俺と彼女の日常ラブコメ

有栖川 天子

第1話「棒立ち少女とすべてのはじまり」


地元の中学を卒業して、地元の高校に入学する。


田舎なんてそんなものだ。


クラスのメンツも変わらず、学び舎の場所が移動するだけ。


名前も村雨中学から村雨高校になっただけ。


今日は高校の入学式だ。


そんな大切な日に、俺は寝坊してしまった。


だってしょうがないじゃん。目覚ましが動作しなかったんだから。


頼むよ俺のAndroidくん。


物に当たっても仕方がない。


急いで支度をして、走って高校へ向かう。


もう入学式も始まっているであろう時間。


高校への小さな一本道の上り坂には、誰も歩いていなかった。


坂道を上がりきり、そして校門が見える。



「ん・・・?」



なぜか校門の前に、一人の少女が棒立ちしていた。


間違いなく、村雨高校の制服を着ている。


セミロングのおさげな髪型に、背丈は低め。立っているその姿は、猫背のように俯いている。


俺は陽キャではない。


初対面の女子に、いきなり話しかけるような人間ではない。


スルーしよう。そう思ったのだが・・・。


|д゚)チラッ。


向こうがこちらの存在に気づき、目が合ってしまった。


そして、どこか怯えるように、こちらを見ている。


これは・・・話しかけた方がいいのかな?



「えっと、先輩ですか?」



この人が1年生とは限らない。ということで、まずそこから尋ねてみる。



「い、、、いえ」



想像以上に高い声だ。声も震えている。


緊張しているのだろうか。



「入学式、もう始まってるけど」


「う、うん」



ちゃんと応答はしてくれるようだ。



「行かないの?」


「・・・」



ここで返答が返ってこなくなった。


彼女は胸に手を当て、不安そうにこちらを一瞥してくる。


俺のことが怖いのか? そんな風に思ってしまう・・・え、違うよね?


俺のこと怖いとかそういうのじゃないよね?



「行った方がいいよ。もう遅刻だし」


「つ・・・ついて、、、」


「ん? なに?」


「ついていって・・・いいですか?」



おどおどした声で、ようやく言えたその一言。


紅潮した頬に、落としっぱなしの目線。


でも。



「いいけど」



軽く返事をすると、あからさまにホッとしたような表情をしてくれた。


一人で校門をまたぐのが怖かったのだろうか。


そんな奴おるん?


まぁ世の中にはいろんな人がいるのだろう。



「あ、ありがと・・・」


「うん」



中学からメンツが全く変わらない、つまらん高校生活になりそうと思っていたが・・・。


入学早々、知らない女の子と知り合いになりました。


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