初めての休日
コノハが皇宮に
コノハが起きたのは、従者の部屋に朝食が運ばれてくる直前だった。
寝巻きのままコノハが食台の方を
「彩女さん、おはようございますっ。今から着替えますね、すみませんっ!」
「ゆっくりで大丈夫よ」
コノハは顔を洗うと、仕事着よりも軽い濃藍の普段着に着替えた。急いでいたので、髪はひとつ結びだけにしたようだ。
コノハが食台の前に着いた時には、もう朝食の膳が食台の上に置かれていた。そして、ようやく
「あれっ?? 白人さんはいらっしゃらない、ですね……?」
「朝早くに出かけて、実家に帰っているわ。皇宮から歩いていけるくらい近い、平地の農村に行っているわ」
コノハが食台の席に座ると、手を合わせてから朝食を食べ始めた。コノハの様子を見て、彩女も
朝食を食べ終えて、膳を台所まで運ぶと、コノハは小さく
昨日は目を閉じてから、完全に眠るまで少し時間がかかったが、今日の朝は目覚めが悪い訳では無かった。自分が思っていたより熟睡できていたことに、コノハは
「そーいえば今日は休みだけど、予定はどうするの?」
「うーん、そうですね……。日中に
「昼過ぎからは休みよ。半休ね」
「太陽の南中前は、お仕事なんですね……。本当にお疲れ様です」
自室に戻ると、コノハはいつも通り髪を団子状にしてまとめた。その後、防具を付け弓矢を持つと、彼女は外に出たのだった。
訓練所に近付いていくと、遠くから「ヤーッ!」やら「はいっ!」やら、かけ声が聞こえてきた。訓練所のすぐ
ハキハキとした太い声なので、皇宮の近衛兵が懸命に武術を磨いているようだ。訓練所のかけ声が響いているのは、剣の訓練場の方だろう。
コノハが弓の訓練場に入ると、彼女以外の者は誰も居なかった。
彼女は休憩用の椅子に目もくれず、迷わず的の前まで来た。一度、大きく深呼吸した後に、矢を
コノハが的に刺さった矢を取りに行こうと、一歩前に踏み出そうとした時、
「怪我をしているのに、大丈夫か? ……無茶はするなよ」
「無茶はしていませんよ、ありがとうございます。まだ
「そうか……」
真顔で部屋に入ってきた建比古だったが、ちょっとだけ表情が和らいだようだった。休憩用の椅子に座り、コノハの顔を見つめる。
「少し……、話をしても、いいか?」
「あっ、……はい」
コノハが体ごと建比古の方に向けると、建比古は話を続けた。
「大した腕前だから、前から気になっていたことだが……。誰から、弓の使い方を教わったんだ?」
「父方の親戚です。十年くらい前に亡くなったのですが、父の弟……叔父さん、ですね」
「叔父さん……も、武術を使う職だったのか?」
「はい、そうですね。長年、
穏やかに、かつ何だか楽しそうに話すコノハを見ていて、建比古も自然と微笑んだ。彼が珍しく胸が高鳴っていたのは、コノハは知らないのは当然だ。
すると、コノハは建比古が驚くような思いがけないことを伝えた。
「そーいえば……
ですが……、こんな田舎者の庶民に、繰り返しお声がけして頂けるなんて、建比古は本当にお優しいんですね。厳しい方だとお聞きしていたので、ちょっとだけ身構えていました。……あっ、ごめんなさいっ!」
話し終えた後、コノハは勢いよくお辞儀をして謝った。建比古は一瞬キョトンとしたが、すぐに笑顔に戻ったようだった。
「ハハハッ、あんたは素直だな。……まあ、よくあることだ。失明した左目は青っぽい色になっちまったから、変に怖がる奴も居るな。昔ほど気にはしていない、がな――」
建比古が
「鍛錬の邪魔をしたな。寒くなる時間の前には戻れよ」
「……はいっ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます