第10話 同じ空

「…眞那斗…同じ空…見てるかな…?」





あなたに 逢いたい



こんなに愛しているのに



あなたは 私の傍にいない



眞那斗……



あなたは 今



何してますか…?





「…眞那斗…」






あなたへの想いが



溢れるばかりで



あなたに逢えない程



想いが募る





「沙夜華ーー、沙夜華ーー。沙夜華いるのーー?」



物思いに更けていると母親の声に現実に引き戻された。


私は母親の元へ向かう。



「…お母様…また…何も連絡なく帰国されて今回は何ですか?」

「今度みんなでニューヨークに発ちますよ」

「えっ!?ニューヨーク!?どうしてまた?突然過ぎます!」


「春休みになるし、お父様に、あなた達の元気な姿を見せてあげましょう。よろしいですね」


「…分かりました…」




嫌と断る権利なんて私にはない


もちろん弟達も


だって主導権は母親だ


母親は婿養子をもらった身分


由宇哉と私は本当の姉弟だけど


下の3人達とは母親は一緒でも


父親は違う


そういう家庭環境なのだ





眞那斗と別れて数ヶ月の月日が流れていた────3月






眞那斗からは何の音沙汰もないまま


家政夫とお嬢様として過ごしてきた日常生活の時間だけしかなく


これといって思い出なんてない


2人でデートするなんて一切なかったのだから────





何処か寂しく切ない思いになる


もっと沢山の思い出が欲しかった


あなたも この同じ空の下にいること


あなたも この空を見ていますか…?





そして─────






「みんなーーーー、準備出来たーーー?出発するわよーーー?」



母親が叫ぶ。


私達はニューヨークに発った。






in ニューヨーク



私達は両親に連れられ街を散策。





その日の夜─────



「姉ちゃん起きてる?」

「何?どうしたの?」

「本場のニューヨークに興奮して眠れなくてさ」

「あー、そういう事」



私は由宇哉を部屋に入れる。





「そういえばさ眞那斗さん」




ドキン


名前を聞いて胸が高鳴る。




「うん…」

「姉ちゃん好きだったんだろう?」

「…好きだった…過去系じゃないよ…現在進行形だよ」

「えっ?」

「今も…好き…彼を愛してる」


「そうなんだ。でも何の音沙汰もねーんだろ?」

「まーね…でも…また逢える気がするから」

「うわー、すっげー自信!何処から出てくるわけ?」




私達は姉弟水入らずで話をしていた






数日後────




「姉ちゃん、外、出掛けね?」


「えっ!?駄目だよ!慣れない街を外出するなんて!しかも日本人は狙われやすいんだから!」


「じゃあ何の為にニューヨーク来たんだよ」


「…それは、そうだけど…」


「なあ付き合って!友達にお土産買う予定してて。頼まれたのもあるけど。なあ!頼む!」




両手を合わせ頼む由宇哉。




「良い子にしていた方が良いと思うけど…」

「姉ちゃんもババアと同じ事言うなよ」

「ババアって…?」



私はクスクス笑う。



「あんた…母親の事…そんな風に?ていうか、お母様と同じにしないで!」




そして私達は下の子達を家政婦に頼み由宇哉と出掛けた。




その途中────




「Help me!」



そういう声がし私達に向かって来る人影。



ドンッとぶつかられたのも束の間。



「痛っ!」

「大丈夫?姉ちゃん」

「うん…大丈…夫…じゃない!!」

「えっ!?」

「ひったくりヤられた!!」

「えええっ!?」



私は追い掛ける。



「こらーーーっ!待てーーっ!本当逃げ足だけは早いんだから!こういう時…日本人って…不利だ…」




そして────



「姉ちゃん…もう無理…疲れた…」と、足を止める由宇哉。


「駄目っ!だってアレには携帯も入っていたんだよ!眞那斗からの電話…だから諦めたくても諦められないの!!全然連絡先知らないし…まあ…公衆電話からだったけど…でも唯一の…」



「あー分かった、分かった。そう興奮すんなよ!眞那斗バカ!」

「うるさい!第一、あんたが出掛けようって言うから!」

「はああっ!?お、俺ー?」




私達は言い合いながら再び後を追う。


そして足を止める。



「…携帯…」

「…って…そっちかよ!普通、お金の心配…」



「………………」




私はショックの余り声が出なかった。




「…姉ちゃん…?」

「…行こうか…?」

「えっ?」

「街…周るんでしょう?その代わり全てあんたの驕りだからね!」

「えっ…?」


「私は一文無しなんだからねっ!!怒られるだろうな…携帯も…変えなきゃ…あんたも覚悟の上で、あんたが言うババアとやらに、こっぴどく怒られるんだからね!」


「うわぁ~マジ最悪…ババアの角(ツノ)と牙が生えた瞬間脳裏に過った…」




私達は再び気を取り直して街を廻る。




「…はあ…携帯…」


「いやいや普通お金の心配…まあ…携帯も悪用には使われるけど…」


「…バチが当たったんだろうね…」


「…姉ちゃん…」




その時────



「Manato!」



ドキッ


聞き覚えのある名前に振り向き辺りを見渡す。


そして視界に入ってきた…その視線の先には眞那斗が女の人といる所だった。



ズキン…




「…眞那斗…」

「…姉ちゃん…」


「…沙夜華…?」



お互い目が合い気付くものの



「行くよ」




私は去り始める。



「待っ…ちょ、姉ちゃん!」

「沙夜華っ!」




グイッ


腕を掴まれた。



ドキッ



「…人違いだと思います!」



私は振り払い足早に去る。



「姉ちゃんっ!」


「…由宇哉…」


「…眞那斗さん…」


「沙夜華を頼む。アイツ…誤解した」


「本当タイミング悪過ぎじゃね?この借り返してよ眞那斗兄ちゃん」


「ば、馬鹿!からかうな!」

「じゃあ」

「…ああ」




「姉ちゃんっ!待って!せっかく会えたのに」

「…隣に女の人いたし…邪魔したら悪いでしょう?」


「友達かもしれないじゃん!つーか…友達だと思うけど?眞那斗さん日本でも友達多かったし」


「ここは日本じゃない。ニューヨークだよ」


「…姉ちゃん…」


「ほら!周るよ!」







本当は話したくて 触れたくて


逢えて嬉しいはずなのに


あなたに背を向ける




人は時々


背を向けたくなる事はあるけど




せっかくのチャンスだったのに


背を向けるべきだったかな…?




そして


一歩 一歩と


2人の距離が離れていく──────












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