第12話 一番大切な人

in 日本。


春。4月。高校2年生。




眞那斗と離れ離れになり、音沙汰ないまま日々過ごす。


連絡取り合うと会いたくなるから。


その理由で連絡交換しなかったのだ。




そんなある日の事─────



「彰さん」

「お義母様。突然どうされたんですか?」

「彰さんに、お願いがあって伺いました」

「えっ?お願い…ですか?」

「沙夜華を1日も早くモノにしなさい!」

「えっ!?…お義母様…しかし、沙夜華さんとはゆっくり…」



「時間なんていりません。許嫁なら問題ありません!」

「いや…しかし…」

「夏須日家に家政夫がいたのは御存知でしょう?」

「ええ…」

「彼のモノになる前に、あなたがモノにするのです!」



「お義母様?何をそんなに焦っていらっしゃるのですか?第一、沙夜華さんと彼は相思相愛なのでしょう?」


「引き裂いて下さい!彼は相応しくありません!」

「お義母様…?」

「宜しいですね!?」



「お待ち下さい!お義母様!私こそ彼女・沙夜華さんに相応しくありませんよ!」


「えっ…?」


「私には沢山の女性がいます。みんな私が、お金持ちだからという理由がほとんどです!私は本当の愛を知りません!沙夜華さんを悲しませ傷付けるだけです!」



「…彰さん…」

「少しお時間くれませんか?」






そして、ある日の夜─────



「沙夜華さん」

「彰さん…どうされたんですか?」

「あなたに、ご報しなければいけない事があります」

「ご報告…ですか?」

「あなたの人生に関わる事です」


「…えっ…?」


「単刀直入にお聞きします。あなたにとって今一番大切な人は誰ですか?本当に、このままで良いんですか?あなたは、ここにいてはいけない!」



「えっ?彰さん?あの…話が…」


「お義母様は、2人を引き裂けと言ってきました」

「えっ…!?2人…?」


「あなたは彼・飛比谷 眞那斗さんを愛していらっしゃるのでしょう?」




ドキッ



「…それは…」

「ニューヨーク行きのチケットです」

「…えっ…?」

「彼の元へ行かれて下さい!」

「彰さん…でも…突然に行っては彼に迷惑がかかります」



「迷惑も何も引き裂かれるよりはマシでしょう?」


「…彰さん…」



「愛し合っているなら1つになって下さい!好きならば自分の全てを捧げる覚悟の上で行かれて下さい!相思相愛なら無駄にしてはいけません!私に出来る事は、これ以外にありません」



「……………」



「私は色々な女性と関係を持つのは平気な人間です。そんな私はあなたに相応しくありません。私が、そういう人間だというのは、お義母様には報告した所です。確かに私はあなたの許嫁です。しかし現状は…眞那斗君が、あなたには相応しいと思います」




「姉ちゃん!行けよ!」

「…由宇哉…」


「荷物は後で送る。貴重品とか大事な物だけ持って眞那斗さんの所に行きなって!」



私に歩み寄る。



「これは…」

「眞那斗さんの住んでる所」

「えっ…?」


「俺、姉ちゃんと眞那斗さんには、うまくいって欲しいから!だから行けよ!2人は離れたら駄目なんだよ!こっちは任せて!」


「由宇哉…ありがとう…彰さんも…」




私は2人に見送られニューヨークに発った。





「彰さん良かったんですか?あなたの許嫁であり婚約者でもあるんでしょう?」


「仮だよ」


「えっ!?」


「世間では名の知れた者同士、両家を丸く治める為。本当の愛なんて存在しないよ。勿論、本当の愛が生まれる人も中にはいるだろうけど…俺達の間には存在しない」











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る