第6話「変化しても変わらないひととき」


クラスの奴らと打ち解けていった結衣。


学校で、自分の居場所を手に入れたようだ。


そうなれば、俺と結衣の関わりも減るものだろう。


まぁ人間関係なんてそんなものだろう。


仲のいい奴と絡むのが当然だし、そっちの方が居心地が良い。


と、思っていたのだが・・・。



「神谷くん」


「あ、はい」


「帰り?」


「うん」


「一緒に帰ろ」


「あ、はい」



教室では、ほとんど話さなくなった。


いや、今も昔もほとんど話していなかったような気はする。


でも、なぜか登下校だけは一緒にしている。


結衣は学校から西花畑という駅まで向かい、そこから電車だ。


そっちの方へ下校する友達がいないのだろうか。


駅周辺は普通に住宅地。


探せばいそうなものだけど・・・。



「神谷くんのおかげで、色んな友達が出来たよ」



道中、そんなことを言われた。


いつの間にか、彼女のぎこちなかった喋り方も普通になり、小さかった声も、普通になった。


普通といっても、デカいわけではない。


なんというか、声は小さいけど、聞き取りやすくなったと言うのが正しいのかもしれない。



「よかったな」



なんか、ちょっと寂しいような。嬉しいような。


でも、彼女の新たな一面を知ることができたのかもしれない。



「別に、感謝してるわけじゃないからね?」



ちょっとツンデレなところも、彼女の新たなに知った一面だ。


創作物でよく見かけるツンデレという設定だが、実際にいるとかなり面倒ということも分かった。


そしてたまにムカつく。



「はいはい」


「それにしても、神谷くんは友達いないの?」


「どうしてそんな話になる」


「だって、いっつも私と帰ってるじゃん」


「君が誘ってくるからな」


「迷惑だった?」


「そんなことないけど。どうせ一緒に帰る奴なんていないし」



いないことはないけど、男友達と帰るぐらいなら、結衣と一緒に帰った方が俺的には良き。


女の子だしね。うん。



「結衣の方こそ、地元に友達とかいないのか?」


「そうだなぁ・・・いないかな」



おっと、これは地雷を踏んでしまった感じかな?



「いや、なんかすまん」


「あ、心配してくれたの?」


「どうしてそこで煽るような言い方をする」


「あはは、お気遣いいただきありがとうございます」


「はいはい」



結衣とはいっつもそんな会話をしながら歩を進める。


学校から駅まで、歩いたら20分から25分ぐらい。


でも、その時間は一瞬に感じた。


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