ストレリチア妃の歌声は平和を象徴するものである。しかし、本当に歌っているのは彼女ではなく、不十分な翼しか持たない少年だった。何時しか二人は心を通わせる。
国民の平和と安寧のために代々受け継がれる姫の犠牲。それに抗うには、二人の力は余りにもか弱い。このまま運命に身を任せるしかないのか・・・。
七句さんの文章は繊細で、まるで硝子細工のようです。童話的な世界を見事に描きつつ、巧みな心理描写に引き込まれ、息をつくのも苦しくなるほど。だからこそ、登場人物達に感情を移してしまうのです。ままならない状況に、自分がそこに身を置いているように苦しくなる。だからこそ、ラストシーンでの二人の力強さに清々しいカタルシスを感じるのです。
文章も素晴しいのですが、七句さんの描くイラストがまた可愛い!是日Twitterをフォローして七句ワールドを感じてください!
歌姫が奏でる平和の歌は国の象徴。姫が十歳になると塔の上から毎朝歌を歌う。それが伝統という鳥籠だった。
歌姫ストレチアはある秘密を抱えている。彼女の傍にはいつも影のように少年が控えている。飛べない翼を頭に生やしたアキレアと、同じく堅牢な鳥籠から飛び立てないストレチア。立場も種族も違う二人が奏でる愛の歌を国民が口ずさんだ時、きっと国の在り方は変わる。
塔に閉じ込められたお姫様。悲観的にも見えるけれど、ストレチアは人一倍気が強い。ただ、現状を打破する術を知らず、与えられた運命に身を委ねて音にならない歌を歌う。彼女には科せられた責務があるし、それを放り出して逃げるほど薄情でもなかった。そんなストレチアを飛び立たせたいと思っているのはアキレアだけではない。曲者の兄や頭でっかちな両親など、登場人物の心象描写は鮮やかで瑞々しい。作中には描かれなくとも、キャラクターたちはその物語の中で経験と時を重ねて息づいている。匂いや温度さえも感じられるような表現力は見事としか言いようがありません。
だらだらと情報が続くだけの地の文は退屈かもしれない。でもこの作品に無駄な部分はありません。カーテンの擦れる音、チョーカーの色、お菓子の匂い。全部、キャラクターたちが息をすることに繋がっている。
4万字弱で世界観にどっぷり浸ることができる希少な作品だと思います。文字だけでで歌や色を感じられる体験を、ぜひ味わってみてください。
表向きは綺麗な歌声を奏でる歌姫。ただ、国を象徴する彼女の歌声には秘密があって……。
声の出ない歌姫ストレリチアと、その歌声を奏でる七色の声を出す有翼人のアキレア。
秘密を共にし塔に囚われるふたりの関係が美しく綺麗に描かれる物語です。
しかし、煌びやかな表向きだけでなく、国の習わしや互いの立場に翻弄され、物語は進みます。
狭い世界で描かれるふたりの関係には、秘密を共にして、互いを思いやるだけではない切なさも漂って……。ふたりの関係も、いつまでもそのままというわけにはいきません。
鳥籠から解き放たれるとき、出なければならなくなったとき、物語は大きく動くのでしょう。
歌声が聞こえてくるような緻密で繊細な描写に、引き込まれる色鮮やかに描かれた世界観。
細かく丁寧に心情も描かれているため、ふたりの指先の動きまで思い起こさせられるような気持ちで読み進めることができます。
綺麗で、甘くもほろ苦い物語。ストレリチアは鳥籠から飛び立つことはできるのか。
ぜひ、ふたりの結末を見届けて、その歌声に耳を澄ましてみてください。
歌姫ストレリチアと有翼人の従者アキレアは、秘密を抱えた共犯者とも言える関係でありながら、お互いに他人には決して見せない地の部分を知っています。
王国の慣習や姫としての立場に縛られているヒロインは、生まれつき翼が小さくて空を飛べないアキレアをすら羨むほど、塔から出ることを許されない環境にいます。
塔と、閉じ込められたお姫様。
王道な設定でありながらも、緻密な風景描写や、心情表現、一筋縄でいかないであろう兄の存在などがこの物語に深みを与え、惹き込まれます。
特に、まるで絵本のような、色彩豊かな場面描写は、本当にお見事です。
ふたりは、鳥籠から羽ばたけるのでしょうか。必読です!
まだ始まったばかりの物語ということで、現段階で読ませていただいただけでも1話目ですぐにわかる緻密な情景の描写、ストレリチアがどんな環境で過ごしているのか、そしてもう一人の登場人物がどんな性格をしているのか。
それぞれのキャラクターの特徴が情景とともにさりげなく容姿や仕草を思い浮かべられるように散りばめられていて、鳥籠のような世界の中に確かなキャラクターの息遣いや動きを感じる美しい文章で描かれています。
キャラクターたちや物語の続きも気になりますが、ただ、目を通すだけでも「綺麗なものを見た」という読了感を与えてくれる作品です。