第3話 家政夫は同級生~もう1つの顔~

それから1ヶ月が過ぎ───9月




「眞那斗さん、これ分かりますか?」



由宇哉が家政夫の彼に尋ねる。



「はい?どれですか?これ?はい、分かりますよ」と彼が言った。


「マジ?教えて!」




彼の存在はみんなの中で大きかった。


頭が良くて面倒見の良い男の子。



「スゲー!分かり易っ!眞那斗さん、俺の学校の先生になってよ!」


「16歳で高校教師はいないですよ」


「若くて良いんじゃねーの?14歳の女子中学生の生徒なんか彼女にどう?」


「いや…中学生は…俺の範囲内じゃないですから」


「いや中学生だからとは言っても年の差2だし!」


「そうかもしれませんが…」





ある日の事─────




「沙夜華ーー、いるーー?」

「お母様!?また急に帰国ですか?電話1本位下さい」

「良いでしょう?」

「良くないです。困ります!」



私達は言い合う。




数日後のある日────




「沙夜華、私は、ニューヨークに発ちますから、こちらの事は宜しく頼みますよ」


「はい。分かりました」



お母様はニューヨークへと発った。



その日の夜、私は屋根の上にいると、そこへ────




「お嬢様、いらっしゃいますか?」



ベランダから声が聞こえた。



「眞那斗…?」

「相変わらずですね」

「そういう眞那斗こそ良く分かったね?」


「分かりますよ。ここに来る前に何度もお嬢様が屋根にいる所を見掛けてますから。最初は見間違いかと思ってましたし。時には屋根裏部屋に住んでる怪しい人かと思いましたし…」



「何それ!」


「それはそうでしょう?ここの屋敷の中の事は全く知らなかったのですから」


「まあ…それもそうよね…」


「ところで母親がいないとか両親がいないのに良く寂しくないですね」


「えっ?そんなの寂しいも何も通り越してるから」

「えっ?」


「それは…昔は寂しかったけど…婆やが、いつも傍にいてくれたから…そんな婆やも小学校の時に他界して…あなたが来るまでは私が弟達の面倒見てた…だから高校には行かないつもりでいたけど…」


「行かざるを得なかった…という事ですね」


「うん…ねえ!あなた同級生よね?」

「そうですけど」

「敬語辞めにしない?」

「えっ?それは駄目ですよ!」


「でも同級生で敬語っておかしいでしょう?同級生でありクラスメイトだよ」


「出来ません!プライベートとスクールライフは別にしておかないと…公私混同が区別が付かなくなりますし油断大敵です!御理解下さい!お嬢様。それでは失礼します」


「はい」



そう言うと私の部屋を後に去った。





ある日の事────




「眞那斗ーー。飛比谷 眞那斗ーーーっ!いないのーー?いるなら返事してーー!眞那斗ーー!」



私は家政夫の彼を探す。


名前を呼ばれているのは気付いていたものの手が離せなかった俺。



「眞那斗ーーーっ!何処ーーーっ!」

「何だよ!うっせーな!」

「えっ?」



目が合う俺達。



「………………」



俺は、直ぐに目をそらし



「…ヤバ…ボロが出た…」



俺は聞こえるか聞こえない位かの声で言った。




《お嬢様だったのかよ…》




「な、何でしょう。お嬢様」

「…ねえ…今…」

「今?」

「…ううん…」




《聞き間違いかな?》

《だけど…》



「…あの…お嬢様?何か用事…」

「えっ?あ…えっと…」



「………………」


「何か不都合な事があったから探されていたのでは…?」


「……ああっ!そう!思い出した!あなた私の身の回りの物触った?」


「…身の回りの物…?はい、家政夫ですから」

「やっぱり!私の部屋の物とか勝手に触るの辞めて!」


「しかし家政夫ですから触るなと言われましても…余りにも、お部屋が…」


「…わ、悪かったわね!」

「掃除ならぬ大掃除をさせて頂きました」

「お、大掃除!失礼ね!」

「しかし早目に手を打たなければ虫が湧きますよ。お嬢様」

「む、虫ぃぃっ!?」


「今まで良く虫が湧かなかったのかが疑問でなりません」

「ちょっと!さっきから失礼な事ばっかり」


「お嬢様でありながら、しかも女の子であるあなたが、あそこ迄散乱されてると…どんな人でも引きますよ。奥様から怒られる事なかったのですか?」


「注意はされてました!でも今は呆れて言ってこないに等しい。まあ、ほとんど帰って来ないし、いつも突然だし…って…そんなの、どうでも良い!私の部屋を掃除するのは辞めて!2度としないで!良いっ!命令よ!」



「はい分かりました。2度と致しません。しかし…虫が湧いても知りませんよ」


「大丈夫です!」



私はその場を去る。




「ヤベー…超焦った!つーか…俺の本性は、まだ、バラすわけにはいかねーし…」





もう1つの顔


彼はクラスの人気者で


それを保ちつつ


違う性格が実在していた





そんな事など知るよしもなく─────

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