第2話「入学初日」


入学式が終わると、クラスごとに分かれてHRがある。


今年の1年生は、2クラスあるらしい。


まぁ中学も2クラスだったし、自分のクラスももう一つのクラスも、そのメンツはほとんど中学から知ってる顔だ。


ただ、彼女ひとりを除いて。



「なぁ五木、あれ誰だか知ってる?」



気さくに話しかけてくるのは、影森敦(かげもりあつし)。


中学の時から仲のいい奴だ。高身長で顔もよく、結構明るい奴。


だけどなぜかモテない。女子から見たら、ちょっと残念な奴らしい。


ちなみに俺は、神谷五木(かみやいつき)。



「あれって、あの女子?」


「そそ。中学にあんな奴いなかっただろ?」



見慣れた顔ぶれの中に知らん奴がいたら、そりゃ目に留まるわけだ。



「いなかったな」


「引っ越してきたんかな?」



敦がそう言う。


確かに、中学でも小学校でも見かけた顔ではない。


ここいらは山に囲まれた盆地の田舎町。


村雨高校はそんな田舎町にある普通の高校だ。


はるか遠くから遠路はるばるやってくるような高校ではない。


そうなると・・・引っ越してきた?



「知らね」



まぁ俺は何も知らないので、それしか言えない。



「ちょっと可愛くね?」


「そうか?」


「太ももとかもちもちしてそう」


「なんで太ももに目がいくんだよ」


「チャリ速そうだな」


「うーん、ギリ悪口」



クラスのほとんどの奴らは、中学からの持ち上がり。


何なら、小学校から知ってる顔がほとんどだ。


つまり、人間関係がほとんど形成されている状態。


入学式。校門の前で棒立ちしていたおさげの少女は、内気な性格なのだろう。


だから・・・というのもなんだが、彼女はクラスで孤立していた。


入学初日だから、友達が誰もいないのは理解できる。


しかしここは、普通の高校とはワケが違う。



「気まずそうだよな」



そんなことを俺がつぶやくと。



「話しかけに行けば?」



と、敦が気楽そうに言う。


現実問題、初対面の人に話しかけに行くのは相当難易度が高い。


いやまぁ、一応初対面ではないけど、ほぼ初対面のようなもの。



「遠慮しておく」


「誰か声をかければ、それにつられてみんな寄っていきそうだけどな」


「まぁな」



その誰かがいない。それが現実でもある。


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