第15話「皆瀬という盆地の田舎街」
親から小遣いをもらって、ひもじい学生の休日。
最強の節約術は、出かけないことだ。
しかし今週末は、そうもいかないイベントが発生する。
そのフラグは、昨日金曜日の下校時の出来事。
「え、この辺で遊ぶの?」
「うん。私この街のことよく分からないし」
高校のある街は、結衣にとって無縁の土地だ。
結衣が知っているのは、せいぜい西花畑の駅から高校までの通学路ぐらいだろう。
だからなのだろう。
「この辺を散歩するだけでもいいから、色々見て回りたいな」
そんなことを、結衣が言い出した。
このあたりの土地の名前は皆瀬(みなせ)という。
ここは鉱山で栄えた街で、今でも鉱山から鉱物資源を採掘して成り立っている街だ。
しかし、観光地としての発展も遂げている。
40年ぐらい前に、都心から直結する鉄道路線が開業した。するとそこの鉄道会社を筆頭に、観光産業を発展させる動きが出てきたらしい。
まぁそれが40年前で、今となっては鉱山都市というより、観光都市って感じになってしまっている。
と、ここまでが小学校の社会の授業で習ったこと。
観光都市とはいっても、目玉となるようなでっかい観光地があるわけでもなく、全国的に魅力のある知名度の高い観光地があるわけでもない。
なんか、パッとしない観光地ばかりだ。
だからこそ、俺はこういった。
「この辺はつまらんと思うけど」
一応この街で生まれて、この街で育ってきた俺。
地元民は地元の観光をしないって言うが、16年も生きていると、幾度かそういうところに行く機会ってのが訪れるものだ。
んで、実際に行っての感想だが。
「この辺の観光地はどこもかしこもつまらんからなぁ」
ということだ。
「そうなのかな。パンフレットとかだと、結構楽しそうなところあるけど」
「パンフレットはそりゃそうだろって感じかな」
良く見せないと、観光客来ないからな。
「なによ、出かけたくないの?」
「そういうことじゃないけど」
「つまらなくてもいいよ。だからお願い」
「まぁそれでもいいなら」
と、これが昨日の出来事。
そして今日。
西花畑の駅前で、結衣の到着を待つ。
地味に、週末に会うのは初めて。
つまり、私服で会うのは初めてというわけだ。
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