私がずっとここにいられるように、執着できる理由を探してくれない?

 名古屋にある探偵事務所で助手をしている主人公の男子大学生は、探偵の時計を修理にやってきた。その店は懐古堂という骨董店だ。その店主は白髪に白い肌の美しい女性だった。しかし、この女性にはある秘密があった。そして骨董店には、いわくつきの物が持ち込まれる。髪が伸びる人形や、声を発する壺。魂を吸う万華鏡などなど。主人公は探偵やその親戚の調香師の女性、そして店主の協力のもとに、物に付き纏う様々な過去を明らかにすることで、問題を解決していた。
 しかし、店に異変が起こった。いつもの店主の女性が急にいなくなったのだ。それと時を同じくして、店の解体作業の話しが持ち上がる。それは店主の女性にとって、自身が失われるのと同じ事を意味していた。
 絶品名古屋飯を挟みながら、物に宿った思念と会話したり、歴史を紐解いたりしながら、物語は進んで行く。物との対峙は、物を用いた人々との対峙であり、自分の感情や能力、知力との対峙でもある。そうした人々の連なりが、やがて歴史と呼ばれるのだろう。

 骨董店という小生垂涎の品だっただけではなく、入念に調べられた歴史の厚みも、物語を魅力的にしています。キャラクターが一人一人たっていて、とても面白かったです。

 是非、御一読下さい!

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