第12話「神谷五木。恋人ができました」


他人の家に集まって、やることと言えばなんだろうか。


現代の高校生だと、ゲームか雑談。


前者はともかく、後者は特に自信がない。


話題のつくり方など分からない。


いつもは自然にできているはずだが、いざ作ろうと思うとできないものだ。



「何かすることあるの?」



ここは結衣の部屋ということで、部屋の主である結衣にそう訊く。


これは言ってから気づいたことだが、そんなことを言われたところで。



「うーん・・・」



することなどあるはずがない。


結衣を困らせるだけだった。



「あー、まぁやることなくても良いけど」


「ごめん」


「謝らないでくれ。なんか罪悪感」


「あ、ごめん。じゃなくて、うん。わかった」


「うーん。そうだなぁ」


「やれるとしたら、えっちなことぐらいだよ・・・」


「あー、まぁそうだ・・・え?」



まぁ冗談のつもりなんだろうけど、そんな冗談言うような子には思えなかったので・・・。



「あはは、ごめん」


「あいや・・・うん、おれヘタレだから」



なーんか微妙な感じ。


そうなってくると、やはり雑談で乗り切るしかない。


しかし、話題なんて存在しない。いや、存在することは存在する。


俺はまだ、結衣について知らないことが多い。


でも、そんな単純な質問をしていいのだろうか。


あなたの趣味は何ですか?


英語の例文かな?


What is your hobby?


そんなことを訊いて、つまらない人とか、こいつキモイとか、思われないだろうか。



「ねぇ神谷くん」


「あ、なに?」


「さっきは動揺してたから、あんまり受け答えができてなかったと思うんだけど」


「うん」


「神谷くんは、私の気持ちを受け入れてくれたんだよね?」



そんな回りくどいような、詩的のような、そんな表現。


分かりやすく言ってくれた方が、誤解もなくて有難いのだが・・・。


まぁ結衣の表情を見る限り、はっきりとは恥ずかしくて言えないのだろう。


顔が紅潮している。



「えっと、俺も急だったからあんまし理解してないんだけど・・・告白されたんだよね?」


「ちが・・・あいやそう! うん!」



え、いま一瞬否定しなかった?


もしかして違ってた?


俺の勘違いだった?


だとすると、おれ相当恥ずかしいよ?



「ごめん、違ってた?」


「ううん。告白したのはそう。だけど、ちょっと恥ずかしくて」


「恥ずかしがる必要はないよ。結衣の気持ち、うれしかったよ」


「ありがと。でも、よくそんなセリフ言えるね」



その一言はちょっと刺さる一言だ。



「ほっとけ。んで、君の質問の答え。結衣の気持ちに、俺は応えるよ。付き合うんでしょ?」


「うん。ほんと、ありがと」



心からの笑顔をした結衣が、そう言う。


神谷五木。恋人ができました。


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