第2話 誰2
夕食を、今日はファミレスで軽く済ませたあの同級生のことが心にずっと引っかかり、あまり食欲が無かった。
自宅に帰り、熱いシャワーを浴びる。
少しはスッキリした気分になった、
タンスの上で埃をかぶっていた衣装ケースを久しぶり下ろした。ケースの蓋を開けると、懐かしいアルバムや卒業証書などがぎっしりと詰まっている。
今はもうすっかり古びた中学の卒業アルバムが顔を出した。
なぜか鼓動が早まり、なぜか気が重い。
古いアルバムのページを捲っていく。3年A組の集合写真、いくつかの個別写真。B組、そしてオレがいたC組のページ。
集合写真を見つめる。最前列の左端から順番に、かっての同級生のまだあどけなさが残る懐かしい顔が並ぶ。
最前列の真ん中に、お世話になった担任の国語教師の優しい笑顔も写されていた。中3の様々なイベントでの集合写真では、身長が高かったオレは最後列が定位置だった。
いた!もちろんいるのは当然だけど、なぜか少しホッとした。そして右隣りには・・・・・
今日初めて会った、見知らぬかっての同級生の笑顔が、間違いなく写り込んでいた。
名前を確認する。まったく記憶がない。
何度も何度も、顔を、名前を確認する。
思い出せないのではない。記憶にないのだ。まったく知らない同級生の笑顔・・・・・
どうしたんだろう?
どうしちゃったんだろう?
目を瞑って頭を強く左右に振った。
もう一度、見間違いであることを祈りながら、写真に目を落とす。変わりはしない。変わるはずなどないが。
いや、何かが違う。全体に、なんとなく違和感があるのだ。懐かしい他の同級生も、担任の笑顔さえも。
なぜだか分からないが、不安感に体温がスッと下がり、慌ててアルバムを閉じて、埃の被ったケースに戻した。
気持ちを落ち着かせるために、居間のテーブルの上、いつも決まった定位置にあるタバコを探した。
無い・・・・・タバコか無かった。あれ、何処かに置いちゃったのかな?しかも灰皿さえも見当たらないのだ。
しょうがねぇな。とりあえずタバコは諦めて立ち上がり、キッチンの冷蔵庫を開けた。
キンと冷えたビールは欠かしたことがない。冷蔵庫内の一番下には、常時10本程度のビールを冷やしてストックしているのだ。
無い。あるはずのビールが1本も無いのだ。なぜか・・・・・
「コーヒー入ったわよ」
隣の部屋から妻が声をかけてきた。テーブルの上に白いカップを2つ置き、微笑みながらソファの隣に腰を掛けた。
いつもと変わらぬ妻の優しく美しい笑顔。
昔から、結婚する前から、今までずっと、コーヒーが苦手で、一度も飲んだことさえなかったのに・・・・・
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