第18話 ゴーレム蜂の実験

 「クロエ、ゴーレムコアでハエを作ったらフォレストメロウの教会の中の様子をのぞき見することができないかな?」


 「ルナが作ったら?私が作っても飛ぶことができるかどうか分からない。それ以上にハエを作ることが嫌。」


 「じゃあ、ビーにしましょう。フラワービーなら可愛いでしょう。バトラムに捕まえて来てもらいましょう。」


 「フラワービーか…。それなら作ってみても良い。しかし、私が作ったゴーレムが仮に動いたとしても、見たことや聞いたことをどうやって知らせるだ?」


 「バトラムに聞いてみましょう。バトラムはおしゃべりしないメイドゴーレムとも十分にコミュニケーションが取れているからね。報告も聞いてるみたいだし。」


 「そうか。そうだな。バトラムなら小さなゴーレムの報告を受け取ることができるかもしれない。私もフォレストメロウの教会の中の様子は気になるからな。フラワービーなら我慢できる。」


 直ぐに、バトラムを呼んで小さなゴーレムでも、情報をやり取りできるか確認した。ゴーレム同志なら、互いに同じ魔力で満たされてるか魔力登録されていれば情報のやり取りができるそうだ。同じコアから作られたものならかなりの距離離れていても情報がやり取りできるかもしれないということだが、そのような使い方をしたことがないから試してみないと分からないと言っていた。


 フラワービーを捕らえてくるようにお願いしたら、何十匹ものフラワービーを捕まえて来てくれた。生きてるビーは、収納もトレースもできないので逃がしてもらった。


 ビーをコピーしようとしたけど、素材に分解されるだけだった。

(やっぱり、生き物は無理だわね。)


 まず、ゴーレムコア2つを合成してみる。

 「シンセシス・ゴーレムコア」


 次は、フラワービーくらいの大きさに切り分ける。

 「セグメンテーション・ゴーレムコア」


 小さなゴーレムコアブロックをクロエに渡した。

 「クリエート・フラワービー」


 隣にフラワービーを置いてトレースにながらビーの形にしている。とても精巧なゴーレムビーができた。次は、私の仕事だ。それぞれのパーツの動きをイメージして魔力を込めていく。飛び回るビーの動きをイメージし、コアに刻み込んでいく。動け、飛べ。残ったコアにも魔力を充填する。コアに魔力が満たされ一度、輝いた。


 「ゴーレムビー、隣の部屋に行って中の様子を見て来て。誰かいたら教えて頂戴。」


 ゴーレムビーは、部屋を出て行って、隣の部屋に飛んで行った。成功だ。


 「バトラム、ビーから情報送って来てる?」


 「ちょっと待ってくださいね。」


 バトラムは、ゴーレムビーの残りのゴーレムコアに手を当てた。


 「この位の距離ならリアルタイム映像が確認できますね。」


 「音は、どう?」


 「なにも音がありません。人もいないのではないでしょうか。」


 「ちょっと待て。私が隣に行ってくる。」


 クロエが走って隣の部屋に行った。


 「クロエ様が部屋に入っておいでです。」


 「「ルナ、こっちに来て。」と仰っています。」


 「分かった。行ってくる。」


 クロエと交代だ。


 「窓に止まらせてみて。」


 フラワービーは、窓の方に飛んで行って止まった。


 (うまくいった。)


 バタバタとクロエが走って来た。


 「お間抜けルナ!あなたがここで命令しているんだから動くの当たり前でしょう!」


 「あっ…、そうだね。」

 てへぺろ…(恥ずかしい。)


 クロエと一緒に部屋に戻った。ビーに聞こえない場所で実験の打ち合わせをするためだ。


 「まず、ここから行動指示ができるかの実験、そして、自立行動がどの程度できるかね。隣の部屋だと声で動いたのかどうか分からないからもう少し距離をとりましょう。クロエ、家を出て門の反対側、門から死角になるところに行ってちょうだい。そして、大きな動きが出来そうな場所に着いたら手を振ってサインを送って、3カウント後にビーを捕獲しようとしてみて。自立行動の実験よ。それが終わったらいったん戻って来て。」


 「了解。一度、ビーを迎えに行くのか。」


 「そうね。部屋の前に待っていて。この部屋からクロエについて行くように指示を出すから。」


 「では、行ってくる。」


 まだ、夜が明けて3時間ほどしか経っていない。門番が来るまで後1時間位はあるだろうが、まだ、見つかるわけにはいかない。ここは、立ち入り禁止の場所、秘密厳守だ。


 「バトラム、ビーにクロエを追っていくように指示して。」


 「はい。」


 バトラムは、音声指示を行う訳ではない。ビーを作ったコアに手を触れるだけだ。


 「クロエ様の後方上2m程の高度で追跡しています。リアルタイム映像を受け取ることができています。」


 「クロエが手を振ったら、3秒後クロエから逃走するように指示して、捕まえようとするから。」


 「はい。」


 「手が降られました。クロエ様から逃走するように指示します。」


 「上空に逃れました。」


 「そりゃあそうよね。でも、それじゃあ自立行動の正確さが確認できないわ。じゃあ、クロエから1m以上離れないで、観察しながら逃げるように伝えてみて。」


 「はい。ビーが近づきました。クロエ様が捕まえようとしますが、まだ、捕まっていません。」


 「クロエ様が怒ってます。からかわれていると思われているようです。」


 「じゃあ、ビーをここに戻して、クロエも追いかけてくると思うから。」


 「入り口が閉まっていたら家に入ることができませんよ。」


 「メイドゴーレムにドアを開けておくように指示を出して。」


 「メイドゴーレムは大急ぎでドアを開けに行った。そうしないとビーは、ドアに穴を空けてしまう。」


 ゴーレムビーは、2分程で戻って来た。その後ろからクロエが走って戻ってきた。


 「実験成功ね。ただ、蜂の模様だったら目立つから色を黒にしてもらいましょう。隠密行動なのですから。」


 「次は、距離の問題ね。この砦ないくらいなら全然問題ないようだけどフォレストメロウとここだと少し心配ね。これも試してみないといけないことだけど…。バトラムは、外に出ることはできないし…。どうしたら良いでしょう。」


 「ルナ様、受信用のゴーレムコアは、これまで大きくなくても大丈夫ですから、この十分の一の大きさにして、残りを分割して中継装置としてフォレストメロウと峠の間においてはどうでしょうか?」


 「メイドゴーレム、ビーに黒のお化粧をお願い。」


 ビーがお化粧してもらっている間に私は、受信用ゴーレムコアを十等分してみた。これをフォレストメロウまでの間にほぼ等間隔で設置する今回は、受信テストをする暇がないから一番成功の可能性が高い分割率でやってみる。


 かなり大きくなるから見つからないように置くのが大変かもしれない。フォレストメロウの中に入って教会の側でゴーレムビーを話してくるのは、一番顔がなじみのないクロエが良い。商人服で行けば、まずばれないだろう。


 十等分した、中継器には、全て魔力を充填した。クロエのアイテムバッグに中継器と黒いビーを入れて秘密の通路から砦を出た。秘密の通路の近くに木に身体強化したクロエが登って中継器を固定した。私がゴーレムバイクを運転して後ろにクロエが乗っている。道から少し外れたところを通る。なるべく等分になるように後7個の中継器をセットしながらフォレストメロウの町に向かった。


 フォレストメロウの町の城壁近くにある木に9個目の中継器を取り付けた。後は、町の中、教会の側において、ビーを放てば良い。昼前だが、用心のために商人服のクロエに町に入ってもらった。私は、一足先に砦に戻る。クロエは、アイテムバッグの中にマウンテンバイクを入れているから大丈夫だ。


 私が砦の私たちの部屋についてしばらくしてクロエが帰って来た。バトラムにビーの情報を実況してもらう。フォレストメロウの町までの距離でもリアルタイム映像が送られて来たそうだ。さあ、色々教えてもらおう。


 


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