巣食った「裏の悪者」が悪さをします。

 人間関係を邪魔し、成功を阻害し、幸福を壊している。

 主人公が「正しい方法」で問題を修復できるようになるまで、「裏の悪者」は暴れ続け、主人公をどん底に追い込んでいくのです。




▼探求は主人公にとってより過酷なものになっているか?

▼主人公を攻撃する外的・内的な力は十分あるか? 主人公が認めることができないおぞましい真実とは何か?

▼主人公が居心地のいい場所をひとつひとつ奪われていくのを我々は目にすることになるか?




「小説の書き方」コラム

819.構成篇:ハリウッド「三幕法」(セクション10〜12)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889417588/episodes/1177354054891920346


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【参考図書・引用図書】

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』菊池淳子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 『SAVE THE CATの法則』を使いたおす!』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2000円)

▼ジェシカ・ブロディ氏『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』島内哲朗訳・フィルムアート社(税別2500円)

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