第18話 招 待 状

「姉ちゃんいる?」



ある日の夜、私の部屋に訪れる由宇哉。



「どうしたの?」

「今日、こんなの届いてた」

「えっ?」



封書を渡す由宇哉。



「何?これ」


「さあ?名前も住所も一切書いてなくて…そういうのって怪し…って…言う前から開けてるし!」


「…ピアノの演奏会…」


「ピアノ?」


「お母様が何かに応募でもして……」




ドキン…



「…えっ…?」

「…お姉ちゃん…?どうか…」

「いつ?」

「えっ?」

「これ」

「知らねーし。ポストに入ってたから」



私は部屋を飛び出した。




「姉ちゃんっ!」



玄関も飛び出し辺りを見渡し後を追うように由宇哉が来た。



「…眞那斗…」





──── そう



私の手元にあるのは


ピアノの演奏会


しかも それは


眞那斗からの招待状だった



ピアノを弾けたのは知ってる


だけど招待状…?


招待状には日時が書かれたもの


そして愛する人の名前が書いてあった


ううん……


愛しあった人の名前が正しいかもしれない





「会いたいのは分かるけど、持って来たって保証…」

「消印がないから、ポストに直接入れに来てるんだよ」

「えっ…?」

「眞那斗は…ここ(屋敷)の家政夫してたんだよ?」

「それは、そうだけど……」

「まだ近くにいるかもしれない。由宇哉!留守番お願いっ!」

「あっ!ちょっ…姉ちゃんっ!」






奇跡が起きるなら



彼に逢わせて下さい



──── お願い ────






そして──────






「…ただいま…無理だった…まあ…無理もないよね」

「…姉ちゃん…」




奇跡が起きるはずがないって分かってた



でも少しの可能性を賭けてみる



だって運命って分からないから─────







そして当日─────





「あら?沙夜華、彰さんとデート?」


「えっ?あ、うん」


「そう。お気を付けて」


「はい」




私は出かける。






眞那斗と逢える


それだけだった


でも本当は会うべきじゃない


だって私達は兄妹だから


だけど今までの事を全て


彼に打ち明ける時


今日しかない


そんな気がしたから─────





会場に行くと




「…凄い…行列…」



私は圧倒されながら会場内に入っていく。






✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕




「あら?彰さん…沙夜華とご一緒じゃ…」

「いいえ。最近は色々あって距離をおいていたので」


「えっ!?じゃあ…あの子は…何処へ行ったのかしら?あなたとデートだと、そう言って出かけたんですのよ」


「…デート…ですか…?約束はしておりません」


「えっ?…だとしたら…あの子は…何処…」




「ピアノの演奏会」

「えっ!?ピアノの演奏会!?」


「…ピアノの演奏会…テレビで拝見した事があります。かなり有名で有望なピアニスト達が集まるという。私の母親が一度出た事があります」



「そうなんですね……しかし由宇哉が、どうして、そんな事を知ってるのです?」


「…消印がない偶然に届いていた封書。中には招待状…招待状には…飛比谷 眞那斗…そう書いてあったから。それにでも行ったんじゃね?」


「それは何処にあるんです?」


「さあ?知らねー。彰さんは御存知ないんですか?母親を連れて行ってあげたらどうですか?」


「…君は…敵なのか味方なのか分からないな…」



「俺にとっての幸せは、お姉ちゃんと眞那斗さんの幸せです。眞那斗さんと恋愛してる時の姉ちゃんは、すっげー幸せそうで輝いてたよ!…母さんは…それを引き裂こうとしている。本当は兄妹じゃねーくせに嘘ついて迄、彰さんとの結納をさせてんじゃねーよ!母さんは姉ちゃんの幸せを奪って苦しませてんじゃん!」



「…由宇哉…あなた知って…」


「役所に行けば分かんじゃん!最初は信じたけど…違う気がしてならなくて…兄妹だとしたら雇うハズないって…」


「そんなの分からないでしょう?本当に知らない事だってあるんですよ!」


「…幸せは一握りしかない。そう言っていた姉ちゃんの幸せな人生を母さんは奪ってんだよ!姉ちゃんの味方の俺に居場所聞いた所で教えるわけねーじゃん」



「由宇哉!」



「お義母様、行きましょう!」

「えっ?」

「母親なら知っているかもしれません」

「お願い出来る?」

「はい」





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