ダンジョンマスターとなった少年は、世界のために無数の命を切り捨てる
──ダンジョンを維持せよ。ダンジョンの崩壊は、世界の滅びと心得よ。
世界の一部の国に、突如としてダンジョンが出現した世界。たった一年で、世界の常識は大きく変化した。
モンスター、アイテム、ステータス、スキル、魔法。数多の空想が、ダンジョンによって現実世界にもたらされた。
ノンフィクションとなったフィクション。現実となった神秘の数々。世界にもたらされた混乱と興奮。
これはそんな歴史の転換点に生きる、人々の物語──否。
この物語は大勢の思惑が錯綜する群像劇にあらず。この物語は愛と勇気がテーマの王道浪漫にあらず。
これは【ダンジョンマスター】となった少年、大沢伊織の物語。
心優しい普通の高校生だった少年が、世界を一変させたダンジョンの管理者──世界の礎となる物語。
ダンジョンマスターの地位を、役得と思うことなかれ。それは救世主の別称である。
不甲斐ない大人たちのせいで、世界の平和を維持するために、その身を捧げさせられた哀れな少年の肩書きである。
──嗚呼、人類よ忘れるな。世界は常に、誰かの犠牲の上に成り立っているということを。