第17話「最高の感動を初手で消費してしまう」
駅で合流し、歩くこと10分ほど。
10分とは言っても、かなり急な坂道があるので、体力はだいぶ削られただろう。
「はぁ・・・はぁ・・・」
歩いていただけなのに、息を切らしている結衣氏。
俺の想像以上に体力がない子のようだ。
「大丈夫か?」
「うん。でも、これが田舎を観光するってことなのね」
「いや、そうとは限らんと思うが」
傾斜の急な坂道を登り、多少辛くても見せたかったのが、ここに広がっている景色。
「観てみ」
呼吸を整えた結衣が、顔を上げて目を輝かせる。
ここは、皆瀬の街が一望できるスポットだ。
昼でも景色は良いが、夜は夜景がさらに綺麗。
なのに、意外と知られていない穴場スポット。
決して大きな街ではない皆瀬だが、市街地はそれなりに建物が密集している。
「ここが、俺の生まれ育った街だ」
「意外と大きな街だね」
「それなりにはね」
「良いところ知ってるじゃん」
「ここをラストにしようか結構悩んだ。まぁでも、何でもいっかなぁって」
「あ、じゃあこのレベルの感動はもうないのね」
「あとはしょぼいところ」
「期待しないでおくわ」
「この街はそれぐらいがちょうどいい」
期待するような場所は存在しません。
あったとしたら、とっくに観光資源として売り出されているからね。
「ちょっと休憩するね」
近くにあるベンチに座り、持ってきたペットボトル飲料の水を飲む。
結衣氏、クールダウンです。
「ちょっとハードだったか?」
「ううん、大丈夫。んで、次はどこに行くの?」
「皆瀬神社とか?」
「ほんとに期待しなくてよさそうね」
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