概要
歌姫と呼ばれる少女が届ける歌は平和の象徴であり、その歌が聞こえる事で、国民たちは安心して過ごしている。
けれど、ある日歌姫は病によりその美しい歌声を発する事が出来なくなってしまう。
そうして彼女の代わりとして密やかに用意されたのは、七色の声を出す事が出来ると言われている有翼人の少年だった。
2023/10/08 タイトル(鳥籠→空中庭園)変更とそれに伴い加筆変更をしました。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!文章から見えた物、文章から聞こえた音。
本作のレビューを書くに至って、最初の拝読から約一年と半年近くを要した。
それでもレビュー文章を書きたいと思ったのは、そうして一年半近くも心に残っていたのは、やはり本作が自分の心に強い印象を与えた作品だったからなのだろう。
今回、改めてレビューを書こうと思い立ち、二度目の拝読をしたが、印象はより強く、深みを増している感覚が心地良かった。とかく実体の無いネット小説は一度の拝読で満足しがちだが、中編作品ならば、二度目、三度目と読み重ねる事も悪く無いだろうと思った。
最初の拝読でレビュー執筆に手を付けなかったのは、率直に言えば作者にとって、また読者にとって意味の無い、嬉しくない言葉を残し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!硝子細工の歌声は、あなたの心をふるわせる
ストレリチア妃の歌声は平和を象徴するものである。しかし、本当に歌っているのは彼女ではなく、不十分な翼しか持たない少年だった。何時しか二人は心を通わせる。
国民の平和と安寧のために代々受け継がれる姫の犠牲。それに抗うには、二人の力は余りにもか弱い。このまま運命に身を任せるしかないのか・・・。
七句さんの文章は繊細で、まるで硝子細工のようです。童話的な世界を見事に描きつつ、巧みな心理描写に引き込まれ、息をつくのも苦しくなるほど。だからこそ、登場人物達に感情を移してしまうのです。ままならない状況に、自分がそこに身を置いているように苦しくなる。だからこそ、ラストシーンでの二人の力強さに清々しいカ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あなただけに届く声で、知らぬ間に愛を歌っていた。
歌姫が奏でる平和の歌は国の象徴。姫が十歳になると塔の上から毎朝歌を歌う。それが伝統という鳥籠だった。
歌姫ストレチアはある秘密を抱えている。彼女の傍にはいつも影のように少年が控えている。飛べない翼を頭に生やしたアキレアと、同じく堅牢な鳥籠から飛び立てないストレチア。立場も種族も違う二人が奏でる愛の歌を国民が口ずさんだ時、きっと国の在り方は変わる。
塔に閉じ込められたお姫様。悲観的にも見えるけれど、ストレチアは人一倍気が強い。ただ、現状を打破する術を知らず、与えられた運命に身を委ねて音にならない歌を歌う。彼女には科せられた責務があるし、それを放り出して逃げるほど薄情でもなかった。そんなスト…続きを読む - ★★★ Excellent!!!交わす愛のうたは、鳥籠に響く余韻。想い合うふたりが奏でる物語――。
表向きは綺麗な歌声を奏でる歌姫。ただ、国を象徴する彼女の歌声には秘密があって……。
声の出ない歌姫ストレリチアと、その歌声を奏でる七色の声を出す有翼人のアキレア。
秘密を共にし塔に囚われるふたりの関係が美しく綺麗に描かれる物語です。
しかし、煌びやかな表向きだけでなく、国の習わしや互いの立場に翻弄され、物語は進みます。
狭い世界で描かれるふたりの関係には、秘密を共にして、互いを思いやるだけではない切なさも漂って……。ふたりの関係も、いつまでもそのままというわけにはいきません。
鳥籠から解き放たれるとき、出なければならなくなったとき、物語は大きく動くのでしょう。
歌声が聞こえてくるような緻…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この鳥籠、色鮮やか。人も、心も。
歌姫ストレリチアと有翼人の従者アキレアは、秘密を抱えた共犯者とも言える関係でありながら、お互いに他人には決して見せない地の部分を知っています。
王国の慣習や姫としての立場に縛られているヒロインは、生まれつき翼が小さくて空を飛べないアキレアをすら羨むほど、塔から出ることを許されない環境にいます。
塔と、閉じ込められたお姫様。
王道な設定でありながらも、緻密な風景描写や、心情表現、一筋縄でいかないであろう兄の存在などがこの物語に深みを与え、惹き込まれます。
特に、まるで絵本のような、色彩豊かな場面描写は、本当にお見事です。
ふたりは、鳥籠から羽ばたけるのでしょうか。必読です! - ★★★ Excellent!!!繊細で緻密な情景描写と自然と登場人物の詳細な様子を想像させる綺麗な文章
まだ始まったばかりの物語ということで、現段階で読ませていただいただけでも1話目ですぐにわかる緻密な情景の描写、ストレリチアがどんな環境で過ごしているのか、そしてもう一人の登場人物がどんな性格をしているのか。
それぞれのキャラクターの特徴が情景とともにさりげなく容姿や仕草を思い浮かべられるように散りばめられていて、鳥籠のような世界の中に確かなキャラクターの息遣いや動きを感じる美しい文章で描かれています。
キャラクターたちや物語の続きも気になりますが、ただ、目を通すだけでも「綺麗なものを見た」という読了感を与えてくれる作品です。