第5話 動き始めている想い

それから1ヶ月が過ぎ────9月




「今日から、このクラスに転入生として来た、天場 朋佳(てんじょうともか)さんだ」


「初めまして!天場朋佳です。宜しくお願いします」




彼女の人気は、そこそこで存在は大きかった。





その日の夜────




「ちょっとっ!眞那斗っ!」


「うわっ!ビックリした!」


「ここ私の特等席!占領しないで!」


「屋根上は広いから良いじゃないですか?お嬢様が、いつも眺めている景色共有するくらい減らないでしょう?」






そう!


眞那斗は時々こうして屋根上にいたりする。


いないと私はすぐに屋根上を見に行くという。


そういう習慣がついてしまった。






そして 今 現在


私の中で家政夫だったり


クラスメイトだったり


一人の異性だったり


許嫁がいながら




私の心は


許嫁と家政夫の間を


行ったり来たりしている





私は迷わず眞那斗の隣に腰をおろす


私の胸は


ただ隣にいるだけで


ドキドキしながら


緊張している自分がいる




これが “ 恋 ”というものなの?





「そういえば今日の転入生って眞那斗のタイプ?」

「えっ!?いきなり直球質問ですか?」

「えっ!?駄目なの!?」


「いいえ。駄目とかじゃありませんが余りにも突然の質問に驚いただけです」


「えっ!?普通でしょう?で?どうなの?」

「…どうって…彼女は…」

「うん。彼女は?」

「…彼女…」

「彼女?ん?えっ?どういう事?付き合ってる人?」


「いいえ。付き合っていた。という元彼女(カノ)です」

「付き合っていた…じゃあタイプって事!?」


「そうなりますが、よりを戻すとか、そういうのは一切ありませんから!」


「…よりを戻す?…って?」


「そこから説明ですか?」


「し、仕方ないでしょう!?私、そういうの…環境が環境だし…恋とか愛とか…付き合うとかって良く理解してないし…人を好きになるとかって…良く分からないから…」



「………………」



「つまり…それって…今迄、恋をした事がないって事ですか?」


「それ所じゃなかったから…婆やが他界して両親は滅多に帰らない生活。弟達の面倒は私が見ていたから。恋愛って良く分からないまま…何となくしか…」


「そうなんですね」



私達は屋根上で話をしていた。





数日後の放課後────




「眞那斗、久し振りに再会したんだし出掛けない?」



元カノが俺に言ってきた。



「悪い。俺バイトしてるから無理。じゃあ、そういう事で」



グイッと彼女は引き止めた。



「待ってよ!少しくらい良いでしょう?」


「元カノとデートする馬鹿が何処にいるんだ?悪いけど誤解されたら困るし。とにかく、そういう事だから」


「…眞那斗…」


「じゃあな!」



俺は彼女の前から去った。



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