第5話 顔1
顔は人それぞれである。10人いれば10の顔、100人いれば100の顔がある。双子のように、よく似ている顔もあるが、細かく見ればやはり別の顔である。
でも、皆さんも聞いたことありませんか?よく聞くじゃないですか。世の中には、まったく同じ顔をしている人が3人はいるって。
そしてその3人はけっして出会うことがなく、もし、もし出会ってしまった時は・・・・・
出会ったときには、どうなるのかは聞いてはいたが、あまり記憶が定かではない。ただ良い話ではなかったという記憶はある。
東京は多摩地区の西部。小さな町にある中学校の出来事である。
今日は同じクラスの友人と新しく発売されたゲームの話をしていて、下校時間が少し遅くなってしまった。友人と別れて自宅への帰り道をのんびり歩いていた。
「よお、お疲れ!」
突然、背中をドンと叩かれた。衝撃に驚き振り返ると、小学校からずっと仲が良い親友の笑顔があった。
「お前、随分早いな。さっき途中の本屋で本読んでいたはずなのに、いつの間に帰った来たんだよ?」
「人違いだろ。今日はオレは本屋なんか寄っていないよ」
「とぼけんなよ。あのアニメの新刊が今日発売日だから本屋を覗いてみたんだ。やっぱりお前が新刊を夢中になって読んでただろ。新刊その一冊しか残ってなかったから、オレは諦めて帰ってきたんだよ」
『何言ってるんだコイツ。オレのことからかってるのかな』
「そういえば、この前の日曜日の昼頃。お前、可愛い女の子と二人で歩いていただろ。たぶんB組の女の子だな。お前、いつ彼女なんかできたんだよ」
『日曜日の昼頃?女の子なんかと歩いてねえぞ。コイツ、誰かと見間違いしてるな』
「何言ってんだよ。オレは彼女なんかいねえぞ。誰かと見間違いしてるんじゃねぇか」
「おい、隠すなよ。オレたち親友だろ」
真面目な顔して聞いてきたが、まあ単なる勘違いだろうから、適当に流してバカ話をしながら帰宅した。
このところ、おかしなことが続いている。一度も行ったことがない隣町のファミレスで、食事しているのを見かけたとか。
ガラが悪そうな連中と一緒に、バイクを乗り回していたとか。免許なんか持ってないのに、バイクなんか乗れるわけないじゃねえか・・・・・
ある日、昼休みに生徒指導室に呼びだされた。部屋の中には、厳しい顔をした担任教師、見覚えがある同じ学年の生徒そして母親らしき女性が待ち受けていた。
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