第10話 森の大賢者の砦
正午からかなりの時間過ぎて、森の賢者の砦に向かって出発した。地図の説明では、大人の足で急いで2時間程度。私たちも頑張って歩いた。歩きながらクロエと森の賢者や導師アンディーの話をした。
森の賢者が薬草と血液、ボアの魔石を使って最上級品体力回復ポーションを精錬する話。アンディーが王女様の魔力暴走を治療する話。それぞれが好きな話と自分のスキルの未熟さについて話し、確認した。
物語の話をしながら歩いた時間はあっと言う間で、本当に短時間で森の賢者の砦についた様な感じだった。森の賢者の砦のすぐ側、門の前に7.5m四方の深さ1mの穴を掘ってもらい、その穴にすっぽりはめる様にコテージをセットした。
女の子二人でコテージを組み立てるのは大変だった。クロエは身体強化を持っているから軽々と壁を立てたり、屋根を持ち上げたりするけど、身体強化がない私は、クロエの手伝いで壁を支えたり屋根を持ち上げる時に支えの柱を差し込んだりしただけなんだけどヘトヘトになった。
出来上がったコテージの中に入って、魔石に魔力を充填した。魔力がスカスカになることはなかったけど、かなり減ってしまった。半分以上使ったかも…、私ひとりで充填しないでクロエにも頼めばよかった。
魔石をセットすると、代わる代わるコテージの外に出て魔道具の効果を確認した。本当に何処にあるか分からなかった。城壁の壁になじんで、壁のでっぱりのように見えてしまう。凄い認識阻害効果だ。しかも、そのでっぱりを不自然に感じない。
かさばるから、かなり大きなアイテムボックスかストレージ持ちじゃないと邪魔になるけど…。女の子だけのパーティーには、必須アイテムだと思った。
コテージの中で夕食を作った。ベッド代わりになる物は、購入していないし、作ることもできないので、床に雑魚寝した。この辺りは、魔物が出てくることも少ないから、夜警当番は、無くても良いだろうと、二人寝た。
次の朝早く、コテージを収納した。
(解体しない。そのまま収納した。これで、穴をあけるだけでセットできる。)
コテージをセットしていた穴は、クロエが、埋めてきれいに均している。穴があったことが分からないくらいだ。流石、魔術工兵。
砦の門の前に立っている。早朝のこの時間には、警備の人もいない。観光に来る人たちは、朝早くフォレストメロウの町を出てくるから、警備の人はその人たちが到着する少し前に配置に着く。門の扉は締まっていて、鍵も締まっている。
「砦に入ってみたいの?」
クロエが聞いてきた。
「私は、入ってみたい。クロエはどう?」
「あなたに合わせるわ。じゃあ、入りましょう。」
「でも、鍵がかかっているわ。これを、壊すと後で大騒ぎにならない?」
「ちょっと待って。」
クロエは、錠前に手をかざすと、
「クリエート」
扉の錠前かぎが、クロエの手の中に現れた。鍵はかかっていない。
「何したの?」
「かかっている錠前鍵を材料にして、同じものを作ったの。鍵を開いた状態でね。早く中に入って、中から鍵を掛けないといけないわ。外に出る時は…、その時に考えましょう。」
「分かった。これで、警備の人が来ても大騒ぎになることはないはずよね。観光客が中に侵入するようなことがなければだけど。」
私が言うと。
「そうね。これで、私たちが立ち入り禁止の砦に侵入したことは、しばらくはばれないでしょうね。でも、これで、私たちに何か起こったとしても助けに来てくれる人もいないということ。気を引き締めて行くわよ。」
クロエに念を押され、少し浮かれ気分だった私も気を引き締めた。侵入者には容赦ない砦という噂の賢者の砦の中に入ったのだ。
「変な動きしないように。私たちは、礼儀正しい訪問者よ。」
今度は、私がクロエに念を押した。早朝の訪問者なのだ。泥棒でも強盗でもない。この村?に害をなそうなんて微塵も思っていない客として砦に来たのだ。自分自身にも言い聞かせて各家を回った。
『トントントン』
「今日は~。誰かいらっしゃいますか?」
鍵がかかっている家に無理に押し入ろうとしない。ノックをしてノブを回し、ドアが開いたら中に入ってみた。
普通のお家だ。ここは、雑貨屋か何かだったのだろうか。陳列棚が並んでいる。品物は何もなかった。荒らされた様子もなく、塵一つない。きれいだ。
「何か、変ね。塵どころか、埃が積もってもいないなんて。誰か空気の入れ替えをしているのかしら。埃っぽくも黴臭くもないわ。」
クロエも同じように思ったらしい。人っ子一人いないのに、壊れた建物はなく、きれいなままだ。警備の人が中の掃除をしているなんてことはない。立ち入り禁止なのだから。
6軒目のドアをノックした。あの後、鍵がかかっていなかったのは、道具屋っぽい家と食料品のお店っぽい家の2軒だけだった。
『トントントン』
「今日は~。」
「少々お待ちください。今、鍵をお開けします。」
男の人の声がした。若い男の声。クロエと顔を見合わせ、少し後ずさりしてしまった。
(ダメダメ…。私たちは、礼儀正しい訪問者。落ち着きなさい。私!)
少し、ビビりながらも、ドアへ近づく。半歩だけ。一歩下がって半歩前。
ドアが開き、中から私たちより少しだけ身長が高いゴーレムが現れた。
「お帰りなさいませ。マスター、アンディー様」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます