第4章 対イド帝国ゲリラ部隊総本部『イグニカ』

「さてと・・・じゃあオッサン、そろそろ本部に戻るよ!多分次の任務があるだろうからさ」




セツナはオンジのベットの横にある椅子から腰を上げた。




「ああ・・・済まないな、こんなバタバタとしてる時に総大将がこのざまで」


「いいって、気にすんな!あ、でもあんたが総司令官だって事をかくしてたのは少し腹立ったけどな」


「う・・・それは・・・すまん」




オッサンはいつになくバツの悪そうな顔をした。




「ハハ!オッサン、冗談だよ。とにかくオッサンは少しでも早く元気になってくれよ!」




セツナはオンジの方を振り向くことなく、ひらひらと手を振って病室を後にした。




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イグニカ内病院の廊下を歩きながら、セツナはふと思い出した。




『そういえば、定期健診の結果取りに行かないとな・・・化学班に』




セツナはピタと足を止め、レモンでも舐めたようなものすごく渋い顔をした。




「すごく・・・行きたくない・・・けど最近深縁モード使ったからなぁ・・・結果が気になる」




セツナはうぅぅっと唸り声をあげ、ハアーとため息を付いた後重い足取りで本部の化学班の元へ


向かうのだった。




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対イド帝国ゲリラ部隊付き化学班・・・そこでは日夜キューブシステムの研究、ナノキューブを利用した兵器開発、そして覚醒者の覚醒条件または逆に覚醒状態から再びニンゲンヘイキに戻ってしまう現象など。ゲリラ部隊を縁の下から支える超エリート集団である・・・そう頭脳は素晴らしいのだ、頭脳だけは。


その化学班の研究所にセツナは足を踏み入れた。と同時に入れ替わりでルームから出てくる


者があった。




「お!シンラじゃん、どうだい新しい右腕は?」


「うむ、驚くぐらいに違和感がない。よく動く」




とシンラは右腕の鋼鉄の義手をグーパーグーパーして見せた。




「でしょでしょでしょ!!?そうなんですよ!!このガントレット風ナノキューブ製義手。


聞いてください!!この駆動音、そして唸る排熱機構!!ここのシリンダーももうガッションガッションで堪りません!!!あ、ヨダレが・・・シンラさん、次はガトリング砲かミサイル弾装着しましょうよ!!!ね?ね?ね?」




そう言いながらシンラの右腕に頬をスリスリ彼女は、化学班変態人その1のテンテンだ。


生粋の武器オタクである。




「いや、付けても重くなるだけで邪魔・・・」


「大ー丈夫ですから!超軽量化に成功したいい物があるんですよ!ね?ね?ね?」


「シンラ・・・テンテンに目を付けられたらもう逃げられない・・・諦めな」




セツナはシンラの肩をポンと叩き、憂いを含んだ優しい表情を向けた。


その次の瞬間、セツナは何者かに思いっきりケツを鷲掴みにされた。




「ひやっっ!!」急な出来事に素っ頓狂な声を上げるセツナ。


「うむうむ、鍛え抜かれた良き臀部でんぶじゃ!修行をおろそかにしてない証拠じゃな!


どれ、胸部の方はどうかのぉ」




といいつつそのじいさんはセツナの胸に手を伸ばした。




「このクソエロじじぃ・・・」




セツナが鉄拳を繰り出そうとした瞬間、別の方向からじいさんめがけてみぞおちへのボデイブローが


決まった。




「ひでぶっっ!!!」謎の叫び声を発してじいさんはうずくまった。


「ブラウ所長、暇そうですね・・・私達にはそんな暇ないと思いますけど?」




ものすごい圧がブラウを襲う。




「ちょ・・・ちょっとだけスキンシップをじゃな・・・」ちらっと上目遣いに彼女を見る。


「そんな暇はないと思いますけど!!?」


「そんなに怒らなくても・・・怖い」




じいさんはみぞおちを抑えながらしょぼくれた声を出した。




「セリナさん、ありがとう。それで定期健診の結果は?」




セリナは1枚の紙を差し出す。




「深縁モードを使った後遺症はなさそうだね、他の数値も問題ないよ」


「よかったぁ」セツナが感嘆の息をもらした。


「とはいえ、深縁モードを使う場面はしっかり見極めるじゃぞ!深縁モードはまだまだ不完全な


システムだからのぉ」




みぞおちをナデナデしながらブラウ所長が言う。




「このエロじじぃ、えらそうに」セツナがギリギリとこぶしを作る。


「武器のメンテナンスも終わってるよ」




そう言ってライフルと2丁拳銃を手渡された。




「サンキュー!」


「それと・・・これも」




と2本のダガーナイフをセツナに差し出した。


びくっと体を震わせるセツナ。やや間があった後




「・・・うん」




とナイフを受け取り腰の鞘に収納した。




「セリナさん色々ありがとね!そいじゃ」




手をひらひらさせながらセツナは研究所を後にした。


その後ろ姿を見ながら




「・・・そう簡単に昔の事はふっきれんか・・・」


「でしょうね」


「まるで呪い・・・じゃな」




そう言って2人はセツナの出て行った扉を見つめていた。




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セツナが研究所から出るとシンラが目の前に立っていた。




「シンラ、どうしたん?まだ研究所に用事でもあんの?」


「いや、あんたと任務が決まった」


「お!シンラと任務なんて久しぶりじゃん」セツナはニッと笑った。


「場所はヤナグラという村だ。1ヵ月前にニンゲンヘイキに村を襲撃されている」


「そうか・・・また襲撃を受けてるのかい?」


「それが・・・1ヵ月前の襲撃以来、多くの誤報が寄せられてる。それの調査が任務だ」


「誤報?」セツナは間抜けな声を上げた。


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