第19話 真 実 ~それぞれの想い~最愛の人~

「それでは、前回、好成績を残したものの惜しくも予選落ちされリベンジをされた飛比谷 眞那斗さんです」




拍手が起こる。



ドキン…



《…眞那斗…》



そして2人も会場にいる事など知るよしもなく、演奏が始まった。





「…しなやかだ…」

「…素晴らしい…ですわね…こんな才能が…」



そして弾き終え、ステージを後に去る。






『眞那斗!』


私はホールの隅々まで聞こえるように


彼の名前を叫びたかった





それから全てのプログラムを終える。




その後、上位の発表があるものの、未だに眞那斗の名前が呼ばれていない。



「第◯回、優勝者は……」




ドラムロールとスポットライトの照明がステージを照らす。




そして───




次の瞬間───




「飛比谷 眞那斗さんです」




拍手が起こる。




《眞那斗…》



そして一言、感想の時だった。




「この曲は一人の愛する女性の為に弾いた曲です。彼女の事は1日たりとも忘れた事がありません。本当に最愛の人です」



ドキン…



《眞那斗…》



私は涙がこぼれた。




「この会場の何処かで必ず聴いてくれている事を願い信じて、もう一度、彼女に伝えたい。今でも心から愛していると……どんな障害があっても俺の傍で隣で俺と同じ道を歩んで欲しいと……」


「まあ…素晴らしい愛のコメントですね。まるでプロポーズですね」



私は席を立ち上がる。




「……私も…あなたを愛しています…」

「…沙夜華…」

「あら?もしかして愛する女性でしょうか?」

「あなたに、お話したい事があります…後々、お時間を下さい」

「分かりました」



私は、そのまま会場を後に去る。




「沙夜華」と、呼び止められ視線の先には────



「…彰さん…お母様…」

「あなた…彼に何を、お話されるのです?」


「…真実を話します。お母様も彼に真実を話し別離れる事を、お望みなのでしょう?」


「…沙夜華…それは…」





「彼とは今日限りで縁を切ります。それで宜しいんでしょう?それでは失礼致します」


「沙夜華!お待ちなさい!…あなたにとって本当の幸せとは何ですか?」




「………………」



「あなたにとっての幸せの一握りの中に彼は入っているのですか?」


「例え、もし入っているとしても…私達は結ばれない運命ですから…一緒に幸せにはなれません。相手の幸せを願う事しか出来ませんから」


「…沙夜華…」


「お義母様、本当に、このままで良いのですか?」



「………………」




私は2人の前から去った。




シーンと静まり返っている会場。


私は、眞那斗の友人と名乗る人からメールを貰い待ち合わせをしていた。




「沙夜華」



ドキッ



「眞那斗…」

「悪い遅くなった」

「ううん…私こそ眞那斗、忙しいのにゴメンね」


「いや。俺は沙夜華に逢えて話が出来て、むしろ嬉しいけど…それで話って?」


「私達の事だけど…母親が…私達…兄妹だって…」

「…えっ!?…いやいや俺の母親は存在するし勿論、父親も」

「だけど…母親が、そう言ってたの」



「………………」



「俺達に対する嫌がらせだろう?」


「だけど…あなたには、もう1つ、お伝えしなければいけません…私は……許嫁と関係を持ってしまい、あなたを裏切ってしまいました。だから…これ以上あなたと今後お付き合いする事は出来ません」


「そんな事はどうで良い!つーか他人行儀で話すの辞めろよ」




「………………」



「ごめんなさい…それじゃ…さようなら…」




私は去り始める。




グイッ

引き止められる。



ドキッ




「俺は信じねーから。つーか…由宇哉から聞いてる」

「えっ?」




向き合う私達。




「俺も役所で調べた。俺達は兄妹なんかじゃない!それはハッキリ言える」


「…眞那斗…」




引き止めた手を離し両頬を優しく包み込むように触れる。




ドキン




「それでも…沙夜華は…俺達が兄妹だって…」




私は触れられた両頬に自分の手を重ね眞那斗の両手を離し下にうつ向く。



「……ごめん…例え兄妹じゃなかったとしても…眞那斗を裏切った事には変わりはないから…」



顔を上げる。



「だから…っ…」



キスで唇が塞がれた。


唇が離れ押し離そうとするも再びキスされ何度もキスされた。


そしてオデコ同士をくっ付ける。




「…悪い…俺は別れる気ねーけど…沙夜華が望むなら…俺は何も言わねーし引き止めはしない…」



ズキン…




そして私を抱きしめる。


ドキン



「沙夜華が許嫁の彰さんと関係持って気にしてるのは分かるけど俺は気にしていない。それだけは伝えておく。兄妹じゃない事も分かってるから」


「眞那斗…」



私は顔を上げ眞那斗にキスをした。




「私にとってもあなたは最愛の人でした…ありがとう…さようなら…」



至近距離で言う私に再びキスをするてて深いキスを何度もされた。



私は名残り惜しむかのように、声が漏れる。




「…反則だろ?つーか…最後に抱きたかったかも…」



ドキッ



「ば、馬鹿…」





私達は別れた。





お互い愛し合っているのに



どうして……?



これが環境の違いなのでしょうか……







































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