人々の縁が紡ぐ「祈りの輪」

この小説を読んで、私の荒んでいた心が癒されました。
まるで誰かに悩みを打ち明けて、「わかってもらえた!」と思えたときのような、ジワリと熱い想いが溢れてきました。

ミステリの構成が上手いとか、キャラクターたちが個性的で魅力的だとか、情景描写や心理描写が巧みだとか、グルメやサブカルネタで親近感をわかせているとか、小説の技術的な長所はいくらでも挙げられます。でもね、

それらの魅力に加えて、この『共鳴糸エンゲージメント 〜なごや幻影奇想メモワール〜』という作品には、作者の深い祈りの念が込められているんじゃないかなと思ったんです。

それぞれの怪異は、人間以上に人間味のある悩みを抱えていて、その内に轟く悲鳴は、我々読者の歪みとも共鳴します。そしてその苦悩や無念は、彼ら怪異のことを絶対に見捨てない登場人物たちによって理解され、鎮められていきます。

成仏されたのは、私自身の苦悩や無念でもありました。
陽澄先生、ありがとう。

何かと息の詰まる世の中です。
あなたに、とっておきの小説がありますよ。

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