第16話「初デート」


電車が到着すると、その乗客が改札に流れ込んでくる。


登校時と同じく、その波の後方から、結衣の姿は現れる。



「おはよ」


「おう、おはよ」



私服の結衣。


ゆったりとした紺色のパーカーに、ベージュ色のワイドパンツ。


パーカーの下には白っぽいシャツ・・・というよりかは、トップス? みたいなのを着ている。


オシャレとか分からないし、服のセンスなんて皆無。


俺は適当なズボンとシャツにパーカーの組み合わせなのに、なんだろう、この温度差。


友達という関係ならまだしも、俺らは一応・・・いや、普通に恋人。


オシャレとか、そういうのにも気をつけた方がいいのだろうか。



「可愛いとかないの?」



と、結衣が。


これも漫画とかだとテンプレートだけど、現実でも言った方がいいのだろうか。



「あ、うん。かわいい」


「キモ」


「え、なんで」



なんか、ものすごい理不尽を味わった気分。



「んで、どこに連れてってくれるの?」


「あー、そうだなぁ」



正直、何も考えてなかった。


というか、俺が案内することすら忘れていた。


どうすべきか。


この街は俺にとっては庭も同然。


道も観光地も一通り把握はしているが・・・。



「そしたら・・・公園に行ってみるか」


「公園? 桜が有名なところ?」


「そこそこ」



桜が有名な公園。


この皆瀬という街では、おそらく一番有名な観光地だろう。



「まだ見ごろなの?」


「もう無理なんじゃない?」


「じゃあ何しに行くの?」


「まぁ来ればわかるさ」



ということで、歩きます。


田舎なんて自動車社会。


歩くとそれなりに長い距離を歩くことが多いが、まぁ仕方ない。


お互いまだ高校生で、自動車免許なんて持っていないのだから。


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