第6話 顔2
「彼に間違いないかな?」担任が問う。
「間違いないです」
同じ学年の生徒の顔に青いアザがあった。今週の日曜日、近くのコンビニで体が軽くぶつかったのを理由に、店の外に連れ出され殴られたというのだ。もちろん、オレにはそんな覚えなどまったくない。
否定はしたものの、絶対に間違いないという彼の発言に、彼の母親もさらには担任さえもオレに強く謝罪を求めた。
自分に似た男が彼を殴ったのは日曜日の2時頃とのことであった。担任から日曜日の服装を聞かれた。
お気に入りのヤンキースのロゴ入りの黒Tシャツ、シーンズの半ズボンに白のスニーカーを履いていた、そう答えると、彼と母親、担任が目を合わせ頷いた。
事前に聞いていた犯人の服装と、完全に一致しているとの事だった。
必死に弁解したが、殴られた生徒の証言は確証として扱われ、学校からは1週間の自宅謹慎の処罰を言い渡された。
あまりに突然の話にすっかり慌てていた。日曜日は親友の家でゲームをしていたことをすっかり忘れていたのだ。
自宅謹慎の話を聞いた親友が10時から4時位まで一緒にいたと学校側に証言してくれた。親友の母親も確かにオレはずっと家にいたと話してくれたようだ。
お互いの主張が噛み合わないままの曖昧な決着であった。オレに確実なアリバイがあったため、無実の罪を逃れたものの、顔はおろか服装までも自分にソックリな第三者に強い不安を感じていた。
このところ絶対にあり得ない不可思議な現象が起こっているのは確かなようだ。
「ただいまあ!」
「もう、何言ってるのよ、何度も」
母さんの呆れたような声が聞こえた。2階の部屋に入り、服を着替え昨夜の続きのゲームを始めた。
『あれ、昨夜このステージまで行ったかな?』
なかなか思うように勝てなくて、半分居眠りをしながら深夜までやっていたので、記憶が定かではないけど。
今日は、なんかメチャ腹が減っている。キッチンの横を通りトイレに向かう。夕食の料理を作っている母さんにひと声かけた。
「母さん、今日の晩ごはん何?」
「もう、さっきカレーって言ったでしょ」
居間では、珍しく代休でお休みの父親がのんびりテレビを楽しんでいる。父親の後ろを抜けてトイレに。
あれ、トイレには先客が入ってるみたいだ。おかしいなぁ。ウチは両親と自分と3人暮らし、お客が来ているようでもないのに。
じゃあ、今、トイレに入っているのは・・・・・
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