第6章 蒼の風、偽物騒動記

「は?偽物・・・すか?」セツナは素っ頓狂な声を上げる。


「そうや、俺らの名前語って村を警護する代わりに金銀を払わせとるらしい」


サルトビはやれやれという感じで言葉を吐き捨てた。


「誤報騒ぎの次は偽物とは・・・たくっ、こんな事してる暇はないのに」


「うんで、調査隊のメンバーがそいつらがいる村を突き止めたらしい。ちゅー訳でとっとと奴らが駐屯してる村に行ってさくっととっ捕まえてくるで!」


「そーすね、ちゃちゃっとすませましょう!面倒くさい」




サルトビとセツナはゲリラ本部を後にした。




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「ガァーッハッハッハ!ジャンジャン酒と食い物持ってこい!!まだまだたりねぇーぞ!!」




男は豪快に笑いながら催促を入れる。そこへ村人達が次々と食べ物と酒を運んでいく。


その状況に遂に業を煮やした村長が彼らに話かけた。




「あの・・・剣士様。今の所、ニンゲンヘイキが現れる気配もありませんし・・・一度本部に


お戻りになられたほうが・・・」




村長はとげが立たない様、やんわりと男達に話かけた。小柄の方の男が剣を取り出し切っ先を


村長に向けた。




「ひいぃぃぃ!」村長は腰を抜かして尻もちをついた。


「わかってねぇなあ、村長さんよ!ニンゲンヘイキは神出鬼没だ、ホントにいつ現れるか分からねぇ


んだよ。その分俺達がいる限りはあんたらの命は保証する、なーんも心配ねぇよ!なあ!」


「そうそう、あたい達に任せておけばオールオッケーなのよ!」




剣士の隣に座り、ワインをがぶ飲みしている女銃士がいった。




「お前もご馳走になれよ!なかなかうまいぞ、この肉」




剣士と銃士の裏に立っていた大男は「う、うす!」とボソっと返事をした。


剣士の笑い声は村中に響き渡っていた。




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セツナとサルトビは村のすぐ近くの草むらにひそみ、様子をうかがっていた




「あれ・・・あたしか?」


「あたしだろうなぁ、どう見ても」


「・・・せめてもう少し可愛い子はいなかったのか!?」


「わいに言われてもなぁ・・・まあ、捕まえにいきますか」




サルトビは草むらから出て行こうとすると、セツナが思いっきり引き戻した。




「なんやねん!?文句は捕まえてから言えば・・・」


「シッ!!!」セツナはある方向をじっと見ている、そして地面に耳を当てた。


「・・・ニンゲンヘイキだ!こっちに向かってる」


「なんやて!?こんな辺境の地にも奴らいるんかいな、なら尚更はよ行かんと」


「いや・・・少し様子を見ようよ」


「は?」


「ゲリラ特務部隊の実力、見せてもらおうじゃない!」




セツナはニヤッと悪そうな笑みを浮かべた。




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村の櫓の鐘がカンカン打ち鳴らされた。




「ニンゲンヘイキだー!!!」




村はいっきにパニックになった。村長は剣士の元へ行く。




「剣士様!!!やはりあなたの言う通りでした、いや居てくださってよかった。よろしく


お願いします!!」


「な・・・ま、まじか!?」


「剣士様?」


「い、いや、うむ!そうだな早く村人達を避難させるんだ!」


「は、はい!!」村長は離れていった。


「ちょ、ちょっとあんた!!どうすんだい!?この村にはニンゲンヘイキは来ないんじゃ


なかったのかい!?」女銃士がまくし立てる。


「こんな国のすみっこの村に来るとは思わないだろうが!!!」


「う、うんうん。どうするんだ?」大男が焦りながら声をかける。


「隙をみて逃げ出すしかないだろうが!!」


「うんうん、それしかないな!」




そんな事を話ているうちにニンゲンヘイキが村の入口に入ってきた。




「ぎゃあああ、やつらもうきやがった!!ずらかるぞ!!」




剣士が逃げ出そうとした瞬間、剣士の首元を何者かが引っ張った。




「だああ!何するんだ、早く逃げないと・・・へ?」




剣士の首元を掴んだのはセツナだった。




「おやおや、ゲリラ部隊の剣士様。お仕事の時間ですよ、どこへ行くのかな?」


「な・・・お前らまさか・・・。」


「ゲリラ特務部隊蒼の風のセツナだ!」「げげ!!本物!?」


「うん?お前らその緋い左目・・・ニンゲンヘイキじゃねえか!!この野郎、人の名前


語りやがって・・・お前もサルトビ先輩の手伝いをして来い!!!」


「い、いや俺達は戦うのはちょっと・・・」


「なら、今すぐどたまに穴開けてやろうか?」セツナは拳銃を突き付ける。


「んがっ!!わ、わかったわかったから!!!」


「今までいい思いした分はきっちり働いてもらうからな!!!」




剣士、女銃士、大男の3人は泣きながらニンゲンヘイキの群れに突入していった。




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「は??偽物・・・ですか??」村長が間抜けた声を上げる。


ニンゲンヘイキはすべて破壊され、村にはいつもの平穏が戻っていた。


「私達は金銭はいただきませんよ、ちゃんとスポンサーがバックについてるんで!こいつら


につかったお金はうちから出しましょう。ほらあんたらもあやまんな!!」




ひもで縛り上げられた3人はしょぼんとうなだれて「す、すいません」といった。




「んで、こいつらどうするんや?」サルトビはセツナに聞いた。


「もちろん、名のある剣士様らしいからねぇ・・・うちで働いてもらおうじゃないか!」


「ゲゲゲ!!?何でそうなる!?」


「何か文句でもあんの!!?」


「・・・い、いえ・・・」




こうしてまた新しい仲間が増え、偽物騒動記は幕を閉じたのだった。


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