この小説を読んで、私の荒んでいた心が癒されました。
まるで誰かに悩みを打ち明けて、「わかってもらえた!」と思えたときのような、ジワリと熱い想いが溢れてきました。
ミステリの構成が上手いとか、キャラクターたちが個性的で魅力的だとか、情景描写や心理描写が巧みだとか、グルメやサブカルネタで親近感をわかせているとか、小説の技術的な長所はいくらでも挙げられます。でもね、
それらの魅力に加えて、この『共鳴糸エンゲージメント 〜なごや幻影奇想メモワール〜』という作品には、作者の深い祈りの念が込められているんじゃないかなと思ったんです。
それぞれの怪異は、人間以上に人間味のある悩みを抱えていて、その内に轟く悲鳴は、我々読者の歪みとも共鳴します。そしてその苦悩や無念は、彼ら怪異のことを絶対に見捨てない登場人物たちによって理解され、鎮められていきます。
成仏されたのは、私自身の苦悩や無念でもありました。
陽澄先生、ありがとう。
何かと息の詰まる世の中です。
あなたに、とっておきの小説がありますよ。
読み終えた後も、言葉にならず……レビュー画面と随分長い間にらめっこしてしまいました。
でもこの感動をどうしても伝えたい!
皆様に、この物語を読んでいただきたい!
ストーリーのさわりをさらっと紹介させていただきますと、主人公は男子大学生の服部くん。
彼は『共感応』という特殊な能力を持っており、怪異事件を解決する探偵事務所にて助手としてアルバイトをしています。
ところがある日、樹神先生に頼まれてとある骨董店『懐古堂』を訪れ、幽霊の女店主・カイコさんに出会うことから物語は動き出していくのです。
カイコさんを手伝い、いわくつきとされる骨董品の数々と向き合う服部くん達ですが、それぞれの品にはそれぞれ秘められた深い思いが。
もうね……その思いが深くて痛くて切なくて、一つのエピソードを読む度に心が解けて優しくなっていくんです。人に対しても品物に対しても、大切にしなきゃ、じゃなくて、大切にしたくなる。
そして合間合間に登場する名古屋飯の美味なる誘い。
実は以前愛知に住んでいたことがあるのですが、また食べたい! と激しく悶えるわ、どうして食べなかった! 激しく悔やむわで大変でした(笑)
温かな感動と飯テロのマリアージュ、是非皆様も召し上がってください!!
もちろん、前作『共感応トワイライト』を知らなくても楽しく読めますが、読了したらそちらも読みたくなること間違いなしですよ!
前作では、まだ高校生の服部くんが苦悩し成長する姿を大変尊く召し上がれますので、併せて読んでいただきたいです♡
師匠の樹神先生から、おつかいを頼まれた助手の朔。おつかいの内容はコーヒー豆やお菓子の買い出しではなく、業務に欠かせない特殊な時計の修理でした。朔の支える樹神探偵事務所は、霊や怪異にまつわる案件が持ち込まれる探偵事務所なのです。
事務所の描写に毎回惚れ惚れとさせられていますが、時計の修理のために訪れた骨董店も素敵な雰囲気が漂っています。アンティークの描写が美しいことは言わずもがな、大切に使い込まれた日用品の温かみが目の前に迫ってきます。
ものに宿る声なき声に耳を傾け、主と過ごした日々が紐解かれるとき、涙腺がやんわりとほぐれていきます。
バディの堅い絆と、名古屋めし、美しき婦人の織りなす幻想譚へお越しください。
服部“ぼっちと見せかけて隠れリア充”朔と樹神“頼りになるけどたまに気障な伊達男”皓志郎が、骨董店「懐古堂」の謎多き女店主カイコさんを加え、東海随一の大都市名古屋を舞台に、巷に起こる不可思議な怪事件に挑む!
本作も、前作「共感応トワイライト」と同様、物品に込められた霊的思念を巡り、人の琴線に触れるヒューマンドラマに溢れたお話が、読者に寄り添うような筆致で描かれた連作短編です。
前作は主人公服部くんの物語が横串を通すように展開されましたが、今回のメインは新キャラカイコさんの物語。どの章のお話も素敵でしたが、メインのお話だけあってカイコさんの物語は特に良かったですね~。白い蝶のブローチをした懐古堂のカイコさん。白い蝶でカイコさん……?
また、ドラマの魅力もさることながら、舞台となった名古屋の地理と風土の豆知識や、ご当地グルメが作中にふんだんに登場し、旅行気分を味わえるのが本シリーズの特徴。
いやはや、ご当地グルメの飯テロも含めて、今回も堪能させていただきました。
結局さぁ、服部くんが好青年なんだよな。大学ではぼっちで、決してコミュ力は高い方じゃないんだけど、根は優しくてさ。結果、リア充なわけ。こういう時代だから、みんな服部くんみたいに優しくなれるといいよね。
こちらの作品は「共感応トワイライト 〜なごや幻影奇想ファイル〜」の続編となりますが、この作品単体でも楽しめます。キャラクターの設定や役割は本作でもしっかり説明されておりますので、ぜひ、読みたい方から読んでください。
本作はお仕事系の小説のように章ごとに扱うテーマ(骨董品)が決まっており、一つずつ依頼を解決することで物語が進んでいきます。連作短編の形式ではあるのですが、まず章ごとの完成度がすごい!一章読むだけで一つの完結作品を読んだくらいの満足感があります。
事前に散りばめられていた何気ないセリフやシーンが全部伏線となってラストに集約され、仕込まれたミスリードは読者の期待を良い意味で裏切ってくる。話の引きもうまく、どんどん先を読んでしまう仕掛けがいっぱいあり、章のラストは必ずカタルシスを得られます。ああ良いものを読んだ…という感覚がなんと四章分!
これだけで既に贅沢ですが、今回は続編ということもあって、主要メンバーである百花さんの過去や樹神先生との関係などここまで読んできた読者の興味を引き付けて離さないテーマばかり。
もちろんラストの章はこれまでの集大成といった内容でこれまで出てきたすべての要素が回収され、大満足のエピローグでした。正直に言うと、なぜこの作品が本屋さんで売っていないのかわかりません。
時にはくすっと笑えるキャラクター同士の掛け合いや飯テロ描写など、あらゆる手で最初から最後まで読者を楽しませてくれる作品です。
読んで損はさせません。気になった方はぜひ、樹神事務所の扉を叩いてみてください。
名古屋駅から名鉄あるいはJRで二駅。もしくは地下鉄東山線に乗り、栄で名城線左回りに乗り換えてから四駅。
金山総合駅の程近く、とある雑居ビルの二階に、小さな事務所がある。
——失礼して本文から引用させていただきました。と、この手を前作のレビューでも使ったのですが。
と言います通り、シリーズ作品の二作目。現実感たっぷりの描写が冴え渡る、探偵事務所に纏わる物語です。
探偵と言っても殺人事件などとは縁がなく、どうにも不可思議な事件ばかりが持ち込まれます。
普通の“人間“の仕業でないことばかりが。
今作では、あるお店で取り扱う品物に焦点が当たります。
市松人形、壺、万華鏡……などなど。いかにもなにかありそうな物ではありますが、関わる人間が違えば、なすべき対処も違うもの。
起こった出来事、現象を、えいやっと薙ぎ払えば終わりなんて乱暴は通用致しません。
そこへ積もった人の想いに寄り添い、解決の道を探します。
前作を読んでいなくとも、まったく独立した物語となっています。また、前作を読んでいれば、登場人物たちの歩みを目の当たりにして楽しめます。
どうか名古屋で怪異にお困りの方、あるいはそんな顛末をお知りになりたい方。まずは樹神探偵事務所の、そして懐古堂を訪ねてはみませんか?
怪異を専門に扱う『樹神探偵事務所』その所長で不思議な声の能力を持つ樹神皓志郎。共感応という能力を持つ助手の服部朔。異能調香師という和服美女の百花。彼等三人を軸に物語は進む。
この物語は『共感応トワイライト』の続編であります。
今回は、妖しげな骨董品店に持ち込まれる様々な曰く付きの品々についての物語。
いつものメンバーで、モノに纏わりついた念や妖を祓っていくのではあるが……。
今回はいつものメンバーに、妖しげな骨董品店の店主・カイコが参戦する。
さて、妖しげな骨董品に纏わる念を紐解いていくと……。いくつもの感情がみえてくるのだが……。
それは愛憎。それは喪失感からくる無念の念。それは呪物の上書きされた怪異。
そして、それは祈りの思念体。
それぞれの、憑かれたモノの時代背景と人間関係が呼び起こす怪異現象。卓越した背景描写は目に浮かんで来るようです。心理描写からは、それぞれのキャラクター達の心情や息吹まで聞こえてきそうです。
最期の章は特に目を見張る物語です。悲しくも切ないラストに胸が締め付けられる思いです。只々願う祈りは純恋歌のよう……。花火の幕引きがなんとも儚い。
前回からパワーアップした探偵事務所のメンバーの魅力は勿論、飯テロにも大いに期待したい所です。
『樹神』と書いて『こだま』と読む。一風変わった探偵事務所に舞い込む依頼は、果たしてどんな怪異現象が待ち受けているのでしょうね?
主に怪奇な事件を扱う事務所の助手をしている服部朔。彼は探偵の樹神皓志郎ともにいつものように事件を解決していました。
とあるお使いにより、懐古堂という場所に向かうのですが、そこは不思議な場所にあり、幽霊(!?)のカイコさんという人物が店をしていたのですね
そのカイコさんの出会いから、朔は再び怪奇の事件な事件に巻き込まれていくのです。
前作を見ている方は知っているかと思います。
また彼らの物語を見れるのです。見覚えのあるキャラなどが出てきて「おおっ!」となります。
切なくて優しい、けれど、楽しい彼らの物語。
前作の共感応トワイライトもみて、今作を見ると楽しいですよ!
圧倒的な★を獲得し、多くの方がレビューする中、すでにこの物語の素晴らしさは証明されているようなものですが、本当に素敵な物語です!!
探偵と助手が活躍する物語は数あれど、怪異事件を専門に扱う探偵さんです★
名古屋(愛知県)にまつわる伝承、史実を織り交ぜながら、複雑な真相を鮮やかに解き明かしていく過程は、読者を唸らせます。
さらに本作は、事件の背景に潜む、ヒューマン・ドラマが秀逸すぎます。
涙なしでは読めないストーリー! 強い余韻をあなたにも残すでしょう☆
また、登場人物たちも皆、個性的にして、華やかです!
何でこんなにも魅力的なキャラクターを生み出せるのかと、思うくらいに素敵なんです!
詳細はネタバレになるので詳しくは言えませんが、とにかく超オススメです。
名古屋メシも随所に登場し、観光にも一役買いそうです。
(私の中では書籍化候補筆頭です♪)
なお、続編ではありますが、前作を読まなくとも充分面白いです。(もちろん前作も面白いので、お読みいただくことをオススメします!)
こちらの作品を読めば、きっとどんな人でも心があったかくなるはずです。
登場人物たちは、みんなそれぞれの事情や過去を抱えていますが、支え合って、笑い合って、大切にし合っているんです。
そういうシンプルだけどとても大事なことが、優しすぎるほど優しい主人公・服部くんの視点で描かれていきます。
彼が感じる嬉しいこと、悲しいことに、何度も心を揺さぶられました。
いま自分の周りに存在するすべての人・物・事は、当たり前にそこにあるわけじゃなくて、奇跡みたいなことで、とても幸せなんだなと気づかせてもらいました。
読みながら何度も涙腺が崩壊しました……
本当におすすめです!!
前作からの、いえ、すずめさんのファンです。
二年続けてのシリーズは初めてだと思います。そういう意味でも特別な作品。前作を読んでなくても楽しめるし、読んでいたらもっと楽しめます。
「モノ」にまつわる魂と怪異の物語。
呪いの菊人形、「足らぬ」壺、思い出の万華鏡、約束のブローチ。
閉じ込められた念、込められた想い、そういうものに、樹神先生率いる怪異の専門家たち……そして、謎の幽霊カイコさんが向き合います。
そんな専門家の中の一人、樹神先生の弟子、服部くんの成長も本作の魅力のひとつ。前作からの読者は「こんなに立派になって……!」と驚くでしょうし、本作からの方も彼の変化に勇気づけられることも多いはず。
僕は、この作品の「モノ」の使い方が好きです。
例えば、暑い日に飲んだアイスコーヒーやメロンソーダ。タバコの吸い方。骨董品の入った箱の扱い。ドアの開け方。
他にも、空で爆ぜる花火の音、吹き抜ける風、蝉の声、嵐の音。
これらに登場人物の気持ちが丁寧に重ねられていて、黙っているシーンなのに気持ちを感じたり、樹神先生ら服部くんと同じ空気を吸っている気持ちになれたり、些細な場面から流れてくる心の変化が、本当にたくさんあります。
考えてみたことありますか? マグカップの扱い方ひとつ、それも、文字で表現されたマグカップの扱い方ひとつで、その人物の気持ちや想いを感じるんですよ。これってすごいことです。
作中に出てくる名古屋グルメもおすすめ。僕は本当に名古屋に行きたくなってきました! 特に、舞台となった大須の辺りはいい感じにごちゃごちゃしていそうで一回は行ってみたいなぁ。
「モノ」に込められた想い。
皆さんにもありませんか? 大事にしてるペンだとか、家にずっとある花瓶だとか、死んだお祖父ちゃんが使ってた机とか。
この作品を読めば、あるいはそういうものが、語りかけてくるかもしれませんね。
樹神先生、その親戚で和装美人の百花さん、先生の弟子服部くん、そして謎の幽霊カイコさん。
彼らと一緒に大須で「モノ」に触れてみませんか?
あなたの「モノ」への触れ方も、あなたの「モノ」の考え方も、きっと、変わるはず。
おすすめです。是非、しるこサンドと一緒にどうぞ。
この世のものではないものが感じ取れる人々が事件を解決する。舞台は名古屋、事件に取り組むのは、とある変わった探偵事務所の面々。主人公はその優秀な助手、大学生の青年。
もうこの青年が優しくて気遣いができて繊細で人の想いを汲めてひたむきで強くなろうと努力家で……
お話の魅力は他の方も語っておりますゆえ、私は主人公の服部少年を激推しするレビューを綴りたいと思いました。
どの登場人物も魅力的であり、それは依頼者も同様です。
一人一人が生きた人間として描かれていき、読者は一緒に事件を追い、はざまの世界へいき、一証人としてそこにあるのです。
でも素晴らしいのはストーリーだけではなく、中で描かれる人間の大切な絆や、感情。
一つ一つを手に取って、宝箱にそっとしまっておきたくなる。
この作品が大賞だ!!
名古屋を舞台とした、怪異事件を専門に扱う、樹神探偵事務所の物語。
陽澄すずめさんの代表作、『共感応トワイライト』の最新作です。
シリーズものですけど、前作を知らなくても本作からでも楽しむことができ、怖いけど心暖まる怪異憚の数々を、堪能いただけます。
そして本作は、キャラクターがとにかく魅力的。
まだ若いけど、怪異を起こすモノと共感して、抱いている願いや想いを探ることができる能力を持つ、探偵助手の服部少年。
探偵事務所の頼れる所長、樹神先生にその親戚の百花さん。
そして本作ではコミカルな新キャラ、カイコさんが登場してくれます。
このカイコさん、不思議な骨董屋の店主をしていて、怪異が起こると服部少年達の手助けをしてくれる、頼りになるお姉さんなのですが、その正体は実は幽霊。
しかもただの幽霊ではなく、漫画やゲーム、さらにBLが好きという腐幽霊なのです!
浮遊霊じゃなくて腐幽霊。この設定だけでもう、面白キャラということがわかります!
しかし一度事件が起これば、頼もしい人達ばかり。
謎めく事件を解決していく樹神探偵事務所やその仲間達の活躍を、お楽しみください。
名古屋にある探偵事務所で助手をしている主人公の男子大学生は、探偵の時計を修理にやってきた。その店は懐古堂という骨董店だ。その店主は白髪に白い肌の美しい女性だった。しかし、この女性にはある秘密があった。そして骨董店には、いわくつきの物が持ち込まれる。髪が伸びる人形や、声を発する壺。魂を吸う万華鏡などなど。主人公は探偵やその親戚の調香師の女性、そして店主の協力のもとに、物に付き纏う様々な過去を明らかにすることで、問題を解決していた。
しかし、店に異変が起こった。いつもの店主の女性が急にいなくなったのだ。それと時を同じくして、店の解体作業の話しが持ち上がる。それは店主の女性にとって、自身が失われるのと同じ事を意味していた。
絶品名古屋飯を挟みながら、物に宿った思念と会話したり、歴史を紐解いたりしながら、物語は進んで行く。物との対峙は、物を用いた人々との対峙であり、自分の感情や能力、知力との対峙でもある。そうした人々の連なりが、やがて歴史と呼ばれるのだろう。
骨董店という小生垂涎の品だっただけではなく、入念に調べられた歴史の厚みも、物語を魅力的にしています。キャラクターが一人一人たっていて、とても面白かったです。
是非、御一読下さい!
名古屋駅から名鉄あるいはJRで二駅。もしくは――
から始まる前口上が、たまらなく好きです。毎朝口にする温かいコーヒーを飲む時のような、ほっとする感じ。
物や歴史に関する造詣の深さや、超常的な能力も作品の魅力だけれど、何よりキャラクターたちとその関係性が好き。とくに喋る時のなまりが良い。この作品の大きな特徴の一つだと思います。なまりがあるとキャラクターに命が吹き込まれている感じがして、温かさを感じます。
物に宿る魂を調べ、超常的な力を用い良い形で解決していく探偵とその助手たち。
ストーリーは徐々に自分たちと近しい者と関わる段階へ。
人にも物にもそれぞれ物語があり、ドラマがある。
そんなことを教えてくれる、温かな、そして時々美味しい、美術品のように美しい作品。
名古屋駅から名鉄あるいはJRで二駅。もしくは――
読めばあなたきっともこの前口上が忘れられなくなります。
作者様の人気作、『共感応トワイライト』の続編。
ですから前作を知っていた方がより楽しめるのはもちろんですが、本作から読み始めても楽しめるようになっているので、気になった方は、とりあえず読んでみて損はありません。
名古屋にある、非現実の世界で起きた怪異事件を解決する、樹神探偵事務所。
そこで助手をつとめるのは、他者の感覚を我がことのように受信できる大学生、服部少年。
その力故に悩むことも多かった彼ですが、いくつもの経験した結果、なんだか以前よりも頼もしくなっています。
しかしそんな彼や、師である樹神先生でも一筋縄ではいかない事件を起こすのが怪異たち。
本作で起きる怪異は、怪談のお約束ともいえる髪の伸びる市松人形や、語りかけてくる壺など、主にモノに纏わるものとなっているのですが、重要なのはそれらモノがどうしてそんな怪異を引き起こすに至ったか。
モノだって時には意志を持ち、ぞんざいな扱われ方をしたら怒り、大事な人が苦しい目にあっていたら悲しむ。そういった想いが募った時、普通の人には理解できないような何かを引き起こす。
そんな、普段は言葉を聞くこともできないモノたちや、それに関わった人たちの思いが丁重に書かれていて、一つ一つのエピソードに心打たれます。
そして本作の重要なポイントが、新キャラのカイコさん。
骨董屋の主人であり幽霊なのですが、彼女のキャラが実にいい。特に、彼女の趣味趣向が語られるシーンでは、毎回ニヤリとすること間違いなしです。
この物語の全体をおおうレトロな雰囲気がクセになる。名古屋って本当に面白い場所でもありますね。
さて、物語は探偵事務所のバイトとなった主人公がモノに宿った怪異を解決していく怪奇物語ではあるんです。
闇を感受することができる特異な能力を持つ大学生、服部 朔。彼は探偵事務所のバイトしているんですが、なぜか、そこは普通の探偵業務じゃなく、数々の怪奇現象に解決することが仕事。
まず、この青年のキャラがいいんですよね。つい感情移入したくなる優しさに溢れたキャラです。
探偵事務所で彼が出くわす怪奇は人じゃない。無機質な物に取り付いた呪いを読み解くのです。このアイディア、秀逸です。
「足らぬ、足らぬ」と声を発する壺。
人間の魂を誘い込む万華鏡。
果たされぬ想いを封じたブローチその他
中編の連作作品で、それぞれに読み応えがあって、スラスラと進めることができる佳品の数々。そして、モノに込められた人情に感動します。
名古屋駅から名鉄あるいはJRで二駅。金山総合駅の程近くという立地からリアルです。おまけに、名古屋のB級グルメや銘菓を堪能もできます。
ぜひ、お読みください。ホラー好きな方、そして、ほろりとしたい方、名古屋名物を知りたいかた、おすすめです。
同じ作者様の「共感応トワイライト 〜なごや幻影奇想ファイル〜」
https://kakuyomu.jp/works/16816700427539742721
の新シリーズですが、こちらだけでも十分に楽しめます!(*´▽`*)
女性の幽霊が店主をつとめるという不思議な骨董屋・『懐古堂』
そこに持ち込まれる品は、何かの念を宿したいわくつきばかりで――?
モノに宿った記憶を読み解くのは、他人の感情が流れ込んでしまう共感能力を持つ大学生の服部朔青年。
高校生から大学生に成長した彼は、自分の能力も少しずつ扱えるようになり、頼もしさが増しています!
が、人の心に寄り添ってくれる優しさは少年の頃のままです(*´▽`*)
彼の良き師であるオカルト関係専門の樹神(こだま)探偵、ふんわりとした柔らかな雰囲気が魅力の香使いの百花さんももちろん登場します!( *´艸`)
そして、もうひとり服部君を導いてくれるのは、不思議な幽霊のカイコさん。
カイコさんの手ほどきにより、服部君はカイコ堂に持ち込まれたワケありな物の記憶を探っていくのですが……。
胸がじんと熱くなる連作短編の数々、ぜひぜひお読みくださいっ!
御作の完結を前にレビューを失礼いたします。
多くの方のお目に留まれば嬉しい限りです。
激しいネタバレは避けますが、ある程度のことは、これからお楽しみいただく為にご紹介させてくださいね。
初めましての方もまたお邪魔しますの方もいらっしゃいませ。
本作は、『共鳴糸エンゲージメント 〜なごや幻影奇想メモワール〜』として、自立した作品として拝読できるように作者様もとてもお気を配られております。
繋がりのある作品として、前作、『共感応トワイライト 〜なごや幻影奇想ファイル〜』があります。
こちら前作の目次を拝見いたしますと、以下のようになっております。
「#1 かくれんぼ」
「幕間」
「#2 かごめかごめ」
「#3 あめふり」
「#4 指切り」
「エピローグ」
四章仕立ての物語シリーズ第一作目となっております。
とても意欲的で、構成がしっかりしております。
本作も四章仕立てとなっております。
後程完結いたしますので、現状(2023年1月5日現在です)の章を拝見いたしますと、以下のようになっております。
「#1 髪の伸びる市松人形」
「幕間」
「#2 強欲の壺」
「#3 夢みる万華鏡」
「#4 約束のブローチ」
短編連作には強味もあると思います。
ある一定の分量を読み切ると栞を挟みたくなり、ほっとできる。
本作も時にカタルシスや、あたたかい人との絆に胸を詰まらせる思いをしました。
お恥ずかしながら、哀しみにまみれたお話も沢山ありました。
ハンカチ必携ですね。
お馴染みの登場人物、服部少年(服部朔:はっとり・はじめ)、樹神先生(樹神皓志郎:こだま・こうしろう)、百花(もか)さんのそれぞれを追うことができ、満腹ですよね。
前作と本作には、様々に異なった点があると思うのですが、どうやら、今回は、『市松人形』や『壺』に『万華鏡』など、実際にあるモノに宿った念が辿るべく道を選んで樹神探偵事務所に届きました。
付喪神だろうとの推理が働いたのですが、さて、どうなのでしょうか。
今回、懐古堂のカイコさんが登場して、不思議さを増している感じがいたしました。
自在に性別や姿を変える所や笑い方におねだりと、個性豊かな素振りに、ニューフェイスとして合格です。
樹神先生にとっては、以前からいらっしゃった方なのですがね。
推しキャラは、百花さんです。
難しい過去を抱えて、それでも大人の配慮を携えて生きている様に共感いたします。
私の霊感で宥められたらいいのにと思いますが、余計なこととは思います。
それから、お国言葉も楽しめますよ。
ある程度拝読いたしますと、それが自然体で素晴らしいと思うのです。
また、美味しいお決まりのご飯などを召し上がるシーンも上手い所に挟んであり、必然性があっていただいているのですが、遅い時間に拝読させていただいており、お腹が空いて堪らなかった思いをしました。
ああ、なごや飯は、いじめっ子ですね。
各々の登場人物や小道具をイメージされた作者様が自ずからお描きになる挿絵、口絵が素晴らしく、そこにも惚れこみました。
お忙しい中、このように完璧な作品を書かれる作者様の意欲に感嘆いたします。
素敵な皆さんと、夢の中でお会いできないかな。
初夢過ぎてますけれども、だって、愛おしいから。
新たな世界へ、ようこそお越しください。