第17話 住民契約

 私は、ゴーレムバイクを一台精錬した。コアに、魔術を充填しながらバイクに私たちの後をついてくることと後をついてくることができないような非常時にはエラの指示に従うようにお願いした。


 「エラ、このゴーレムバイクにジャスと一緒に乗って私のゴーレムバイクを追いかけてきなさい。ハンドルに捕まっているだけで良いわ。もしも、私についてくることができないことが起きたら、バイクにお願いしなさい。あなたが考えてよ。いい、あなたが考えるのよ。そんなことにならないようにする。だから、もしもの時の話。何もなければ、ゴーレムバイクに任せておくのよ。」


 「分かった。任せて。ルナ姉の後をついて行く。何があってもジャスと一緒について行くから大丈夫。」


 「クロエ、殿は任せたわよ。」


 「大丈夫だ。安心して先頭を走れ。お前の兄弟は私が守る。」


 10分後には、砦に着いていた。門の前には誰もいない。クロエに鍵を開けてもらい、中に入った。勿論、後で鍵は閉めた。一度やったから楽勝だ。クロエが…、だけど。


「いらっしゃいませ。」


 バトラㇺが私たちを迎えてくれた。


 「ただいま。これは、私の妹弟なんだ。この砦の住人として迎え入れてくれるかい?」


 「ご家族なのですね。では、契約をしていただけますか。ルナ様とクロエ様と同様にこの砦のマスターとして過ごして頂けるという契約を…。宜しいでしょうか。」


 「私は、良いと思うぞ。この砦で共に暮らすのだから。…、私たちはともかく、この子たちがこの砦を出ていくことはできるのか?バトラム。」


 「第一マスター契約のルナ様以外は、契約を解除することは可能でございます。そして、第一マスターと変わることができるのは、第二マスターのクロエ様だけでございます。」


 バトラムの言葉に私は引っかかったよ。初めに名前を書いたのと二番目に書いたのってかなり差があるんだけど…。もう一度じゃんけんした時、これを知ったクロエははじめと変わってくれるかな…。


 「それって誰が決めた?誰が定めた契約なのだ?」

 クロエが尋ねた。


 「王族とこの砦でございます。この砦のマスターの責務であり、この砦の在り方を決めた王族の責務でございます。それは、強大な魔力で縛られています。私共もその責務に縛られてまいりました。」


 バトラムから信じられない言葉が聞こえた。王族…。知らずに王族と契約をしたの?嘘でしょう。不敬よ。不敬。不敬で処刑されてもしょうがないことよ。


 「不敬を心配なされているのではないですか?なれば、心配無用です。王族とは、この砦の管理者に不敬を問わないという魔術契約もなされています。」


 「分かったわ。グダグダ言ってもしょうがない。エラ、ジャス、リアン、契約するのよ。いらっしゃい。」


 3人は、契約書に署名し、契約は終了した。


 「バトラム、明日の朝、シスター・ブランシュが目覚める前にフォレストメロウの教会に行って、神父様とシスターたちを連れて来たいの。その時、教会の工房から調剤道具を収納して来たいのだけど、この砦を何時くらいに出ればいいか教えてくれない。」


 「時刻で申しますと、夜中3時でございます。暗闇の中を走ることになりますから光属性の魔力を持つゴーレムをお連れ下さい。3体です。お戻りになるときも暗闇の中を走ることがあるやもございます。」


 「分かった。では、朝の3時に起こしてくれ。」


 「クロエ様もですよね。」

 バトラムが聞いてきた。


 「勿論だ。」

 クロエが答えた。


 浅い眠り…。


 「時間です。」


 私は、バトラムに起こされた。クロエも起こされているようだ。私たちは、門から外に出た。鍵は閉まっていたけど関係なかった。不思議だ。


 10分後にはフォレストメロウに着いた。門は閉まっていたけど入ることはできた。入った後は、ちゃんと閉めてもらった、クロエに。当然だ。教会に向かった。


 教会の入り口に着くと扉が薄くあいているのが分かった。静かに中に入った。神父様の部屋の方に歩いて行った。神父様の部屋に行ってノブを回した。空いた。先夫様は起きていて出かける準備は終っていた。二人で工房に向行き、調剤の道具をほとんど収納した。神父様の物以外は、収納しなかったよ…、一度しか。精錬コピーして返した。その一度だけだ。盗んでいない。


 工房の道具を収納したらシスター二人を起こしに行った。二人とも起きていて荷物をまとめていた。泣く泣く残そうとしていた荷物も全部収納してあげた。ベッドと枕も。これって泥棒?やっぱりやめてコピーした。砦に戻って同じものを作ってあげる。約束した。喜んでいた。


 朝、夜は空けていない。もちろんシスターブランシュは目を覚ましていない。私たちは、教会を出て町の門の外に出た。鍵は、勿論きちんと閉めた。


 神父様の後ろには誰も乗りたがらないということはなかった。シスター二人とも神父様の後ろが良いと言ったが、シスター・ケイトには、私の後ろに乗ってもらった。シスターケイトがじゃんけんに負けたからだ。暗闇の中、光属性魔術を持つゴーレムたちが足元を照らしながら走ってくれた。夜明け前に砦についた3人は私たちの家に招待されていた。


 「いらっしゃいませ。」


 おしゃべりをするゴーレムに皆さん驚いている。口を開けたまま唖然としている。


 「森の大賢者の砦にようこそ。」


 私が皆さんに挨拶した。


 「この砦で安全に過ごしていただくため、この砦との契約をお願いしたいのですが宜しいでしょうか。あっ、誤解なさらないように説明しておきますが、皆様には、この砦の教会でお働き頂きたいと願っております。そのことを踏まえてお考え下さい。バトラム、契約内容をご説明して。」


 「はい。マスター・ルナ。」


 「では、ご説明させていただきます。契約内容は単純でございます。『ここを所持し、管理し、守護する。』そして、この契約は、永久に王家によって保障される。王家は、砦を害しない。以上でございます。」


 「ちょっと待て、これは、王家も縛る契約なのか。私たちが契約することで王家さえ縛るのか?それは、不敬に当たらぬのか?」


 「それも説明してくれ。バトラム。」


 不敬に当たらないという王家との契約を契約書を示しながら説明してもらい、教会の皆さんとの契約に至った。


 今日から、砦の住民は、8名とゴーレムたちになった。


 

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