第13話 ボア狩リ

 砦の地下ゴーレム守備隊の待機場に連れてこられている。ここにいるゴーレムは、白兵戦特化のゴーレム50体だ。


 金属ボディで、土属性魔法を使うことができる。ゴーレムは魔術回路を持っていないので使うことができるのは魔法だ。魔力を変換させて様々な物理現象を引き起こすのは同じなのだが、その成り立ちが違う。


 ゴーレム守備隊のゴーレムを1体収納させてもらい精錬した。これで、材料さえあれば、ゴーレムを作ることができる。


 次に、ドローン。同じく収納して精錬。砦には、ドローンは一台しかなかったが、素材は一台分以上残っていた。ダイアリーによるとドローンに必要なゴーレムコアは2つ。ダンジョンでゴーレムコアを2個手に入れれば、ドローンを精錬することができる。


 もしも、急に私たちに連絡を取らないといけないときの為に、基本的にドローンは砦に置いておく。しかし、私たちが出かける時には一緒について来て私たちがいる場所を確認しておかないといけない。早く、素材とコアを集めて台数を増やさないといけない。


 私たちは次は、ダンジョンに向かう予定だ。ゴーレムバイクとマウンテンバイクをプレゼントしてもらったから、ゴブリンタウンまでは1時間もかからないだろう。


 でも、立ち入り禁止状態だから正面入り口から出入りするわけにはいかない。こっそり出入りできる通路を開いてもらった。


 秘密の通路からでてしばらく歩いた。人目がないことを確認してゴーレムバイクを出した。クロエも昨日貰ったアイテムバッグの中からマウンテンバイクを出していた。


 「ゴーレムバイク、ゴブリンタウンまで安全運転最速でお願い。」


 私が前、クロエが後ろで出発した。ゴーレムバイクが風よけになってクロエは楽そうだ。鼻歌交じりかと言うくらい余裕があった。


 途中、河原で石を収納したり、川の水を収納したり、森の中の枯れ枝を収納したりしながら、30分くらいでゴブリンタウンの入り口に着いた。


 タウンの中を通ってダンジョンに入る作りになっている。そこで入場者の確認がされる。


 念のためにダンジョン入り口まで歩く間に、ロックバレットを50個、ウォーターボールを50個、ファイヤーボールを50個精錬した。備えあれば憂いなし、嬉しいなだ。


 1階層はゴブリン階層だ。進化型のゴブリンが時々現れたけどクロエのロックバレットで一瞬で屠っていった。


 クロエたちは、初級から中級に上がろうとしていたパーティーでメンバーの中でもクロエが抜きんでていたらしい。


 一人だったらCランク以上の腕前だったようだ。その上、フルプレートの防具を着ている。死角はない。


 私は、ロックリザードの皮鎧だ。魔力を纏えば、鉄の鎧よりも固くなる。中々の防御力のはずだ。


 だから、前に出てゴブリンくらい楽勝で屠ることができるはずなんだけど怖くてなかなか前に出ることができない。そのうち慣れると思う。


 ダイアリーに書いてあったサーチを試してみた。アイテムボックス内の検索を外に広げるイメージだ。


 「サーチ・階層入り口」


 見つけた、右、そして左、左、真ん中だ。


 「階層入り口を見つけたわ。信じてみる?」


 「勿論、パーティーなのだからお互いの力を信じないと生きていけない。」


 「右、左、左、真ん中よ。」


 「了解。私のバイクの後ろに乗って。ここに必要な素材はない。」


 「右よ。」


 「ここは、左。」


 「ここも左。」


 「真ん中よ。…、そこ、そこが次階層の入り口よ。」


 私たちは、ダンジョンの魔物を置き去りにして次の階層に入って行った。」


 「次は、森の階層なのね。」


 「ここでは、ボアの素材が手に入るかもしれない。」


 「じゃあ、ボアをサーチで探してみる。」

 「サーチ・ボア」


 「あそこ、あの茂みの中に1体いるわ。」


 「了解。」


 そう言うと、私を後ろに乗せたまま、茂みの左側に大きく迂回したかと思うと、大剣を右手に持ち、茂みの方に向きを変える。


 大剣で茂みの方を指し示し

 「ロックバレット」

 ボアへの初撃だ。


 茂みからボアが飛び出して来た。ロックバレットはあまり効いていないようだ。


 ぶつかる直前、突進して来るボアの進路から左に避けたかと思うと、すれ違いざまにボアの首が落ちていた。


 「クロエ!私、何もしてないんですけど。」


 「ボアを見つけたじゃない。連携大事。」


 ボアは、魔石と肉を残してダンジョンに吸い込まれていった。


 「後2〜3頭狩りましょう。」


 「サーチ・ボア」


 「一番近いのは右だけど、連なって居るのは前ね。でも、群れじゃないわ。」


 「群れじゃないのなら前だな。」


 クロエは、言うと同時に走り出した。落ちそうになって

 「キャーっ。」


 「狩りの最中に大きな声を出さない!」


 小さな声で怒られた。なんか酷い。


 気分を変えよう。


 「クロエ、今度の初撃、私にやらせて。」


 「了解。任せた。合図は、私が出す。」


 「了解。」


 「右前方にボアを見つけた。」


 「あっ、私も見つけた。」


 「このままボアを右手に見る角度で会敵する。初撃準備して。」


 「アルケミー・ロックバレット(大きな石で)準備完了。アイテムボックス・オープン」


 「3、2、1、打て」

 「ロックバレット・ロックバレット・ロックバレット」


 「やめて。やめなさい!」


 ボアはボロボロになっていた。すぐに魔石と肉を残してダンジョンに吸い込まれていった。肉がミンチになってなくて良かった。


 「ルナ、加減ってものがあるでしょ。」


 「いや〜、ちょっとだけ、怖くて…。次はきちんと加減します。一回で一度やめてきちんと様子見ます。約束するから、初撃やらせてー。」


 「もう、しょうがないわね。約束したわよ。加減、忘れないように。」


 「前方右より。」


 「初撃準備。3、2、1、打て」

 「ロックバレット。」


 弱ったボアの首をすれ違いざまに落とす。


 「うまくいったね。」


 今度のドロップアイテムは魔石と皮だった。


 連携がうまくいくようになって、あっという間に20頭分の魔石を手に入れた。


 「そろそろ、次の階層に行こうか。」


 「うん。じゃあ、階層入り口探すね。」


 「サーチ・階層入り口」


 「割と近い。あっち。右前方1.7km。」


 「出発よ。しっかり捕まっててよ。」

 「うわー。」


 「もう、言い終わって出発してよー。」



 

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