第17話 1 オープニング・イメージ

1 オープニング・イメージ(1枚・最初から数えて全体の1%まで)

 〝オープニング・イメージ〟は1場面または1章だけのビートです。


 映画の第一印象は重大で、すべて〝オープニング・イメージ〟で決まります。

 作品のスタイル、雰囲気(ムード)、トーン、ジャンル、スケール、テーマ、テンポなどが明確に象徴されています。

 これにより観客はこれから自分がどういう映画を観るのか想像できるのです。

 笑いを誘う作品ならこのビートで笑わせる。サスペンスあふれる作品ならハラハラさせるのです。


 そして主人公を紹介して「使用前(ビフォー)」の主人公を見せます。

 主人公の欠陥だらけの人生を見せるところです。

 何をすればいいのかというと、行動するキャラクターで小説を始めます。

 ここは「始まりの独白」でも「始まりの設定の説明」でもなく、光景。

 読者に欠点を抱えた主人公を見せるところです。


 その欠点のせいで主人公の人生がうまくいかなくなっている様子を見せるのです。

 弱気で自信がない主人公なら「彼は弱気で自信がなかった」なんて書かず、どう弱気で自信がないか「見えるような行動」を書いてください。


 〝オープニング・イメージ〟を読み終えた読者から「そういう感じなんだ。それなら続きを読むわ」という反応が欲しいわけです。


 〝オープニング・イメージ〟はまた、これから一緒に旅をする主人公の出発地点と、変わる前の世界の「使用前(ビフォー)」の映像を見せる場です。

 ということは当然対になる「使用後(アフター)」の映像──どんな変化が起きたか──を見せる〝ファイナル・イメージ〟があります。


 ふたつのビートは脚本のはじめと終わりでどんな変化が起きたかを示します。

 このふたつのビートはプラスとマイナスのように真逆になっているので、ストーリーの劇的な変化や感情の大きな変化が見えるのです。

 可能なかぎり違った光景にしないと、主人公がどこにたどり着いたかよくわからなくなります。始めと終わりが違うほど、読み甲斐があるのです。


 実は面白い作品かどうか、きちんと変化が描かれているか確かめるために俳優が目を通すのは、たいてい最初と最後の10枚くらいなものです。

 そこではっきり書かれていなければ、脚本はその場で「却下」されます。




▼多くを漏らしすぎることなく、どういう種類のストーリーかをトーンで語っているか?

▼〝オープニング・イメージ〟でこの映画のタイプにふさわしいムードが醸し出されているか?

▼この〝オープニング・イメージ〟が「ビフォア」ショットだという、明確な印象を与えているか?




「小説の書き方」コラム

815.構成篇:ハリウッド「三幕法」(セクション1・2)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889417588/episodes/1177354054891907358


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【参考図書・引用図書】

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』菊池淳子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 『SAVE THE CATの法則』を使いたおす!』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2000円)

▼ジェシカ・ブロディ氏『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』島内哲朗訳・フィルムアート社(税別2500円)

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