手強い来客!
さらに気温が上がり、小寒い日々が減ってきた時期……。皇国のあちらこちらで桜の花が咲き始めた頃、皇宮を訪ねて来た者が居た。
一方で、コノハは慣れない口紅をして、
正装に着替えた後、コノハは非常に緊張しながら、
来客は昼過ぎに、
彼は、初代天皇の時代から
「お久しぶりです、建比古様。この度は御結婚、誠におめでとうございます」
建比古たちに会いに来た男性は、
「本当にありがとうな。よく来てくれた、
「はい。皆々は変わらず健在で、警備や
……と、吉年が目を細くして嬉しそうに話していたのだが、突然真顔になったようだ。そして、コノハの方をちらりと見ると、低い声で淡々と話し始めた。
「しかし、
建比古の
コノハの
「それにっ、高名な豪族出身の娘たちを何十人も紹介して見合いを勧めたりしても、繰り返しお断りされたり、
「口を慎めっ、吉年!! 俺の
吉年の一方的な発言を聞いて、建比古は流石に腹を立てた。とてつもない険しい顔で建比古は怒鳴ったのだが、吉年は全く顔色を変えず、全く動じていないようだ。
その時、思いがけない人物が謁見の間に入ってきた。それは彩女だ。
「お父様っ――」
彩女は出入り口付近まで行くと、大きな声でそう言った。
すると、建比古とコノハは彩女に釘付けになり、吉年も驚いて思わず後ろを振り返った。
「あっ……あ、彩女っ!?」
慌てた様子になった吉年は、裏声が混ざった変な声を出した。
彩女はすたすたと早足で吉年の斜め前に行くと、吉年の顔を凝視しながら、珍しく強い口調で言葉を発した。
「建比古様と私の大切な部下を、それ以上悪く言うのはお止めください。……お父様であれ、どうしても許せません」
「彩女や……。この
「責められても当然のことですっ!!」
勢いよく吉年の言葉を
「党賀の皆々に『血筋に
「……それは、お前を泣かせたくなかったから……」
「それに、夫と部下の扱いが不平等です! 本当に悲しいです、今すでに泣きたい気持ちになっていますよ?
互いに想い合っていることの、何がおかしいのですか??
涙目になっていた愛娘に痛いことを突かれてしまい、恥ずかしさに耐えられなくなった吉年は額に片手を当てながら、大きな溜息をついた。その後、建比古に目を合わせると、ありったけ自分の感情を伝えたのだった。
「どうか、必ずっ幸せになってくださいよ、建比古様っ!! そーでなければ、儂の寿命が縮んでしまう……」
吉年はよろよろと出入り口に向かって歩き、出入り口の前まで来ると建比古たちに
謁見の間に吉年が居なくなると、彩女は建比古とコノハの
「建比古様、コノハ……。お父様がとんだ迷惑をおかけして、大変申し訳ありませんでした」
彩女はお腹の辺りで両手を組み、建比古とコノハに向かって深々と長くお辞儀をした。
「謝らないでくれ。むしろ俺たちが礼を言わないといけないな! ……助けてくれてありがとう、彩女」
「彩女さん、本当にありがとうございましたっ!」
建比古とコノハが彩女に感情の気持ちを伝えた時、彩女は笑顔になっていた。そして、彩女がコノハに優しい視線を向けると、そっと自分の両手でコノハの片手を包んだ。
「もう暗い気持ちになる必要なんて無いわ。コノハも絶対に幸せになれると、私は信じているから。子どもを授かることはできなかったけど、私だって幸せになれたんだからっ!
……無理は駄目だけど、これからもお仕事、一緒に頑張りましょうね」
「……はいっ!!」
彩女から母親のような温かい言葉をかけられて、自然とコノハも微笑んでいたようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます