第6話 元彼女(カノ) と お嬢様 ~眞那斗の本当の姿~
ある日の事。
「今晩は」
彰さんが訪問してきた。
「彰さん…」
「すみません…近くまで来たので」
「そうだったんですね」
「あの…良かったら出掛けませんか?」
「えっ?」
「都合が悪いようでしたら、また日を改めます」
「いいえ。せっかく来られたのですから出掛けましょう」
私達は出掛けた。
夜も更けた頃、屋敷に帰宅─────
「お帰りなさいませ。お嬢様」
ドキッ
「眞那斗…まだ起きてたの?」
「家政夫ですから、お嬢様より先に寝るのは失礼に当たりますから。みんなの無事を見届け見守るのも家政夫の務めです」
「…ありがとう…だけど無理して倒れられたら困るよ」
「大丈夫ですよ。お嬢様こそ夜遊びしては、お肌に悪いですよ」
「ちょ、ちょっと!夜遊びって…相手は許嫁です!」
クスクス笑う眞那斗。
ドキン…
「そうですね」
「も、もう!寝ます!おやすみなさい!」
「はい。おやすみなさいませ。お嬢様」
私は部屋に行った。
そして再び、ある日の事だった。
「夏須日さん、ちょっと良い?」
眞那斗の元彼女に呼び出された。
「…あの…」
「呼び出してごめんなさい。あなた…お嬢様らしいわね?」
「えっ?あー…まあ…」
「あなたみたいな人が、こんな一般の学校に通う事は許されるの?」
「えっ!?」
「お嬢様ならお嬢様らしく、きちんとした学校に行くべきじゃないの?」
「…それは…でも…私は…」
「あなたみたいな人がいると、こっちが気を遣うの!」
言葉を遮るように言われた。
「転校の手続きくらい、すぐに出来るでしょう?私達の前から居なくなって!正直、邪魔なの!眞那斗と私の邪魔しないで!」
「…邪魔って…」
「とにかく、そう言う事!良い!?」
そう言うと彼女は去って行った。
その日の夜、私はベッドに部屋の出入口の方に背を向けた状態で横になっていた─────
「お嬢様、失礼します」
「………………」
「お嬢様?」
「…眞那斗…?」
私はゆっくりと起き上がる。
「どうかしましたか?」
「えっ?」
「学校から帰って浮かない顔してたので」
「…大丈夫。何でも…」
スッと両頬を包み込むように触れる。
ドキン
「何かあったんでしょう?違いますか?」
「………………」
「沙夜華お嬢様」
私は触れられている両頬の両手を離す。
「本当に何でもないから。今日は疲れたのかも」
その時だ。
「お前ら何者だ!離せっ!」
一階から聞こえる由宇哉の声。
何かあったのだろうか?
やけに騒々しい。
私達は一階の方へと静かに降りて行く。
恐る恐る見て見ると、数人の目出し帽を被っている人達がいた。
目出し帽を被っている人達に下の子達は指図され、引き出しや色々な所を手探りさせられている。
下の子供達は泣きながらも恐怖に怯えながら、やらされているのが伺える。
「うるせー子供(ガキ)だな!」
「ピー、ピー。泣くんじゃねーぞ!」
怒鳴られ更に泣く下の子供達の姿。
「うるせーな!」
「下の子供達に手出したら許さねーからな!」
「黙って手を動かしな!」
「動かしてんじゃん!つーか、俺達お金の場所、良く分かんねーから出てこないと思うけど?」
「うるせー黙れ!」
カチッ
「…拳銃…って…すげー、それ本物なの?」
「わー、見せて!見せて!」
「馬鹿っ!よせ!死にてーのか!?」
「クソ子供(ガキ)ども、早く探し出せ!」
✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕
「お嬢様は警察に連絡されて下さい」
「えっ?」
「私はみんなの所に行きます」
「いいえ!私が行きます!弟達が泣いてるのよ!」
「危険過ぎます!相手は銃を持っているんですよ」
「弟達の為なら命掛けるくらい、どうって事ない!」
「でも今は私の言う事を聞いて下さい!」
「ごめん…こればっかりは家政夫のあなたの言う事は聞けないっ!」
「お嬢様っ!」
私は弟達の所に行く。
「あなた達!何者ですかっ!?」
カチッ
銃口を向けられた。
「誰だ!?お前!」
「まだ他にいたのか!?」
「姉ちゃん!」
「ここの娘か?だったら金目の物を出して貰おうじゃねーか?」
「ありません!お金の管理は両親しか知りません!」
「そんなの誰が信じるか!?金庫の1つや2つは、あるはずだ!」
「警察呼びますよ!」
「警察が怖くてやってられるか!!ほらっ!金だ金!」
「御断りします!帰って!」
「俺達が、そう簡単に諦めるわけねーだろ?つーか…」
歩み寄ってくるとグイッと手首を掴まれた。
ビクッ
「きゃっ!」
「姉ちゃん!」
「お嬢様なら…どっちのタイプかな?」
「えっ?」
「男を知ってるか?知らないか…だよな~…」
グイッ
「きゃあっ!」
肌が露になる。
「金庫のある場所を教えろ!」
「や、やだ!本当に…知らないってば…」
「チッ!」
グイッ
「お前らは探せ!女には他の部屋を案内してもらう!」
「離して!本当に知ら…」
グイッ
相手が私から離れた。
「きゃあっ!」
ドサッ
抱き留められた。
ドキッ
「…弟が泣いてるからって…不利になんの…お嬢様であるあんたなんだよ!」
「…えっ…?」
「お嬢様ならお嬢様らしく大人しくしろよな!家政夫の言う事も聞けない本当呆れたお嬢様だな」
ドキン
「…眞那斗…?」
「…眞那斗…さん…」と、由宇哉。
「他にもいたのか?」
「そういう事!ここを守る為なら体張って守る役目も必要なんだよ!ここの家族に傷でもつくってみろ!両親が黙っておかねーぞ!」
ドキン
眞那斗が豹変した瞬間だった。
普段見ない眞那斗に私の心は戸惑いを隠せなかった。
「野郎っ!」
遅いかかる相手を、あっという間に倒し、警察に引き渡す。
「眞那斗さん!スゲー」
「眞那斗兄ちゃん強い!」
「今日は一緒に寝た方が良いかもしれませんね。お嬢様は、どうされますか?」
「わ、私は一人で平気です!」
「そうですか。じゃあ、ご勝手にどうぞ。お嬢様」
私は去り始める。
「お嬢様」
「何?」
パサッ
洋服を羽織らせた。
ドキン
「おやすみなさい。お嬢様」
「お、おやすみなさい」
私は自分の部屋に行く事にした。
部屋に行くも恐怖感はあり眠れない。
ベッドの上で何度も寝返りをする。
コンコン
私の部屋のドアがノックされた。
ビクッ
「お嬢様?大丈夫ですか?」
「………………」
「入りますよ」
カチャ
ドアが開くと同時に寝たふりをする私。
足音が近付いて来る。
ドキン…
ドキン…
「あんな事あって良く眠れるな…どんだけ根性据わってんだよ」
ムカッ
眞那斗の一言に腹が立つ。
「ちょっと!部屋に不法侵入しておいて酷くない?」
「何?起きてたの?耳栓しときゃ良かったかな?」
「あのねーーっ!」
私はバッと体を起こす。
スッと両頬を包み込むように優しく触れる。
ドキッ
「意地張ったり、我が儘だったり、お嬢様は忙しい方ですね」
「……眞那斗こそ…本当のあなたは、どれなの?」
「…えっ…?」
「あんな眞那斗…見た事ないよ…」
微笑む眞那斗。
ドキン
「家政夫である私が普段から、あれ程までの話し方で接したら、ご両親が帰られた時、すぐにクビですよ」
「だったら…私の前だけは…ありのままの眞那斗でいて」
「…お嬢様…」
「…考えておきます。さあ、眠られて下さい。あなたが眠るまで私傍にいてあげますから」
「…ありがとう…眞那斗…。ねえ眞那斗…」
「はい?」
「私…気を遣われてる?私…いない方が良いのかな?」
「えっ?急にどうしたんですか?」
「…いいえ…何でもありません。聞いてみただけです」
「…学校から帰宅されて浮かない顔をしていたのは、それが理由ですか?」
ギクッ
「い、いいえ。それは関係ありません」
「………………」
「お嬢様…いいえ…賀須日沙夜華」
ドキッ
「関係ないわけねーだろ?同級生としてクラスメイトとして話し聞くし意見は言わせてもらう。隠さず話せよ」
私は正直に話をする事にした。
「朋佳が?つーか、アイツ何考えてんだ?それで?賀須日はどうしたいの?本当の気持ち言えよ!」
「私は転校する気はないし、お嬢様だとか遠慮しないで、みんなに話してもらって良いし。むしろ、私は、その方が良い。特別扱いしないでほしいの!」
「分かった。じゃあ、明日、俺から上手く話しておく」
「良い!辞めて!今のままで良いから」
「お前は普通に過ごしてろ。俺に任せろ!」
「眞那斗…」
頭をポンとする眞那斗。
ドキン
「お嬢様。もっと俺に頼って下さい。あなたは一人で頑張りすぎてます。だから一人で抱え込まないように。良いですね!」
敬語だったり
同級生(タメ)口だったり
使い分けるあなたに
私の心は夢中になり
あなたの虜─トリコ─ になっていく・・・・・
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