〈思い出⑦〉
彼女をずっと見ていた。
最初はただ仲良くしていただけで、でも次第に別の感情が生まれ、それは恋とも憧れとも呼べるものになっていた。
そうしてこの胸の動きに名称を付けてから、彼女との距離がすごく離れているように思えてしまい。
自分は釣り合わない。
彼女に相応しくない。
俺は俺の事が好きじゃなかったから、隣にいたら彼女の輝きを鈍らせてしまうのではと考えてしまう。
せめて、もっと強くなれたなら……
それに明確な基準なんてないのに俺は求めた。筋肉でも学力でもお金でも、どれでもいいから、何か誇れるものを手に入れようとした。
高校生になって、俺にだってまだ可能性はあると思っていた。筋トレを日課にし、テストでは満点を取って、アルバイトに勤しみ節約すれば、理想の自分になれるはずだと。
そうしていつか、俺が俺を認められる日が来たら。
この気持ちを伝えよう。
日に日に溢れていく想いにそう言い聞かせて、俺はそれまで苦しむ覚悟もした。
けれどその努力は、運命によって潰える。
その瞬間俺は、本当に全てを失ったと思ったんだ。
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