第8話「結衣のお家は・・・」


部活動の仮入部は、クソほど興味がないのがこの俺だ。


気が向けば赴いてもいいかなぁと思っていたが、面倒くさくていつもまっすぐ下校。


そう言えばだが、結衣も仮入部に行ってる気配がなかった。


いっつも授業が終わると下校する俺に合わせて一緒に下校。


部活には入らないのだろうか。


そんなことを思いながらも、ボーっと過ごしていたら。



「もう5月やな」


「そうだね」



いつもの帰り道。未だに結衣は、俺のことを誘って一緒に下校する。



「そういや結衣は、なんか部活入ったん?」


「ううん」



首を横に振る。


ということは、入っていないのか。



「興味あるのなかった?」


「いや、家の手伝いあるからさ。部活する時間はないかなぁって」


「家の手伝い?」


「うん。うち、ケーキ屋やってるから」


「ケーキ屋さん!?」



ケーキ屋さんとはこれまたオシャンティーですね。



「ということは、ほぼバイトみたいなもの?」


「うん。お小遣い貰ってるし」


「羨ましいなぁ」


「神谷くんもバイト始めれば?」


「いやぁ、ここらへんは募集なくてさ」


「そうなんだ」


「和佐の方だと、あったりするの?」



和佐とは、結衣が住んでいる街の名前。


ここよりも発展している街だ。


都心とのアクセスがギリ可能なベットタウンでもある。


ただし田舎町ということに変わりはないが・・・。



「飲食店とかならあるんじゃない? あとはコンビニとか」


「そっか・・・こっちはそれすらもないからなぁ」



いや、ないことはないけど、そう言うところの募集は既に埋まっている場合が多い。


というか、そもそも募集がなかったりする。


コンビニなんかだと深夜帯の募集があったりするが、高校生には働くことのできない時間帯だ。



「大変そうだね。ガンバレー」



と、他人事な返事をする結衣。


まぁ他人事なので、それなりの返事だとは思う。


こっちも生活がヤバいってほどではないけど、せっかく高校生になってバイトが出来るようになったのだから、バイトをして自分でお金を稼いでみたいものだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る