第9章 シンエン

タチカゼは手首足首を鎖で繋がれ、データの海を漂っていた。




「・・・ダメだ、どんどん力が吸い取られるみてえだ・・・」




最早、手を動かす力も残っていなかった。その時だった。




『助けてあげるよ、あなたみたいな検体をこんなところで消すのは惜しいからねぇ』




頭の中に女性の声が響きわたった。




「誰・・・だ・・・」




パリーンと豪快な音を立て、手首の鎖が割れた。




「な・・・!?」


『ついでにエネルギーも少し回復させてやる、これで少しはマシに動けるだろう?』


「あんたはいったい・・・」


『フフ・・・もしこの先、どうにもならなくなったらまた会いにくるといい。その時に


すべてを話そう。今は急いだ方がいい!』


「わ、わかった!誰だかわからねぇが、ありがとう!!」




タチカゼはデータの海を上へ向かって泳ぎ始めた。




##################################




外ではニンゲンヘイキとゲリラ軍との乱戦が続いていた。


その中心で銃撃音とカタナで弾を弾く音が響き渡る。




「ハハハ、そんなもので僕を倒せると本気で思っている訳じゃないだろう?」


「うるさいね、やってみなきゃ分からないだろ!?」




セツナは拳銃を乱射する。




「お、さっそくラスボスと対決かいな!我慢のきかんラスボスやのう」


槍を振り回しながらサルトビが軽口を叩く。


「そんな事言ってる場合じゃないよ、一般隊員にはニンゲンヘイキはちと荷が重い!私達


特務隊ががんばらないと!!」カエデは小刀の二刀流を華麗に振り回す。


「それもそうやな!!」サルトビが槍に刺さったニンゲンヘイキをぶん投げた。




と、セツナが銃を撃つのを止める。


「どうしたんです?まだ僕には一撃も致命傷はあたってな・・・」


ダーン!!!


セツナの拳銃がタチカゼの額を貫いた。




「当てたぞ、致命傷」




ゆっくりタチカゼが顔を上げる。傷口はもう塞がっていた。




「人の話は最後まで聞くものですよ、セツナ」




ふぅーとセツナは深く息を吐いた、そして拳銃をしまった。




「どうするつもりですか?まさか素手で戦うとでも?」


「やっぱりあたしは覚悟が足りなかった・・・あんたを倒すにはあたしも決断しなきゃならない。」




そういいながら結んでいたツインテールをほどいた。




「・・・何をする気ですか?」


「潜るのさ、より深い緑にね・・・それは深緑を超え・・・」




セツナの左眼がまばゆい翠に輝き、髪の毛が翠色に逆立つ!




「真縁になる!!!」




セツナは腰に下げたダガーナイフを手に取る。




「これがあたしの切り札、真縁モードさ!さぁ、ラウンド2だ!!!」


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