レプリカの抽象画

理想的な状態とは言い難い

自分ですら己の身に

何が起こっているのか理解出来ていない

それでも一定の予感を超えると

部屋中を黄色と白の鸚鵡が飛び回る

これもある種の連想なのだろうか

正直に自分の考え(のようなもの)と

卑怯で劣悪な考え(であるもの)と

僅かにでも向き合える唯一の時間は

ただ薄暗い道を歩く想像の中だけかも知れない

俯くと身体のどこかに隠していた

哀れで惨めな出来事がいくつも浮かんできて

本当はここがどこなのかを思い出させようとする

どこに居ても閉じ込められたままで

何もかも操作されたイメージと選択の連続でしか無い

という事実を思い出させようとする

前髪の隙間を掠めていく冷たい風の中に

看過すべきで無いいくつもの重要な真実が含まれている

地面を撫でる枯れ葉

ふと、本棚の後ろに落とした指輪のことを想起する

埃を被り

虫に踏まれ

濁った空気が染み込み

内側から腐っていく過程を想像する

思考が助走もつけず

ヒントもくれず

ただ、嘲笑いながら宙を舞い

それにいつまでも翻弄される

わたしはそれらを感じたくない

あなたがたがわたしに

それを感じるのを禁止する以上に、遥かに強く


悪夢的な発想が具体性を帯びていく

炎を放った後の土地

何もかも破壊し尽くされ

蹂躙され、否定され、覆された後の土地

どうしても優しい人間の振りがしたくて

山羊の背中を何度も撫でた

あらゆる不幸を嘆くような仕草もした

しかしそこまでしても

聞いたことの無い言葉がとぐろを巻いていた

吹きこぼれる青い葉

同じ話を異なる順序で話し続ける

誰もが当然のように嘘をつき

籠から野花を奪っていく

そして「偏執的な妄想である」として打ち遣られた

べたべたする不安を暴いていく

喉の奥に灰色の錠剤が張り付く


車から降りて雪の中に横たわると

もうそれより前のことは忘れ去り

それより先の事も

想像する必要が無くなるのを感じた

全員死んでしまった

荒れ果てた夢の感触

飲み込まれるような

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