探しものは?
外がほんの少し
監視業務の後、
彼女は
薬畑山周辺の山道は人通りが
コノハは自室に向かう途中で、皇宮内を巡回警備している近衛兵たちとすれ違った。その度に、彼女は再び体全体が力み、きっちりと
皇宮の中央寄り、西側区画の端まで来た時、コノハは中庭に
篤比古と白人は左右だけではなく上下にも視線を向けて、必死で動き回っているようだ。二人とも懸命に、何かを探しているように見えた。
篤比古たちの様子が気になったコノハは、早歩きで、近くに居た篤比古の方に近寄った。
「……篤比古さま、どうされたのですか?」
「うん、『シマ』がなかなか見つからなくて――」
篤比古の返答を聞いて、コノハは彼が何を言ったのか全く分からなかったためか、キョトンとしていた。
「えっ……? あ、『シマ』とは……?」
「そうか、コノハさんには話していなかったねっ! ……シマは、
コノハが「そうなんですね」と言った時、呼吸が荒くなっていた白人が、コノハたちの方にやって来たようだ。
「シマは、どんな色……模様の、猫ですか?」
「ああ……。カギしっぽの、キジトラの
「ありがとうございます、白人さんっ。わたしも探してみますね!」
コノハは小走りしながら、中庭の木々を一本一本じっと見つめ始めた。そして、建物の屋根沿いにあった、太くて長い松の木の
すると、彼女は慣れているかのように、一気に松の木に登り始めた。
あっという間に、屋根の真横まで木を登りきると、ヒョイッと屋根の上に飛び乗った。
「……!! 気を付けてっ!」
「はーいっ」
白人の声かけに冷静に応じ、全く怖気付くこともなく、コノハは屋根の上をすたすたと歩いていく。西側を見回した後、中央区画の建物の方も確認してから、東側へ素早く向かった。
屋根の上を移動するコノハを見上げながら、篤比古も白人も彼女の姿を追っていく。
中央寄り、東区画の裏庭まで来た時、コノハは
焦げ茶色の毛に、黒っぽい
「篤比古さま、白人さんっ! シマらしき猫が居ましたよ〜……」
息を切らしそうになると、コノハは歩く速度を徐々に
「……シマ。篤比古さまたちが探してたよっ」
コノハがシマに声をかけると、シマは眠そうにショボショボさせていた目を開けて、背伸びをした後に
屋根に居たシマは、篤比古たちの方を見て「ニャオーンッ」と鳴いた。その後、恐る恐る木に乗ると、慎重に地面に下りていったようだ。
「……良かったですね、篤比古さま」
「うん。……ありがとう、コノハさんっ! 今日の夕飯前に、僕がシマのゴハンをあげる当番だったから」
コノハが「いえいえ〜」と笑顔で答えると、再び木に移り、一気に地面を目指そうとした。
……と、地面まであと少しという距離のところで、コノハは木の表面に足を強く
(山暮らしから離れていたからか、鈍っていたから、かなぁ……)
地面に降りた後、コノハは深く溜め息をしながら、片手で裾を上げて傷口を確認した。
「コノハさんっ、大丈夫?」
「あっ……はい、何とか。傷自体は大きくないし、血も少しだけしか出ていないみたい、ですね……」
篤比古と一緒に、コノハの方に駆け寄った後、白人もコノハに思わず声をかける。
「もし良かったら、一番近い救護室に案内しようか?」
「すぐに止血すると思うので、大丈夫そーかな……? あそこの井戸で、傷口を洗わせてもらいますね! ありがとうございますっ」
そうして篤比古たちと離れた後、コノハは急いで中庭の井戸に向かったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます