あなたのモノへの触れ方も、あなたのモノの考え方も、きっと、変わるはず。

前作からの、いえ、すずめさんのファンです。
二年続けてのシリーズは初めてだと思います。そういう意味でも特別な作品。前作を読んでなくても楽しめるし、読んでいたらもっと楽しめます。

「モノ」にまつわる魂と怪異の物語。
呪いの菊人形、「足らぬ」壺、思い出の万華鏡、約束のブローチ。
閉じ込められた念、込められた想い、そういうものに、樹神先生率いる怪異の専門家たち……そして、謎の幽霊カイコさんが向き合います。

そんな専門家の中の一人、樹神先生の弟子、服部くんの成長も本作の魅力のひとつ。前作からの読者は「こんなに立派になって……!」と驚くでしょうし、本作からの方も彼の変化に勇気づけられることも多いはず。

僕は、この作品の「モノ」の使い方が好きです。
例えば、暑い日に飲んだアイスコーヒーやメロンソーダ。タバコの吸い方。骨董品の入った箱の扱い。ドアの開け方。
他にも、空で爆ぜる花火の音、吹き抜ける風、蝉の声、嵐の音。
これらに登場人物の気持ちが丁寧に重ねられていて、黙っているシーンなのに気持ちを感じたり、樹神先生ら服部くんと同じ空気を吸っている気持ちになれたり、些細な場面から流れてくる心の変化が、本当にたくさんあります。

考えてみたことありますか? マグカップの扱い方ひとつ、それも、文字で表現されたマグカップの扱い方ひとつで、その人物の気持ちや想いを感じるんですよ。これってすごいことです。

作中に出てくる名古屋グルメもおすすめ。僕は本当に名古屋に行きたくなってきました! 特に、舞台となった大須の辺りはいい感じにごちゃごちゃしていそうで一回は行ってみたいなぁ。

「モノ」に込められた想い。
皆さんにもありませんか? 大事にしてるペンだとか、家にずっとある花瓶だとか、死んだお祖父ちゃんが使ってた机とか。
この作品を読めば、あるいはそういうものが、語りかけてくるかもしれませんね。

樹神先生、その親戚で和装美人の百花さん、先生の弟子服部くん、そして謎の幽霊カイコさん。
彼らと一緒に大須で「モノ」に触れてみませんか? 
あなたの「モノ」への触れ方も、あなたの「モノ」の考え方も、きっと、変わるはず。

おすすめです。是非、しるこサンドと一緒にどうぞ。

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