第2話 家 政 夫 と 転 入 生

それから度々、ピアノの音を聴くようになった。


最近、引っ越しでもして来た人なのかもしれない。




「沙夜華、高校は行きなさい!」と、お母様。


「嫌ですっ!家政夫とか、ベビーシッターなんて要らない!!私が弟達の面倒見るの!第一、今迄そうやってしてきたんだから受験はしない!」



私は部屋を飛び出した。



「沙夜華っ!」




沙夜華・15歳。中学3年。


受験で、お母様と喧嘩中。




「沙夜華ーー。沙夜華ーー」



お母様が屋敷内を探しているのが分かる。




「見付かるかっつーの!」



私は屋根に登っていた。



「姉ちゃん!」

「うわっ!ビックリした!」



弟の由宇哉だ。



「相変わらず」

「だって屋根にいるって誰も知らないし邪魔されずに済むし!」

「俺ぐらいじゃ?」

「そうだね」


「なあ、それよりどうして高校行かねーの?」

「えっ?」

「高校行けば良いじゃん!」


「今更家政夫とか、ベビーシッターなんて必要ある?私が面倒見たらいけないって理由ないでしょう?だって兄妹なんだから。第一、今迄そうしてきたんだよ?」


「姉ちゃんの言ってる事は分からなくねーけど…姉ちゃん忙しくなるからじゃねーの?」


「えっ?私が!?」


「16になったら姉ちゃん結婚出来る年齢だし婚約者とか、そういうので色々と公になって公表されるわけだし、お互いの食事会とかパーティーとか出席しないといけないわけだし」



「……………」




全然考えてなかった


私が結婚!?


だけど私の環境ではある話だ



異性と付き合うとかって私の中にはなくて


そんな立場なんて意識してなくて……





そして結局私は強制的に高校に行かされる事となり家政夫を雇うとの事だった。






春。4月。


本来なら、お嬢様学校や良い高校に通う事が本当なんだけど、そんな所に私が合うわけがない。



礼儀作法。


お金持ち同士の自慢話。


私は好きで、お金持ちの環境に生まれたわけじゃない。


だからこそ、一般の高校にしたのだ。


お母様は猛反対。


無理もない。


お嬢様が一般に行く!?


そんな馬鹿げた話がある?


お金持ちや、お嬢様なら相応しい環境に行くべき!


お母様は納得いかず


私は出来ないなら高校には行かないと言った事で、お母様は渋々行かせる事にした。




それから1ヶ月────5月



結局、家政夫は現れない。



「家政夫…雇う気あるのかな?やっぱり私が…」



「沙夜華ーー、沙夜華ーー」



お母様が部屋に来た事が分かった。




「あの子…何処に行ったのかしら?話があるのに…」



「…話?話しって何ですか?お母様」

「えっ?沙夜華?何処…」




私は屋根から顔を出す。



「きゃあっ!何処から顔を出されてるんですっ!?」

「屋根上からですけど?」


「屋根って…あなたは女の子ですよ!?夏須日家のお嬢様がなんて…」


「そんな事よりも、お話って何ですか?ニューヨークに戻るって事でしょう?ご勝手にどうぞ!」


「違います!確かに日本を発ちますが家政夫が来る事になりましたので。その報告です」


「そうですか。分かりました」





そして、お母様は日本を発ち、


住み込みで家政夫が来る事になったらしいんだけど───







次の日────



「今日から、このクラスの転入生と来た飛比谷 眞那斗(ひびや まなと)君だ」


「飛比谷眞那斗です!宜しくお願いしまーーす!」




明るく元気に自己紹介をする彼。


そんな彼の存在は人気高く、一気にクラスに溶け込んだ。



その日、学校から帰宅した私。




「うわーー」



ビクッ


子供達が私の前を走り去る姿。



「な、何…?騒々し…」


「お帰り。姉ちゃん」と、由宇哉


「ただいま…ねえ、どうしたの?一体、何の騒ぎ?」


「今日から来た家政夫だって」


「えっ!?……あー、そういえば言ってたっけ?」


「男の人だったけど」


「そうなんだ…えっ!?待って!今、男の人って言った?」


「言った」


「…そう…」





その日の夜。



「うわぁ♪綺麗なお月様…」



部屋のベランダから眺める空には綺麗な満月が輝き月明かりを照らしている。




「本当、綺麗な満月ですね!」



ビクッ



「えっ?」




辺りを見渡すも姿がない。




「君が良くここにいるのを見掛けたけど屋根に住んだらどうですか?お嬢様」


「えっ…!?屋根…!?」




私は屋根に登る。



ドキッ


胸が大きく跳ねる。



「あっ!」

「要約、お顔を合わせる事が出来ましたね。お嬢様」

「あなたは…確か…」



そこには見覚えある男の子。



「今日から、ここの屋敷の家政婦、"夫"の方の家政夫に雇わせて貰った、飛比谷眞那斗です。何なりと私に、お申し付け下さい。お嬢様」


「同級生に身の回りの御世話なんて…御断りします!」

「だけど決まったから」


「そうだとしても!て言うか…お母様は、どうして同級生なんかを雇われたわけ?意味分かんない!あなた!もしかして年齢誤魔化してるんじゃ?」


「まさかっ!」


「まさかって…怪し過ぎる!」

「年齢は普通に、お伝えしましたが?」

「それなのに…家政夫!?」

「そうです」



「………………」



「ところで…学校とは随分と違うんですね?」

「えっ?」

「性格」

「…それは…」


「学校では控え目で大人し目な君が家では結構大胆なお嬢様。屋根に平気で登る大胆さ。そのギャップは生まれつきですか?」


「…そんなの…」

「…まあ良いですけど」

「…ねえ…どうして家政夫をしようと…?」


「特に意味はございません。住む所もないし偶々見掛けた貼り紙に応募したんです。子供大好きだし雇って貰えるか不安や心配もありましたが……」


「そう…住み込み…ですからね…あっ!変な気起こさないでね」


「同級生の体に興味ありませんよ」


「そう?ところでさ、ここにいる事バレたら大変じゃない?だって同級生でクラスメイトって…」


「バレないようにすれば良いんですよ。外に出れば、ただのクラスメイト。それさえ守れば問題ないと思いますけど?」



私達は色々話をしていた。





































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