第2話 どんな主人公ですか(特徴と問題)

どんな主人公ですか(特徴と問題)


 「主人公はなにを目指し、なにをなそうというのか」が決まれば、物語の方向性も定まります。

 次に必要なのは、


「どんな主人公なのか」


 です。

 単に「異世界転生した主人公」では読み手を惹きつけられません。

 「異世界転生した中年男性」。ありきたりですが単に「異世界転生した主人公」よりはましです。

 「どんな主人公なのか」で「中年男性」はありきたりですけどね。


 そこで拙作では『『孫子の兵法』オタクの女子高校生が異世界転生!軍師に成り上がって大陸制覇を目指します!』としました。

 つまり異世界転生したのは「女子高校生」というだけでなく「『孫子の兵法』オタクの女子高校生」とピンポイントを突いたのです。


 「どんな主人公なのか」が一目瞭然ですよね。


 「女子高校生」が異世界転生するWeb小説は山のようにあります。

 「『孫子の兵法』オタクの女子高校生」はあまり見られない設定です。 

 だから興味を惹くわけです。


 上記は「特技・長所」から見た「どんな主人公なのか」です。





どんな問題を抱えた主人公なのか


 次は「問題・欠点」から見た「どんな主人公なのか」を考えてみます。


 そもそも読み手は、完全無欠の主人公なんて求めてはいません。どこかに問題や弱点を抱えた主人公のほうが魅力を感じるものなのです。

 だから「主人公はなにを目指し、なにをなそうというのか」が決まると、できるだけその達成が困難な主人公に設定すると、俄然興味が湧いてくるのです。


 「え? この設定の主人公に、こんなことが達成できるの?」


 このギャップが大きいほど、物語の求心力が高まります。



 「女好きの殺し屋」はどうでしょうか。

 殺しの仕事より女性と付き合うことをとりそうですよね。そんな問題をはらんだ主人公であれば、興味を惹きます。

 しかももし殺しのターゲットが美女だったらどうでしょうか。女好きの主人公は彼女を殺せるのか。大きな葛藤が生じますよね。


 簡単なログラインで表すなら「女好きだが世界最高の殺し屋が知らずに請け負ったのは美女の暗殺で、ターゲットの彼女のハートを奪いながら命も奪う。」

 なにか読んでみたくなりませんか。



 「女嫌いなのにハーレム暮らしの第四王子」なんて、なにかが起こりそうですよね。

 Web小説だと、性的描写で興味を惹こうとする書き手がいるため、どうしても「女好き」の主人公が増えます。だからこそ「女嫌い」に設定するだけで差別化できます。



 もし自作の「『孫子の兵法』オタクの女子高校生」が「男嫌い」だったら、さらに読み手を惹けた可能性は高いですね。

 プラス方向だけでなく、マイナス方向も加えた「どんな主人公なのか」をしっかりと設定し、ログラインに書き込みましょう。

 紹介文のログラインだけでなく、タイトルやキャッチコピーに含めてもよいでしょう。



 抱えている問題や欠点は、物語全体に影響を与えます。克服されないかぎりは。

 ただ、克服されるのはたいてい物語の〝フィナーレ〟でです。

 物語の途中で克服されてしまうと、推進力をひとつ失ってしまいます。


 「え? この設定の主人公に、こんなことが達成できるの?」


 このインパクトがあるから、途中まで小説を読んできたのですから、マイナス設定を解消してしまうと興味を失いかねないのです。

 問題や欠点に気づくのは物語中でかまわないのです。「気づき」から行動を変化させるタイミングが物語にはあるからです。

 だから問題や欠点を克服するのなら、たいていは物語のエンディングにおいてです。


 ちなみに「なぜその問題や欠点を抱えているのか」を決めておくとよいでしょう。理路が整然として説得力を持つようになりますよ。



 なぜ小説を読むのか。

 主人公が問題を解決して、人生をより豊かにし、欠点を改善する一連の「物語」に触れたいからです。

 不完全な主人公を少しはましな人物にする。

 それが小説の醍醐味です。





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【参考図書・引用図書】

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』菊池淳子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 『SAVE THE CATの法則』を使いたおす!』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2000円)

▼ジェシカ・ブロディ氏『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』島内哲朗訳・フィルムアート社(税別2500円)

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