新妻、帰郷する(中)
そして夕方より少し前、やっと
太陽が西側に
広々と開かれている場所とはいえ、
あちらこちらに点々と、
緩やかな上り坂を進むと、棚田の横で、高齢の男性が一行に向かって手を降っているのが見えた。どうやら、その人がコノハの故郷の村長らしい。
村長は「よ〜来てくださりました」と、一行に深々とお辞儀をして、コノハの実家の案内をした。
村内には舗装された小道がほとんどあったが、傾斜が
そのような村長の姿を見て、一行の中の若者たちは非常に驚き、分かりやすい反応をしてしまうくらい関心をしていたのだ。
コノハの実家に着いた時、外はまだ明るいうちだった。
彼女の実家の庭に入ると、庭が狭いせいか、建比古たち一行は密集しているかのようになってしまったようだ。
すると、建比古たちの声に気付いて、
「ちょっと、アンタッ!! コノハが今、帰って来たよぉ〜。ボケーとしとらんと、はよお出迎えせなっ!」
「……あ……、おお」
家の中に居た男性がチラリと外を
「お父ちゃん、お母ちゃん! たった今、帰ってきたよっ」
コノハの両親が暮らしている家は、こぢんまりとしていた。そのため、使用人たちは外で待機し、建比古とコノハだけが家の中に入ることになった。
分厚い敷物の上に建比古とコノハが座り、彼らの真正面にコノハの両親も正座した。
建比古たちのすぐ
「コノハ殿の父君と母君! とんでもなく性急に大切なお
たまに衝動的になるという性格の欠点を、建比古はきちんと自覚して、かなり気にしているようだ。
妻の両親との初対面で、いきなり建比古は床に頭をぐりぐりと押し当てながら、勢いよく謝罪をした。これにはコノハだけではなく、彼女の両親も非常に驚いてしまったようだ。
「そんなそんな……、建比古さまっ。もうお顔を上げてくださいなっ! こんな高貴なお方がねぇ……、肉体労働好きで、マジメ過ぎる田舎娘を
「あっ……、あぁ」
非常に明るく、弾むような声を出しているコノハの母親とは対象的に、父親は
建比古がゆっくりと顔を上げたのを確認すると、次に母親は娘の方を見て満面の笑みになった。
「コノハ……、幸せになるんだよ。結婚だけじゃなくて、仕事のことも応援しとるでねっ! でも、
「うん、ありがとね。急なことで驚かせて、本当にゴメンナサイ……」
「なぁ〜に言ってんのさっ! めでたいことやから、気にする必要は無いって。
……建比古さま、これからも娘をよろしくお願いいたします」
「お……、オ、オネガイイタシマスッ」
コノハの母親が両手を床に付けてお辞儀をすると、父親も彼女を真似て同じ動作をした。
「はいっ、承知致しました!
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