新たな業務
皇国では最近、雪がちらちらと降る日もあり、本格的な冬を迎えていた。都から離れた地方では、大雪になる地域もある。以前コノハが住んでいた薬畑山は豪雪地帯で、非常に寒い。
一方で、
塞院の地、
まずは、
また、仕事で
コノハの業務の合間には、篤比古から
「僕には、塞院出身の
花媛の一家は、大王家とは遠い親戚である。彼女の父親は
篤比古は紙の上に
「塞院の隣で、ココからは南東の方角にある広〜いとこが、党賀になるよ。彩女さんの出身地でもある。優秀な武人が多く居るって言われているけど、コノハさんも知っているかな?」
「はい、
武術に長けている人々が多い理由は、党賀は砂鉄が非常に豊富な土地に関係している。もちろん武具を作る製鉄所も多い。
前代の
だが、現在はできるだけ平等に砂鉄が採掘できるように、党賀は近隣の地に住む豪族たちに領土を分け与えて、和解したそうだ。
上記の話を篤比古からひと通り聞くと、コノハは地図を書いた紙を受け取った。休憩時間に自室に戻ると、忘れないうちに部屋の壁に貼った。
(文字読めないし、ベンキョーも苦手やけど、大王家の一員になったのなら、ちゃんと覚えておかないとっ!)
それから一つ、コノハにとって嬉しい出来事が起きた。いつもの大部屋で夕食を済ませた後、コノハは彩女から結婚祝いの贈り物を渡されたのだ。
「ほんの気持ちだけど……。使ってくれると嬉しいわ」
「わっ、嬉しいですっ!! 本当にありがとうございますっ!」
コノハへの贈り物は、女性らしい色の美しい
普段なかなか身に付けない色の物であったが、コノハは非常に感激した。
白人は浴場に、彩女は
その時、出入り口の戸からカリカリ……と音が聞こえてきた。コノハは気になって、出入り口の戸に近づくと、「ニャーッ!」と猫の鳴き声がした。
コノハが出入り口の戸を開けようとした時、外側から誰かが戸を開けた。それは
「コイツが中に入るついでに、俺も入るぞ。ああ……、お前に話したいことがあるが、少しいいか?」
「はい。あっ……、座りませんか?」
建比古とコノハが部屋の出入り口付近に居る間に、シマは駆け足で白人たちの寝室の方に行った。
と……、コノハと一緒に建比古は食台の
コノハも建比古の表情の変化にすぐに気が付いたようだ。
「この結紐……、男から
建比古は食台の上に置いてあった結紐を凝視しながら、片手を角に乗せた。建比古が明らかに動揺しているのが、コノハにも分かった。
「……いえ、彩女さんから結婚祝いに頂いた物ですよ」
「何だ、彩女だったか。なら、良かった……」
建比古は食台の前に座ると、「ああぁ〜、うっとおしい……」と
コノハを見つめる建比古の左眼は、灰色に近い青系の不思議な色をしていた。
「ああ話とゆーのは、明日からは、俺と一緒に夕飯を食べてくれないか? これは指示ではなく、俺の希望だ。食膳は、俺の執務室まで女官が持ってくれる。夫婦だし、二人きりで話せる時間が欲しくてな。……いいか??」
お互いに知らないことも、まだまだ多い。新婚とはいえ、恋人のように建比古が自分と距離を縮めようとしてくれていることに、とても嬉しかった。
コノハは「はい……」と小さく返事をして、はにかみながら建比古の顔を見た。
「ありがとうな」
すると、建比古は座ったままコノハの片腕を
「た、建比古さまっ!! ちょ――」
「夫の俺よりも篤比古が、お前と一緒に居る時間が圧倒的に多いってのが、ホント
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