第8話 家政夫じゃなかったら・・・

ある日の事、私は、いつものように屋根上にいた────



「沙夜華お嬢様」



ビクッ

突然に名前を呼ばれ驚く私。



「眞、眞那斗!ビックリした…」

「一人が良いですか?」

「別に大丈夫です。今更、聞く関係でもないでしょう?」


「えっ?家政夫と、お嬢様でしょう?後は同級生って所ですか?たまには一人になりたい時位あるでしょう?隣、失礼します」


「う、うん…」



ドキドキ加速する胸。






やっぱり私は・・・



彼が・・・



好き・・・








「…お嬢様も良いものじゃないね?」

「…えっ?お嬢様?」

「こんな環境に生まれただけで好きな人も選べない人生なんて」


「そんな事ありませんよ。だったら、お嬢様が変えればい良いじゃないですか?」


「えっ?」


「お嬢様だとか、お金持ちだとか…自分の人生なんですから変える事は可能なんじゃないんですか?」



「でも……」

「後悔しない人生を歩むべきです」

「後悔しない人生って…そんな簡単には…」

「何もしないまま後悔するよりはマシではないですか?」

「…それは…」






だからって


簡単なものじゃない


だって私はあなたが好きだから




「…眞那斗…」

「はい?」

「…ううん…ねえ…眞那斗は…今…好きな人いたりする?」

「えっ?」

「…ゴメン…やっぱり良い。気にしないで」



「…………………」



「お嬢様はいるんですか?」

「えっ?」

「許嫁がいるとしても本心は…どうなんですか?」

「…べ、別に私は…へ、部屋に戻ろう…」




私は立ち上がり始める。



「…眞那斗…」

「はい?」

「…私…あなたが…」




グイッ

手首を掴み引き寄せられ後頭部を押し寄せた。




「きゃあっ!」




ドキン


キスされた。



一瞬の出来事だった。



「…眞那…」

「口封じ」



ドキン

言い終える前に言葉を遮られ至近距離にある眞那斗の顔。




「お前が言いたい事分かるから」




ドキン



《敬語…抜き…》




「今、その言葉(セリフ)を聞いたら俺ブレーキかけれねーし」

「…眞那斗…だったら…」


「ブレーキかけねーとボロが出る。俺達の間に恋愛が生まれたら後がヤバイから」




そう言うと去り始める。



「眞那斗っ!」



私は後を追った。




部屋に入る。



「眞那斗っ!待って!ブレーキかけないでよ!私の気持ちに応えて!」


「…いつも傍にいるから…覚悟出来たら、アクセル踏む」

「えっ?」



振り返る眞那斗。




「なーんてな」

「…眞…」



歩み寄ると片頬に優しく触れる。



ドキン



「そんな顔すんなよ。今ここで問題起こしたら俺あんたの傍にいられなくなる。それでも良いわけ?」




首を左右にふる私。




「だったら…」

「…あなたが家政夫じゃなければ…良かった…」

「沙夜華…」




ドキン



「初めて…名前…呼んでくれた…」




グイッと私を抱き寄せ抱きしめる。



ドキン

私は抱きしめ返した。



眞那斗は抱きしめた体を離す。



至近距離で視線がぶつかり、キスされた。


そして私を抱きしめる。




「沙夜華…俺が傍にいられる間は良いけど、多分、時間の問題だと思うから」




そう言うと眞那斗は抱きしめた体を離し部屋を後に出て行く。





「…眞那斗…」






この関係は


いつまで続きますか?


私の未来に幸せありますか…?








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