第9話 冒険準備
調剤ギルドでポーションを販売し、資金ができた私たちがしないといけないこと、装備をそろえること。今のままでは、冒険に出て直ぐ死んでしまう可能性がある。
運が悪ければだけど、運なんて、いつも気まぐれで、あっと言う間にそっぽを向かれてしまうものだということは、私の両親を見ていたら分かる。
私は、つい先月まで、両親が、反逆罪で処刑されてしまうなんて思ってもいなかった。両親は、いつも正しく、優しく、間違ったことなどしない人だと思っていた。
冒険者は、危険と隣り合わせの仕事だ。その危険は、死だ。いつ死んでもおかしくない仕事なのだ。だから、私たちは、その危険から遠ざかりたい。死が近づいてきたら、そいつを置いてきぼりにして逃げ出すくらいの防御力が欲しい。その為の防具とその危険を振り払うくらいの武器を持っていたい。
私は、クロエと防具屋に行くことにした。防具屋までに歩く途中、私が返事を戸惑ったことについて話した。
「クロエ、どうしてあなたが買ったポーションで作った上級ポーションを売ってできたお金をパーティーのカードに入れたの?それってパーティー資金にしたってことでしょう?」
「材料は、わたしが買ったポーションだったかもしれないけど、上級ポーションにしたのは、あなたでしょう。だからよ。」
「それなら、半々にして二人の分にしても良かったのでしょう。なのに…。パーティーのカードに入れて、私に持たせるなんて、私を信用しすぎでしょう。」
「パーティーのカードなら私が死んでもあなたがあなたの家族の為に使うことができるし、もし、あなたが死んでも私は、あなたのアイテムボックスから飛び出した私たちのカードをあなたの家族に届けることができる。もう、嫌なの私だけが残って、死んでいったパーティーメンバーの為になることが何もできないなんて。だから、私が死んだら、このパーティー名義のカードに入った資金は、あなたの家族の為に使って、もし、私が残ったら私が、あなたの家族に届けるから。」
硬い決意だった。それは、深い後悔だったのかもしれない。私には、どんな手助けもできない。冒険者ギルドのギルマスが言ったように、クロエに幸せになってもらうことでしか覆すことができない決意だ。
「クロエ、あなたの気持ち分かった。でも、私たちは死なない。決して負けない。私たちは、アンデフィーデッド・モーニングスターズなのよ。どんなに絶望の中にあっても、一番苦しくて真っ暗な中にいても、夜が明ける前の暗闇の中、一番に輝き始める。モーニングスターズなの。そうなるためにできることをする。」
私たちが次に向かったのは、武器屋。クロエの獲物は、大剣。金貨20枚の軽くて切れ味が良い大剣を装備として選んだ。私は、片手剣だ。私は、後衛になるはず。でも、近接戦もある。幼いころから剣の稽古はしてきた。ないよりはましと言うくらいの武器だ。私の武器は、金貨3枚。一般的には良い武器だ。
次は、防具屋。クロエは、フルプレート。しかも軽いものを選んだ。できれば、ミスリルの鎧が良かったのだけど、無かったし、あっても買えなかったと思う。私は、ロックリザードの皮鎧。魔力を流せばその瞬間石よりも固くなる皮鎧だ。金貨15枚もした。
防具屋でいくつか魔道具も手に入れた。防具屋は、道具屋も兼ねていたのだ。まず、ランタン。そして魔術コンロ。これで、金貨5枚。クロエ用の皮鎧も購入した。いつもフルプレートでは、大袈裟すぎる。
クロエは、防具と武器に金貨60枚を使って、手元の金貨は3枚になった。私は、残りが金貨24枚。これで少しだけ防御に余裕ができた。
防具と武器をそろえた頃には、正午を過ぎていた。野営をするならその道具と食料を揃えないといけない。
クロエと二人で道具屋に行ってみた。野営用の設備を探してみたけど、女の子二人で野営すると考えると安心できる道具なんてなかなか見つからない。隅から隅まで探していたら、古ぼけたコテージが飾ってあった。
「これ、何ですか?どうして、ここに置いてあるんですか?」
「ん?これか?聞いて驚け!これは、森の賢者が使っていたコテージだ。壊れているけどな。」
「そのコテージ、売ってくれますか?もし、もしですよ。その、コテージ作れるようになったら、必ずお返ししますから。信じて売ってくれると嬉しいです。」
私は誠心誠意、分かることのすべてを伝えて売ってくれるかどうかを尋ねた。
「壊れた、このコテージを買ってくれるのか。でも、先代の申し送り、遺言で、金貨5枚以下で売ることはまかりならんと伝えられているのだ。売らなければに潰れるようなことになったら、その時は、廃業しろと。それ程大切にしろと。」
「ということは、金貨5枚なら売ってくれるのですか?」
「もちろん。こんな壊れたコテージを買っていただけるのであればな。」
「ちょっと待ってくださいね。仲間と相談しますから。」
私たちは、道具屋の親方の側を離れて、相談した。
「クロエ、あのコテージ、森の賢者の物語に出てきたの。私なら修理することができると思う。だから…、買っていい?」
「修理できるなら買うのは良いんだけど、あのコテージって魔石に魔力を充填しないといけないんじゃなかった?なら、魔石がなかったら使えないし、私たちであのコテージの使用に耐える魔石なんて手に入れることできそうにないわよ。」
「じゃあ、魔石込みの値段にしてもらおう。金貨5枚なのだから、つけてくれるはずよ。」
私たちは、再度道具屋のおやじさんの所に近づいていった。
「親父さん。私たちにこのコテージ、魔石込みで金貨5枚で販売してもらえますか。」
「よし、売った!」
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